投稿者 asahi 日時 2001 年 5 月 10 日 14:08:33:
DNAスパイ容疑で邦人研究者2人を起訴 米当局
米医療機関からアルツハイマー病に関する遺伝子
の治療・研究素材を盗み出したとして、米オハイオ
州の連邦大陪審は9日、日本人の研究者2人を産業
スパイ法違反などの罪で起訴した。米司法省は、盗
まれた素材は理化学研究所(本部・埼玉県和光市)
に持ち込まれたと発表した。
理研は文部科学省所管の特殊法人で、1917年
開設。ゲノム解析など最先端の遺伝子研究で知られ
る。米司法省は「日本の政府系研究機関である理研
を利する目的で企てられた犯行」と厳しくコメント
した。
起訴されたのは、日本在住で理研勤務の岡本卓被
告(40)とカンザス大学教官の芹沢宏明被告(3
9)。
調べでは、岡本被告は98年1月から99年9月
にかけて、オハイオ州の医療施設クリーブランド・
クリニックからアルツハイマー病の治療用に開発さ
れた試料やDNAに関する細胞株などを盗み出して
4個の箱に詰め、日本へ持ち帰った。盗まなかった
材料は無断で壊し、代わりに水道水を入れた試験管を置くなどの工作をしたという。
岡本被告は全米屈指の病院とされるこのクリニックに99年7月まで約2年半勤務
し、アルツハイマー病研究の中心だった。
芹沢被告は96年12月からカンザス大学医療センターで研究中。岡本被告から盗品
を預かったり、国外に持ち出すのを助けたりしたほか、警察に偽証したという。
両被告にはスパイ法違反のほか、盗品国外持ち出しなどの容疑も挙げられている。司
法省はスパイ行為によってクリニック側に200万ドル(約2億4400万円)相当の
損害が生じたと算定した。法定の禁固刑は産業スパイが最長15年、盗品持ち出しが同
10年。
在カンザスシティー日本総領事館によると、芹沢被告は9日朝、カンザス大構内で米
連邦捜査局(FBI)に逮捕された。岡本被告にも逮捕状が出ている。FBIから通報
を受け、領事館員が芹沢被告との接見を求めている。
米メディアは、アルツハイマー病の研究が盛んな日本では、製薬各社が新薬開発にし
のぎを削っているなどと報じている。
◇
文部科学省は、FBIが発表した岡本卓被告について、特殊法人・理化学研究所脳科
学総合研究センターの病因遺伝子研究グループの岡本卓チームリーダーと確認した。
同被告は理研内で研究担当の理事に事情を説明、「(米国から)何も持ち出していな
い」と話しているという。
理研によると、97年にクリーブランド・クリニック財団研究所神経科学科のアシス
タントスタッフになり、オハイオ州立大学分子遺伝子学教室助教授を併任。99年6月
に理化学研究所脳科学総合研究センターに入り、同年9月から同センター神経変性シグ
ナル研究チームのチームリーダーになった。アルツハイマー病の発症の仕組みを中心に
研究に取り組んでいるという。