投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 9 月 23 日 12:53:31:
欧州統一運動の陰に米国諜報機関の陰謀があった
●最新の「Electronic Telegraph」が、非常に興味深い記事を載せています。 第二次大戦後に急速に進展した“欧州統一”は、米国の戦略スパイ機関の資金と指導によって形成された一面がある、という歴史の真相暴露記事です。
●常識的に考えれば、米国のスパイ・トレーナーたちが大欧州“連邦”運動に血道を上げていたのは、東西冷戦の最盛期。 つまり反共運動として取り組まれていたわけで、政治・経済・文化面での“NATO”作りであった。 冷戦体制が破綻して、その「統一欧州」がかならずしも米国の“飼い犬”では済まなくなった現在の状況は、まさに歴史の皮肉を感じさせます。これは同時期に自民党支配による“封建体制”下の開発独裁体制づくりへの援助を受けてどこぞの国のための「浮沈空母」化を進めていた日本についても丸ごとあてはまるし、最近の例でいえば、アフガン戦争で回教勢力に軍事支援を行ない、そのツケに怯えている現在の状況にも当てはまる。 結局、「帝国主義」――私はこれをとりあえず「ローマ帝国」を連想しながら書いているのですが――は、「帝国」の統合を努めるがゆえに、良かれ悪しかれ属州から反撃を喰らう。 このダイナミズムは、歴史の必然だと思うんですが、どうも米国は――そしてソ連や英国やフランスなんかもね――理解できていないみたい。
●ところで、米国諜報界の「欧州合衆国」建設陰謀は――“建設”という言葉を見るとどうも石工を連想してしまう――単に米国のヘゲモニー維持にむけた「冷戦」対策だけだったんだろうか? ひょっとすると、アングロアメリカン・エスタブリッシュメントの“世界支配”構想の一環だったのかもしれませんな。 なにせCFRやUnited Nationsをはじめ米国の現在の国内的・国際的ヘゲモニーを支えている機関は、もともと大英帝国20世紀サバイバル構想であったローズ陰謀グループあたりから出てきているものだし、米国は独自の権益を守りながら、相変わらず大英帝国の利権の代理人として動いている側面がありますからねぇ……。
●英国には、大陸欧州への反発と警戒が昔から根強いわけで――まあ「民族の血」なんでしょうかね【笑】――欧州共同体にコミットすれば自由な――この島国を「帝国」に押し上げた原動力である「海賊のような」と言い替えても可――スタンドプレイができなくなると駄々をこねて、EUに積極協力しない気風が相変わらず強い。 しかし一方、大英帝国の利権を維持拡張するために大陸欧州に戦略的にコミットし、戦争を煽ったり――その最大の標的はすくなくとも20世紀においてはドイツだったが(最近のスラブ諸国についてもね)――米国を“楯”に使ってきた歴史もある。 だから、これから紹介する記事には「アメリカが舞台裏で猛烈な工作を行ない英国を“統一欧州連邦”に加えようと圧力をかけていたのではないか」という数十年前の風説が紹介されているけれども、むしろ米国を利用して英国が「被害者づら」しながら気の進まぬ様子で――内心ほくそ笑みながら――「欧州合衆国」に参加して一定の“安全有利”なポジションを得る、というシナリオが描かれていたのかも知れない。 ちょうど、どこぞの米国の「属州」で、英語ペラペラのオランウータンちゃんが、一応「固辞」の姿勢を示しながら首相だの大蔵大臣だのを引き受けて、米国への利権案内門戸開放の“門番役”をつとめてきたように……。
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● http://www.telegraph.co.uk/et?ac=000114832908976&rtmo=V6sqDfJK&atmo=ggggg3JK&pg=/et/00/9/19/wspy19.html
争点1943/2000年9月19日火曜日
欧州連邦主義者(ユーロフェデラリスト) が
米国のスパイの頭領たちから資金調達を受けていた
アンブローズ・エヴァンス=プリチャード記者
(ブリュッセル)
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機密指定から外された米国の政府書類から、1950〜60年代に米国の諜報業界(インテリジェンス・コミュニティ) が「ヨーロッパ合衆国」(ユナイテド・ヨーロッパ)建設へのはずみを作り出すために一大作戦行動を実施していたことが明らかになった。 米国諜報機関がヨーロッパの連邦主義運動に資金を供給し、指揮までしていたのだ。
問題の政府文書は、当時すでに噂として伝えられていた「アメリカが舞台裏で猛烈な工作を行ない英国を“統一欧州連邦”に加えようと圧力をかけていたのではないか」という説に確証を与えている。 1950年7月26日の日付がついた一枚のメモには、当時生まれたばかりだった欧州議会を「もり立てるべし」とする指示が記されている。 そこには、米国戦略事務局(OSS) ――CIAの前身機関――の創立者であり頭目でもあったウィリアム・J・ドノヴァン将軍の署名が付されていた。
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問題の書類の数々はワシントンにあるジョージタウン大学 の研究者、ジョシュア・ポール氏によって発見された。 これらは米国・国立公文書館の公表されたファイルのなかに埋もれていたのだ。 ヨーロッパ統一機運を煽る“道具”として主に利用されたのは、1948年に作られた「ヨーロッパ合衆国づくりを目指すアメリカ委員会」(ACUE) という組織であった。 その会長に就いたのは、他ならぬドノヴァンで、当時は表向きは「弁護士」という肩書きでこの組織に関与していた。
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副会長は、50年代にCIA長官だったアレン・ダレスである。 この「委員会」の理事会には、初代CIA長官のウォルター・ベデル・スミスをはじめ、CIAに以前務めていたとか出入りを繰り返していた人物たちが顔を揃えていた。 今回見つかった文書から、「ヨーロッパ合衆国づくりを目指すアメリカ委員会」(ACUE) が、終戦直後の時期に最も影響力があった連邦主義者団体の「大欧州運動」(the European Movement )に資金を流していたことが明らかになった。 たとえば1958年には「大欧州運動」の活動資金のなんと53.5パーセントが、米国のこの委員会から渡っていたのだ。
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「大欧州運動」の下部組織の一つだった「大欧州青年運動」(The European Youth Campaign )などは、資金のすべてがワシントンの米国中央筋から出ており、完全に米国の言いなりになっていた。 その指導者をつとめていたベルギー人のブール男爵は、特別口座に毎月アメリカからカネが振り込まれていた。 「大欧州運動」の頭目だったポーランド生まれのジョウゼフ・レティンガーはこうした米国の極度の介入に腹を立て欧州内部で資金調達を試みたが、即座に非難された。
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「大欧州運動」の指導を行なっていたのは、このレティンガーのほかに、統一欧州の実現を“予言”していた夢想家のロバート・シューマンやベルギー前首相のポール - アンリ・スパアクなどであっ
