投稿者 某協会系新聞 日時 2001 年 2 月 02 日 17:22:20:
■ ブッシュ政権始動 ■(4)
アジア政策(上)
ワシントン・タイムズ紙コラムニスト
ビル・ガーツ氏に聞く
危機は「台湾」に移行
前政権は中国の体制強化に加担
――あなたは、ベストセラーとなった『裏切り』で、クリントン政権が米
国の安全保障能力の低下をもたらしたと批判したが、最も深刻な過ちは何だ
ったと思うか。
「クリントン政権は、国家の安全保障面での管理を緩めることで手痛い効
果を招いた。その結果、戦略的ミサイル技術が米国から中国に米国の企業を
通じて不適切に流出した。クリントン政権下での技術流出により、中国のミ
サイル技術ははるかに信頼性が高いものになった。これにより、米国は戦略
的ダメージを受け、中国を民主化するというよりは共産党の独裁政権の強化
に加担した。中国と通商関係を深めれば、中国はもっと民主的になるはずだ
が、実際に起きたことは、より非民主的になり、自由が制限され、軍事的に
は米国の技術により力をつけた。これが、クリントン政権が次期政権に引き
継いだ最も深刻な安保上の課題だ」
――クリントン政権は、あなたの指摘を認めたか。
「いや。彼らは中国と協力して関係進展を得ようとしてきたことは認めて
も、中国がテロ国家に武器、核兵器、ミサイルを提供し続けていながらも、
何らの政治的圧力を講じなかったこと、中国がパキスタンに核技術を流出す
るのを阻止できなかったことを認めようとしなかった」
――クリントン政権内の担当者から提供されたさまざまな機密資料をもとに報じても、クリントン政権はそれを
認めなかったのか。
「そうだ。彼らはそれを無視しようとし、自分たちの成功例だけを強調していた。残念ながら、他のほとんどの
報道機関もクリントン政権の安全保障に対する姿勢を批判しようとしなかった。このため、自分はそうした批評を
加えることに孤立感を感じた。しかし、私の批判に対して、クリントン政権は反ばくすることができなかった」
――もしあなたが、孤軍奮闘していた立場なら、政府はあなたの信頼性を落とすために何かやったのではない
か。
「そういう場合もあったが、基本的には単に批判を無視しようとしてきた。しかし、それは時間の問題で、次第
に人々は私の指摘を認めるようになったし、クリントン氏が大統領職を辞して、その政権の行状に対する見直しが
始まれば、私の指摘が正確だったことが分かるだろう」
――クリントン氏の不道徳行為が外交政策分野でも悪い影響を与えてきたか。
「安全保障政策に関しても、義憤がなくなってきていた。弾劾されたホワイトハウス執務室の行為は、氷山の一
角だったと思う。しかし、クリントン政権による他の安保上の問題を明確に調べるのははるかに難しかった。イラ
クへの爆撃等、軍事行動がいかに政治的に利用されたか、など、今後、もっと明らかにされていくだろう」
――新政権の安保チームに期待するところは大きいか。
「新政権で国家安全保障の担当になっている人物は非常に熟練した人たちだ。チェイニー副大統領は国防政策の
エキスパートで、ブッシュ新大統領はこの分野をチェイニー氏に任せ、自分はもっと教育、税制改革などの内政面
に尽力するだろう。
パウエル新国務長官は政治家ではなく、メディアは共和党政権により批判的なので、彼がどう批判に対処できる
か注目される。ラムズフェルド国防長官も、政治力、軍事面の見識、行政手腕ともに整った人物である。だが、実
際に職務につくと、巨大な官僚機構にのみ込まれてしまう懸念もある」
――クリントン政権は、中国を「戦略的パートナー」と呼んだが、ブッシュ政権は日米関係を基軸とする対アジ
ア外交を表明しているが。
「米新政権はより日本を中心にした対アジア外交政策を取るだろう。しかし、私は、中国がその政策を妨害にか
かるだろうと思う。
問題の解決は、地域の同盟を強化することで、中でも日本との同盟関係を強化することだ。日米防衛協力のため
のガイドラインも詳細が取り決められるだろう。これは米軍の同地域での駐留とアジアの安定に寄与するものだ。
また、一触即発の危機は、北朝鮮から台湾に移行するだろう。米軍は、本当に中東よりも東アジア地域の紛争の
ために戦わなければならないだろう」
――日本では今夏、参議院選挙が行われ、スキャンダルなどで連立与党が議席をかなり失う可能性があり、自民
党中心の政権から中道政権に変わる可能性もある。また明確な国防、外交戦略もない状況だ。
「日本の議会がどういう政権を作ろうと、米国との関係は依然として強いだろう。そうすることが、対外的な安
保政策上の必要性に合致するためだ。経済分野で、ブッシュ政権は日米間の交渉に際してよりタカ派的になってく
るだろう。より米国中心の要求を出し、いくつかの通商摩擦が引き起こされるだろう。しかし、安保問題と軍事協
力に限れば、それを強化する方向に向かうだろう」
ビル・ガーツ氏略歴 ワシントン・タイムズ紙コラムニスト、国防担当のスクープ記者として有名。FBIア
カデミーや米国防大学で講義も。著書に「中国の脅威」、「ビトレイヤル(
裏切り)」(邦訳「誰がテポドン開発
を許したか」文藝春秋社刊)など。