米国の戦争犯罪などを暴いたアッサンジを米国へ引き渡すよう英裁判所は命令
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2022.04.21 櫻井ジャーナル
イギリスのウェストミンスター治安判事裁判所は4月20日、内部告発を支援する活動を続けてきたウィキリークスのジュリアン・アッサンジをアメリカへ引き渡すように命じた。戦争犯罪を含むアメリカ支配層の権力犯罪を明らかにしたことが「スパイ行為」にあたるとして、オーストラリア人のアッサンジを処罰するとアメリカ政府は主張、それをイギリスの裁判所が容認したわけだ。
つまり、アメリカの支配層にとって都合の悪い事実を明らかにしたなら、その国籍がどこであろうと、どこに住み、どこで活動しているかに関係なく誰でもアメリカ政府に処罰されることになる。今回の判決は「言論の自由に対する死刑宣告」に等しい。もっとも、西側の有力メディアはすでに言論を放棄、権力者の宣伝機関になっているので関係ない話かもしれないが。
ウィキリークスはアメリカの私的権力を怒らせる情報を何度か公表してきた。そのひとつが2016年の大統領選挙に関するもの。民主党の候補者選びが始まってしばらくすると、ダークホース的な存在だったバーニー・サンダースが支持率を高め、私的権力が2015年の段階で次期大統領に内定していたヒラリー・クリントンを脅かし始めたのだ。
そこでDNC(民主党全国委員会)はサンダースの足を引っ張る工作を始めるのだが、その実態を明らかにする電子メールをウィキリークスが明らかにしてしまう。そこでヒラリーたちが始めたのが「ロシアゲート騒動」だが、これが捏ち上げだったことが今では明確になり、司法省、FBI、CIAなどの責任が問われている。
しかし、アメリカの当局がアッサンジを秘密裏に起訴したのは2012年。その大きな理由と考えられているのはイラクにおけるアメリカ軍の住民虐殺を暴いたことにあると考える人も少なくない。
ウィキリークスは2010年4月、アメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターが2007年7月に非武装の一団を銃撃、十数名を殺害する場面を撮影した映像を公開した。犠牲者の中にはロイターの特派員2名が含まれている。その映像を見れば、武装集団と間違ったわけでないことは明白だ。
その情報源だったアメリカ軍のブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵は逮捕され、スウェーデンの検察当局は2010年11月にアッサンジに対する逮捕令状を発行した。
アッサンジにかけられた容疑は「性犯罪」とされたが、もう少し具体的に言うならば、合意の上で始めた行為におけるコンドームをめぐるトラブルだ。アッサンジ側は女性の訴えを事実無根だとしている。このふたりの女性も当局が主張する容疑を否定している。
その話を警察がタブロイド紙へリーク、「レイプ事件」として報道されることになるが、主任検事のエバ・フィンはその翌日、容疑が曖昧だということで令状を取り消してしまう。
そこへ検事局長だったマリアンヌ・ナイが介入、主任検事の決定を翻し、捜査再開を決めた。しかも、捜査資料がメディアにリークされている。アメリカ政府の意向を受けた政治的な決定だとみられている。
それに対し、アッサンジは政治犯だと判断、2012年8月に亡命を認めたのがエクアドルの大統領だったラファエル・コレア。ロンドンのエクアドル大使館で保護するが、外へは出られなくなった。
アッサンジに対する捜査をスウェーデン当局が打ち切った2017年5月にエクアドルの大統領はコレアからレニン・モレノに交代、新大統領は亡命を取り消した。
アッサンジは2019年4月11日、ロンドンのエクアドル大使館でロンドン警視庁の捜査官に逮捕され、それ以降、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所で拘束されることになった。逮捕の1カ月前、2019年3月11日にIMFはエクアドルに対して42億ドルの融資を実施すると発表していた。この融資は亡命取り消しの交換条件のひとつだったとみられている。
アメリカはアッサンジを起訴する理由としてハッキングを主張している。その容疑で最も重要な証人はシギ・トールダルソン。2010年当時、ウィキリークスの活動にボランティアとして参加していたが、後にFBIへの情報提供者になった人物だ。ウィキリークスはこの人物が寄付のうち5万ドルを横領したと疑っていた。
2010年の初め、アッサンジからアイスランド政府のコンピュータに侵入して情報を盗むように指示されたなどとトールダルソンは主張していたが、後にそれは嘘だとメディアに証言している。トールダルソンは第三者から書類を受け取り、チェックしないままアッサンジに渡したという。
その当時、トールダルソンは「サブ」と呼ばれていたヘクター・ザビエル・モンセガーと接触していた。この人物はハッキング・グループのリーダーだったが、逮捕され、懲役124年が言い渡される可能性があったが、司法取引でFBIへの情報提供者になっていた。アイスランド政府へのハッキングを仕掛けたのはFBIを後ろ盾とするサブだ。トールダルソンはFBIの罠にかかり、FBIの情報提供者になった。
ブチャでの住民殺害を含め、西側の政府や有力メディアが宣伝している「ロシア軍による戦争犯罪」は事実でないことが明確になっている。マリウポリから脱出した住民は、クーデター体制の政権が送り込んだネオ・ナチを主体とする親衛隊が住民を人質にし、殺害していることを異口同音に証言している。
そのネオ・ナチの後ろ盾がアメリカ/NATOであり、住民殺戮の黒幕である。そのアメリカの権力犯罪を暴いたのがウィキリークス。その象徴的な存在だったアッサンジはイギリスで拘束され、アメリカへ引き渡されようとしている。
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