投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 10 月 09 日 12:48:25:
過去最長の米国の好景気を支える情報技術(IT)産業のなかで、成長が注目されていた新興の米インターネット関連企業の経営難や事業閉鎖、大量解雇などが急増している。市場シェア(占有率)を優先するあまり、利益を軽視して拡大路線に走った強気の経営戦略が破たんし、4月以降のハイテク株式相場の低迷が資金繰りに拍車をかけている。多くの企業がライバルや業容拡大をめざす業界大手に買収されたり、ネット上とは別に現実の店を開いたりして生き残りに懸命だ。ただ、解雇された人たちの多くが容易に再就職でき、「ネットバブルの崩壊」は過熱していた米経済を適度に冷ます効果を与えている、との見方もでている。
「大きな声で言えないが、行き詰まった事業を内密に清算している会社が12社ほど、我が社のルートを使って山と積まれた在庫を処分しつつある。1年前は閑古鳥が鳴いていたが、いまはお客が殺到している。予想どおりにネットバブルがはじけたおかげだ」と話すのは、米国で急成長しているネットを使った在庫処分ビジネス最大手のオーバーストック・ドット・コムのパトリック・バーン最高経営責任者(CEO)(37)。破たんしたネット小売り企業などから、装身具やパソコン、宝石、工具、スポーツ用品、家電、雑貨などの在庫を小売価格の3割で買い取り、個人の客らに市価の半値弱で売りさばく。
破壊的な低価格が好評で、年商は昨年の12倍の5000万ドル(約54億円)に伸びる見通しだ。複数の事業ですでに1億ドルを超す個人資産があるとされるバーン氏は、「破たん企業の多くは、売りさばく成算もないのに一流ブランド品の在庫を積み上げた。赤字処分なので、その企業にお金を出した株主や金融機関は損するが、ここでは消費者が得をする」と話す。
「買い物商品情報サービスのプロダクトピアが、とうとう事業を閉鎖へ」「医療サービスのウェブMD、1100人を削減」「娯楽情報のキブが事業を停止した模様」……。ネット系企業の倒産や事業閉鎖、解雇などの個別情報をネットで公開している「沈んだ会社ドットコム」のホームページには、今月は6日間だけで31件が載り、前月同期間の5倍の勢いだ。105件を記録した9月は、倒産6件、資産売却など10件、事業閉鎖21件、CEOの辞任や社員解雇68件にのぼった。
ネット企業への逆風を浮き彫りにしたのが、「あなたの言い値でショッピング」というユニークなビジネスモデル特許のネット商法や、マイクロソフトの共同創業者ポール・アレン氏ら大物投資家の支援を追い風にして、派手な宣伝で急成長してきた安値販売最大手プライスライン・ドット・コムの失速だ。5日、食料品や生活用品などの雑貨と、ガソリンの販売をしてきた子会社ウェブハウスクラブが破たんし、その事業をやめることを発表した。子会社とは関係ない航空券などの販売は継続する。
約1億ドルの資金が調達できなかったためで、創業者のジェイ・ウォーカー氏は、「金融市場はインターネットの企業に対して気が短くなっている」と無念そうだ。ウォーカー氏の損失は2億ドルとみられる。
プライスラインは、スーパー約7000店とガソリンスタンド約6000店と提携し、客が希望する安値で売ってくれる店をネットで探し出す商法があたり、顧客は200万人に達した。7―9月期の売り上げ見通しは、前年同期より2.2倍の約3億4000万ドルと堅調にみえる。
しかし、採算を度外視した商法がたたり、赤字が膨れ上がっていた。実績のある航空券ビジネスと違い、雑貨やガソリン類は在庫がきくので値引き商法に適さなかった。さらに、「大手メーカーの多くがブランドイメージの低下を恐れ、値引きしてくれなかったため、多くの商品を自前で値引きし、赤字を雪だるま式に膨らませた」(関係者)という。
店を結ぶネットワーク機能だけで5億ドルといわれる設備投資の負担も重く、「新たな客を1人獲得する販促費100ドルに対し、1人当たりの売上高は40ドルに満たない」という過当競争が子会社を直撃した。
プライスラインの株価は昨年、株式公開とともに160ドルを超えていたが、いまは当時の30分の1の5ドル台に暴落。客から「希望した値段で買えなかった」などの不満も急増し、今月になって本社拠点のあるコネティカット州の検察当局が消費者関連法違反の疑いで捜査を始めたり、株主らが損害賠償の集団訴訟を起こしたりするなど、創業以来の厳しい状況に立たされている。
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