投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 9 月 29 日 15:28:41:
回答先: 西鉄バス乗っ取り、少年を医療少年院送致(日本経済新聞) 投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 9 月 29 日 15:23:08:
今年五月の西鉄高速バス乗っ取り・殺傷事件で、強盗殺人、同未遂など五つの容疑で家裁送致された佐賀市の少年(17)(佐賀少年鑑別所に収容中)に対する第四回審判が二十九日午前、佐賀家裁で開かれた。永留克記裁判官は、事件当時は完全な責任能力があったと認定した上で、「治療が必要で、被害者に対する悔悟の念を起こさせ、規範意識を育てるには、医療的な矯正施設に収容するのが相当」として、医療少年院送致とする保護処分決定を言い渡した。
収容期間について、「短くとも五年以上」と勧告した。家裁送致時に「刑事処分が相当」と検察官送致(逆送)を求めた広島地検の意見は退けた。
佐賀家裁が公表した決定要旨によると、永留裁判官はまず、バスを乗っ取り、乗客一人を包丁で刺殺、四人にけがを負わせた一連の非行事実を認定。当時の精神状態について、「解離性障害」と鑑定結果に沿った認定をした上で、「普通の知能を有し、意識も清明で、解離性障害で弁別に従って行動を制御する能力が低下していた可能性があるものの、著しい程度のものではなく精神病的な心理状態にはなかった。成人の刑事事件でいう心神喪失はもちろん、心神耗弱にあったとも言えない」として、責任能力があったとの判断を示した。
少年の生育歴や事件に至る心理的背景について、運動能力が低く、日常動作が不器用だったことなどから、幼少期から自尊感情が深く傷つき、中学三年時、学校の非常階段から飛び降りて骨折したことが、少年の心理に大きな傷を与えたことを指摘した。
さらに、動機については、自室に引きこもってインターネットで殺人や死体などの残虐な画面を見て犯罪を実行しようという状態になった、と指摘。その上で、「愛知県で起きた十七歳の高校生の殺人事件を報道で見聞きし、先を越されたと感じた」ことが、引き金になったと認定した。
永留裁判官は、「悪質残忍かつ重大な事案で、検察官送致も考えられる」としながらも、少年がいじめを受けやすい性格や体格だったことを挙げ、「矯正施設での集団処遇に慎重な配慮が必要。精神分裂病を発病する危険性は無視できるほど低くない」と、保護処分が妥当と結論付けた。さらに、「加齢による脳の成熟や矯正教育により情性の獲得は期待できる」とした。
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バス乗っ取り・殺傷事件での佐賀家裁の決定は、少年を医療少年院送致という保護処分とした。これで、最近の少年による凶悪事件では、現行少年法での刑事罰対象年齢である岡山のバット殺傷の少年(17)、山口の母親バット殺害事件の少年(17)の二件に続き、保護処分となった。
今回の佐賀家裁の決定では、「非行時、意識は清明で、責任能力はある」としながらも、少年に精神障害の症状である解離性障害が見られ、「精神分裂病の前駆期である可能性がある」とした精神鑑定を基調とした内容になっている。
解離性障害は、本来、一貫性のある一個の人格が統合性を失い、「もう一人の自分がいる」(捜査段階での少年の供述)など自己同一性の喪失や、無感情の症状を呈するとされる。何の関係もない乗客を洋式肉切り包丁(牛刀)で次々と殺傷、血を流している乗客の写真を取るなどの少年の異常性、残虐性はこの障害に起因しているともみられる。
それでは、その症状の原因はどこにあったのか。決定ではそれを、幼少時代からの「仲間外れにされた」などの疎外感、高校受験直前の「階段飛び降り事件」による心理的外傷体験に求めている。また、不登校、引きこもり後の暴力、殺人などをテーマにしたインターネットのホームページへののめり込みが、この少年の精神状態にさらに影響を与えたことも指摘した。
現行の少年法は「再犯の防止と少年の更生保護」を基調としている。与党の少年法改正案提出といった厳罰化の流れの中にあるが、少年犯罪は個々のケースが多様であることを、最近三件の家裁決定が示している。(編集委員 板橋 旺爾)
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◆西鉄高速バス乗っ取り・殺傷事件◆
五月三日午後一時三十分ごろ、福岡県太宰府市の九州自動車道太宰府インター付近で、洋式肉切り包丁(刃渡り三十センチ)を持った少年が、運転手と乗客二十一人が乗った佐賀発福岡・天神行きバスを乗っ取った。女性三人が刺され、佐賀市水ヶ江、幼児教室主宰塚本達子さん(当時六十八歳)が死亡、二人が重傷。バスから飛び降りて脱出した乗客二人が重軽傷を負った。翌四日未明、東広島市の山陽自動車道小谷サービスエリアに停車中のバスに広島県警の警察官が突入し、少年を逮捕した。
(9月29日14:40)