たが、彼らは一様に、米国の“スポンサー”の飼い犬として扱われていた。 この運動において、米国はもっぱら秘密作戦活動を行なっていた。 「ヨーロッパ合衆国づくりを目指すアメリカ委員会」(ACUE) の資金供給は、米国政府と親密な絆をもつ企業集団だけでなく、フォード財団とロックフェラー財団からも出ていた。
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フォード財団の頭目は、米国戦略事務局(OSS) の職員あがりのポール・ホフマンであるが、この人物は1950代後期に「ヨーロッパ合衆国づくりを目指すアメリカ委員会」(ACUE) の会長も務めていた。 米国・国務省も欧州統一陰謀工作で一定の役割を担っていた。 1965年6月11日付けで国務省・欧州課から出されたメモは、欧州経済共同体(EEC)の副総裁だったロバート・マージョリンに、秘密裏に通貨同盟を結成するよう指示を出していた。
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このメモは、「そうした(通貨同盟づくりに向けた)提案がもはや却下できない状況になるまで公論が起きるのを抑えておくべきだ」という忠告が書かれている。
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【原文】
● http://www.telegraph.co.uk/et?ac=000114832908976&rtmo=V6sqDfJK&atmo=ggggg3JK&pg=/et/00/9/19/wspy19.html
ISSUE 1943 Tuesday 19 September 2000
Euro-federalists financed by US spy chiefs
By Ambrose Evans-Pritchard in Brussels
● DECLASSIFIED American government documents show that the US intelligence community ran a campaign in the Fifties and Sixties to build momentum for a united Europe. It funded and directed the European federalist movement.
The documents confirm suspicions voiced at the time that America was working aggressively behind the scenes to push Britain into a European state. One memorandum, dated July 26, 1950, gives instructions for a campaign to promote a fully fledged European parliament. It is signed by Gen William J Donovan, head of the American wartime Office of Strategic Services, precursor of the CIA.
●The documents were found by Joshua Paul, a researcher at Georgetown University in Washington. They include files released by the US National Archives. Washington's main tool for shaping the European agenda was the American Committee for a United Europe, created in 1948. The chairman was Donovan, ostensibly a private lawyer by then.
●The vice-chairman was Allen Dulles, the CIA director in the Fifties. The board included Walter Bedell Smith, the CIA's first director, and a roster of ex-OSS figures and officials who moved in and out of the CIA. The documents show that ACUE financed the European Movement, the most important federalist organisation in the post-war years. In 1958, for example, it provided 53.5 per cent of the movement's funds.
●The European Youth Campaign, an arm of the European Movement, was wholly funded and controlled by Washington. The Belgian director, Baron Boel, received monthly payments into a special account. When the head of the European Movement, Polish-born Joseph Retinger, bridled at this degree of American control and tried to raise money in Europe, he was quickly reprimanded.
●The leaders of the European Movement - Retinger, the visionary Robert Schuman and the former Belgian prime minister Paul-Henri Spaak - were all treated as hired hands by their American sponsors. The US role was handled as a covert operation. ACUE's funding came from the Ford and Rockefeller foundations as well as business groups with close ties to the US government.
●The head of the Ford Foundation, ex-OSS officer Paul Hoffman, doubled as head of ACUE in the late Fifties. The State Department a lso played a role. A memo from the European section, dated June 11, 1965, advises the vice-president of the European Economic Community, Robert Marjolin, to pursue monetary union by stealth.
●It recommends suppressing debate until the point at which "adoption of such proposals would become virtually inescapable".