投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 10 月 11 日 02:51:08:
【エルサレム10日=村上大介】
パレスチナ自治区でのイスラエル軍とパレスチナ人の衝突が危機的な状況を迎え、停戦への模索が続く中、今度はイスラエルのユダヤ人が、イスラエル国籍を持つアラブ人に対する襲撃を開始するという新たな展開を迎えた。八日夜、イスラエル北部のアラブ人都市ナザレをユダヤ人の一群が襲撃しアラブ側に三人の死者が出たほか、九日夜も全国的にアラブ人の家屋などへの焼き討ちが続いており、バラク首相が九日夜、テレビ演説で、国民に平静を呼びかける事態となっている。
バラク首相が七日夜、パレスチナのアラファト議長に「二日以内に暴力を停止しなければ、あらゆる手段に訴える」と通告し、パレスチナ自治区では衝突が沈静化の兆しを見せ始めていた。ところが、ユダヤ教の一年で最も神聖な「贖罪(しょくざい)の日」に入った八日夜、ナザレに隣接するユダヤ人の町から数百人のユダヤ人住民がナザレに襲撃をかけ、通りがかりのアラブ人住民に襲いかかったり、住宅を破壊。これに介入したイスラエル警察が、アラブ人住民に発砲したことから、大規模な衝突に発展した。
組織的にアラブ人襲撃に動いたユダヤ人は右派強硬派とみられているが、ナザレのほか、北部カルミエールのアラブ人の集落に対しても千人を超すユダヤ人が襲撃を行ったほか、テルアビブ近郊など各地で、ユダヤ人によるアラブ人住宅や乗用車への焼き討ちが行われ、十日未明まで騒乱状態が続いた。
こうした事態の進展に怒ったパレスチナ自治区の住民が再びイスラエル軍に投石を開始し、八日深夜から各地で衝突が起き、いったんは収束に向かうかにみえた自治区の緊張は再び高まっている。
一九四八年のイスラエル建国でイスラエル国内にとどまったアラブ人住民は現在約百万人、イスラエル人口の二〇%近くを占める。長年「二級市民」として差別を受けながらも、現在は、国会議員をはじめ、判事や外交官などにも進出しており、少しずつ平等な権利の実現に動いている。イスラエル側も、国内のアラブ人との「共存」を、アラブ世界との共存のテストケースととらえてきただけに、国内のユダヤ人とアラブ人の衝突激化は、一般のイスラエル国民に大きな衝撃を与えている。
バラク首相は九日夜の演説で、「アラブ系住民を攻撃することがないように」とクギをさすとともに、「私たちが五十年にわたり築きあげてきたことが汚される」と訴え、穏健左派政党メレツのサリド党首も「このままではイスラエルは、(セルビア人がイスラム教徒を民族浄化しようとした)コソボと同じになってしまう」と語り、危機感をあらわにした。