総裁選:議員支持、岸田氏一歩先行 ! 河野氏猛追、高市氏追い上げ
立候補者の政治・経済等の主張とは ?
( www.jiji.com:2021年09月26日07時10分)
◆議員票では、岸田前政調会長が一歩先行 !
9月29日投開票の自民党総裁選の情勢を探るため、時事通信は党所属国会議員の終盤の支持動向を調査した。
議員票では、岸田文雄前政調会長(64)が一歩先行し、河野太郎規制改革担当相(58)が猛追。高市早苗前総務相(60)が激しく追う展開になっている。野田聖子幹事長代行(61)は支持が広がっていない。党員・党友票を加えた合計で、いずれも過半数に達せず、総裁選は上位2人による決選投票にもつれ込む公算が大きい。
◆議員の約15%は、態度不明 !
調査は25日までに、直接聞き取るなどして実施した。議員の約15%は態度を明らかにしておらず、情勢はなお流動的だ。
議員票(382票)で、岸田氏は自身が率いる岸田派(46人)をまとめた。さらに、細田派(96人)、麻生派(53人)、旧竹下派(51人)のベテランや参院議員を中心に浸透しており、支持する議員は3割台に到達。1週間前の2割台半ばから伸ばした。
◆河野氏は、伸び悩んでいる !
1週間前に首位を争っていた河野氏は、岸田氏に比べて伸び悩んでおり、支持議員は、岸田派以外の6派閥と無派閥の中堅・若手を中心に2割台後半である。
政策決定過程での自民党の役割を軽視したとも取れる発言が、反感を招いたとの見方もある。
高市氏の支持議員は2割超。支援を受ける、安倍晋三前首相の出身派閥である細田派の5割以上を固め、麻生派、旧竹下派、二階派(47人)でも支持を広げつつある。
◆党員票は、河野氏がリード !
野田氏は推薦人20人からの上積みに苦しんでいる。当選するのは「私以外」と弱気を漏らしたことも響いた可能性がある。
党員票(382票)は、各陣営や地方組織への取材を総合すると、河野氏がリードし、岸田、高市両氏が追っている。これらを加味すると、総裁選は(1)河野氏と岸田氏(2)河野氏と高市氏―のいずれかの組み合わせによる決選投票となる可能性が高い。
◆各陣営や各派閥の駆け引きが、本格化しそうだ !
決選投票では、議員票が382票に維持される一方、党員票は各都道府県連に1票の47票に圧縮されるため、議員票の比重が高まる。週明け以降、決選投票での合従連衡をにらみ、各陣営や各派閥の駆け引きが本格化しそうだ。
(参考資料)
自民党・総裁選:立候補者の政治・経済等の主張とは ?
(www.businessinsider.jp:2021年9月17日)
◆岸田文雄氏(64歳)
自民党の名門派閥「宏池会」(岸田派)の会長。これまでに外相や党政調会長などを歴任した。
昨年の総裁選では安倍前首相からの禅譲を期待しながらも、菅義偉首相の出馬でその目算が外れた。今回は他に先駆けて、立候補を表明した。
スローガンは「声をかたちに。信頼ある政治」。
政策で一番に掲げるのは「コロナ対策」だ。「医療難民ゼロ」「ステイホーム可能な経済対策」「電子的ワクチン接種証明の 活用と検査の無料化・拡充」「感染症有事対応の抜本的強化」を4本柱に掲げる。
省庁再編も目指し、感染症対応を一元的に担う「健康危機管理庁」の創設も公約に入れた。
経済政策では「『成長と分配の好循環』による新たな日本型資本主義」で新自由主義」からの脱却を掲げる。数十兆円規模の経済対策も図るという。
また「成長」一辺倒ではないとアピールも。「令和版 所得倍増計画」と銘打ち、格差の是正を掲げ、安倍・菅路線とは一線を画すことを意識している。
ちなみに「所得倍増計画」は、岸田氏の出身派閥「宏池会」の創設者で池田勇人首相(任1960〜64)が打ち出した経済政策で、戦後の高度経済成長に影響を与えたもの。岸田氏は偉大なる先達に自らを重ね、演出しているようだ。
特徴的なのは、党役員任期を「1期1年・連続3期」までとし「権力の集中と惰性を防ぐ」と明言したことだ。
安倍・菅政権下で党幹事長として過去最長の任期となった二階俊博幹事長を中心とした執行部の刷新を狙う意図を匂わせた。
これは本気で総裁を狙うという党内向けの「攻め」のメッセージだ。
選択的夫婦別姓をめぐっては党内の推進議連に参加しているが、出馬会見ではBusiness Insiderの質問に対し「引き続き議論を」と答え、慎重な立場を崩さなかった。
これは最大派閥の細田派に影響力を持つとされる安倍前首相らを意識した発言と見られた。
ところが、告示日が近づいてきた15日にはBS-TBSの番組で、導入を議論すべきと軌道修正した。これは若手議員や、選択的夫婦別姓に肯定的な河野氏の出馬を意識したものと見られる。
◆高市早苗氏(60歳)
もとは自民党の最大派閥「清和政策研究会」(現在の細田派、当時は町村派)に属していたが、現在は無派閥。これまでに総務相や党政調会長などを歴任した。
実は生粋の自民党員ではなく、過去には自由党、新進党などに所属していた。
自民党入りしてからは清和政策研究会へ。以降、党内保守派として活動している。
今回の総裁選では随一の保守派。細田派に影響力を持つとされる安倍前首相に国家観や思想が近いことから、安倍氏やその周辺から支持を受けている。
政策的にも、安倍前首相のカラーを引き継ぐ姿勢が色濃く見える。立候補表明会見で最初に掲げたのは経済政策。「アベノミクス」を引き継ぎ、発展させるという「サナエノミクス」だ。
