投稿者 倉田佳典 日時 2001 年 1 月 03 日 11:42:37:
01/03 01:59 食料危機への対応策決定 政府、輸入途絶時を想定 内政01
二十一世紀に現実味を帯びる食料危機に対応するための政府の「
不測時の食料安全保障マニュアル」が二日、明らかになった。国内
の異常気象、主要生産国・輸出国の不作や地域紛争による貿易の混
乱、中長期的には地球温暖化による農業生産の減少などを想定して
おり、異常事態が予測できた段階で予防的に対策を始めるとしたの
が特徴だ。
このマニュアルは一九九九年七月に施行された食料・農業・農村
基本法に基づくもので、政府は今月中に正式決定する。
マニュアルは輸入が完全に途絶える最悪の場合に国民の飢えを防
ぐため、面積当たりの収穫量の多いイモ類を主食にし供給を四・五
倍に増やすよう求めた。
さらに(1)食料にならない花き・工芸作物、飼料作物、カロリ
ーの少ない野菜、果樹の順で作付面積を減らし、イモ類などの栽培
に転換する(2)政府が主食を買い上げて価格統制し割り当て・配
給する(3)河川敷やゴルフ場なども活用する―などとした。
マニュアルでは小麦、大豆の供給が二割減少する恐れがある状況
を「レベル1」、輸入が途絶し毎日供給される食料の総カロリー数
が現在よりも二二%減少し、最低限必要とする一人当たり二千キロ
カロリーを下回る恐れのある状況を最悪の「レベル2」と定義。
両レベルとも政府に「緊急食料確保対策本部」を設置し、備蓄さ
れたコメ、小麦、大豆、飼料穀物の供給を進めるとともに、輸入の
確保、価格・流通の安定化を図る。七三年の大豆価格の高騰や九五
年の米不足は、この対策で対応できるとしている。
最悪のレベル2では、イモ類や麦、大豆の増産で食料供給を一日
二千二百キロカロリーまで確保することを目標とし、肥料や農薬、
燃料などを優先的に農業に回す。牛肉や卵などの生産も大幅に減る
ため、動物性タンパク源として重要な魚介類の確保のため水産業へ
の石油供給の確保も求めた。
レベル1では、政府による統制は控え、対策本部が「緊急食料確
保計画」、都道府県別にも目標とする小麦と大豆の生産数量を示し
たガイドラインをつくる。これを受け生産者が生産計画を作成し、
農水大臣に届け出る仕組みを通じて食料増産を促すというソフトな
対策となっている。
(了) 010103 0200
[2001-01-03-01:59]
01/03 01:59 食料安全保障対策の骨子 内政03
一、マニュアルは国内の異常気象による不作や主要生産国・輸出
国の不作、地域紛争による貿易の混乱などを想定
一、輸入が途絶えた場合は、食料にならない花き・工芸作物、飼
料作物などの栽培をイモ類に転換し供給を四・五倍に増加
一、政府が主食を買い上げて価格統制し、割り当て・配給制に
一、河川敷やゴルフ場なども農地として活用
(了) 010103 0200
[2001-01-03-01:59]
01/03 01:59 食糧安保軸に農政見直しを 消費者の意識向上も必要 内政02
【解説】「四○%の食料自給率を十年後には五○%に引き上げる
」と食料・農業・農村基本計画で定めたように、食料の自給率向上
など食糧安保の考えや、それを確保するためのマニュアル作成に異
論を唱える人は少ない。
だが食糧安保のために不可欠なのは、「少々高くても安全な国産
品を食べる」という消費者の意識を育てることである。このために
は農業関係者や族議員らを中心にした農政から、消費者を積極的に
巻き込み意識を高める政策を盛り込んだ農政に変わるべきだろう。
というのも、現在の農政には(1)土地改良や干拓など無駄な公
共事業や、農村地域へのばらまきで効果は上がっていない(2)コ
メを中心に農産物の価格が国際市場に比べ高すぎる(3)農家が何
を生産するべきなのかの指導がころころ変わる猫の目行政になって
いる―など不満は根強いからだ。
新農業基本法の作成過程では、六年間で総額六兆百億円をつぎ込
んだ関税貿易一般協定(ガット)のウルグアイ・ラウンド対策事業
が、温泉や文化ホールなど農業とは直接関係のないハコもの建設に
まで及び、効果への疑問が出ている。二○○○年度には中山間地域
の農家への所得補償となる「直接支払い」を七百億円も実施する。
こうした状況では「飢えが来ると脅し、農業系の公共事業、農村
への金の流れを確保しようとしている」と国民が疑っても不思議は
なく、食糧安保を軸に農政の説明責任を向上させなければならない
だろう。
(了) 010103 0200
[2001-01-03-01:59]
01/03 01:59 卵と肉が消え菜食中心に 対策実施時の食生活 内政04
食料のうち国内生産品が占める割合である自給率が、国民に供給
するカロリーベースでは四○%と先進国では最低ラインの輸入大国
が日本。「穀物、大豆などの輸入が途絶える―飢える」という連鎖
を起こさない対策が政府の「不測時の食料安全保障マニュアル」だ
が、対策後の食生活のイメージはどうなるのだろうか。
一九九八年に食料を通じて供給された国民一人当たりの熱量は二
千五百七十キロカロリー。最悪の場合、飢えをしのぐため供給熱量
は一五%減の二千百九十キロカロリーと、現在のラオスやベトナム
と同じレベルになる。
マニュアルの試算によると、そのとき食卓から最初に消えるのは
鶏卵と肉類。鶏卵は年間十七キロの供給がわずか二キロとなり、肉
類の供給も半減して十四キロ、牛乳乳製品も四割減となる。牛肉一
キロを生産するのに穀物が七キロ、豚肉では四キロ、鶏肉でも二キ
ロかかるように、穀物を肉類などの生産に回すのは非効率だからだ
。
穀物や大豆を人間が直接食べるだけに、対策後は「必然的な菜食
主義者」が増える。主食にも異変が起きる。
コメの供給は六十八キ
ロとほとんど変わらないが、イモ類は四・五倍の九十六キロとコメ
を超え、主食の座はイモに転換。小麦は五割以上減の十六キロとな
るので、ラーメン・うどん好きは大幅な値上げも覚悟しなければな
らない。
(了) 010103 0200
[2001-01-03-01:59]