内容はアベノミクスと同様「3本の矢」を掲げ、金融緩和、機動的な積極出動、危機管理投資・成長投資による積極財政を主張。
安倍政権が掲げた「物価上昇率2%」に届くまでは、プライマリーバランス(国と地方の基礎的財政収支)の黒字化目標を「凍結」すると訴えた。
省庁再編にも言及し、「環境エネルギー省」や「サイバーセキュリティ庁」の創設を目指すという。
また、コロナ対策にとどまらず将来的な感染症への対応のため「ロックダウン」(都市封鎖)を可能にする法整備も主張する。
防衛政策も重視。「敵基地攻撃」の能力保有について「敵基地を無力化することを早くできた国が自分の国を守れる」と述べ、積極的な法整備を主張。電磁波による敵基地無力化や小型の核融合炉の建設なども訴えている。
◆河野太郎氏(58歳)
現役閣僚で唯一の立候補者が河野氏。2009年以来、2回目のチャレンジだ。
安倍政権では外相、菅政権では行政改革担当相。行政手続きにおける「はんこ」の必要性に疑問を呈すなどで注目された。
コロナ禍にあって、ワクチン担当相も担っている。
総裁選でのスローガンは「日本を前に進める。自民党を変え、政治を変える」。
政策集の先頭に「命と暮らしを守る政治」を掲げ、科学的知見に基づく感染対策やワクチンの3回目(ブースター)接種実施などを掲げた。
経済政策には「地域経済と社会を支える中小企業や個人事業主」を支えると明記。エネルギー政策も重視。
菅政権が掲げた「2050年までの温室効果ガス排出量“実質ゼロ”」目標を引き継ぐ考えを示す。
また、社会保障改革に向けて厚生労働省の所管業務を「年金」と「医療」で分担すべきと主張。岸田氏、高市氏と同様に省庁再編も視野に入れているようだ。
河野氏の持ち味といえば、党の方針や有力者も批判してきた、歯に衣着せぬ「異端児」の姿勢だ。
過去には「脱原発」や、母方が天皇の血統を引く「女系天皇」の検討を主張するなど、自民党内では異色の「与党内野党」として存在感があった。
ところが今回の総裁選出馬をめぐり、これまでの持論はトーンダウンさせている。
「脱原発」については「いずれ原子力はゼロになるだろう」と述べるにとどめ「再生可能エネルギーを最優先で導入していく」「足りないところは安全が確認された原発を当面は再稼働していくのが現実的」と語っている。
皇位継承について。「女系天皇」や父方が天皇の血統を引く「女性天皇」については、あくまで「政府の有識者会議での議論を尊重する」という姿勢を見せた。
これらは党内の保守派への気配りと見える。
河野氏の所属派閥は「志公会」(麻生派)だが、今回は派閥としての全面バックアップは得られなかった。
一方、派閥の色が薄いこと、党内の実力者の中では比較的若いことから、当選3回以下の若手議員からは古い自民党のイメージを刷新できると信望は厚い。
無派閥で安倍氏とは距離を置いてきた小泉進次郎氏、過去の総裁選で安倍氏や菅氏と争った石破茂氏などが支持を表明している。
報道各社による「次の首相」を問う世論調査でも軒並みトップに名を連ねていることから「選挙の顔」として期待する向きがある。
◆野田聖子氏(61歳)
二階幹事長を「幹事長代行」として支えてきた野田氏は、告示日前日の9月16日に立候補を表明した。
野田氏は過去3回の総裁選でも立候補を模索してきたが、党国会議員20人からの推薦の壁に阻まれ、出馬を断念してきた経緯がある。
今回は切り崩しを警戒しつつ、推薦人の獲得に奔走。ギリギリで初の立候補表明にこぎつけた。
告示直前になったため、具体的な公約・政策については選挙戦を通して訴えていくとしている。
野田氏は1993年に初当選。98年に当時の小渕恵三内閣で郵政相に抜擢。当時37歳での閣僚就任は史上最年少だった。その後も総務相、党総務会長などを歴任した。
立候補表明のぶらさがり会見では、「他の候補者の政策からは小さき者、弱き者を奮い立たせる政策を見つけ出せなかった」
「これまで主役になれなかった女性、子ども、高齢者、障害者が生きる価値があると思える保守の政治をつくりあげたい」と訴えた。
立候補表明は4人の中で最も遅かったが、告示日が近づくにつれてTwitterで「だれもが『わかる政治』を」と題して政策について連日表明。「コロナ禍で女性たちが抱える孤独感や困難に寄り添うことから始めたい」と日々、方針をつづった。
加えて、菅政権が発案した「こども庁」の実現、こどもの誕生・成長、虐待や貧困に対応する「こどもまんなか社会」事業などにも意欲を見せる。
野田氏自身も、人工呼吸器や胃ろうなどが必要な「医療的ケア児」の息子がいる母でもある。
立候補を表明に先立つ9月16日朝には、「個性・多様性の源泉である女性、高齢者、障害者、LGBTQなど、全ての国民が力を発揮できる『フェア』な制度に向け、改革を推進します」と表明した。
さらに16日にはTwitterで「選択的夫婦別姓の実現を目指します」とも明記した。野田氏は若手議員の頃から選択的夫婦別姓に「賛成」の立場だ。
2002年には、家庭裁判所の裁定を通じて例外的に夫婦別姓を実現できる法案提出を目指したが党内保守派の高い壁を超えられず、断念している。
所見発表では日本初の女性総理になったら「閣僚の半分は女性を目指す」と表明した。
また、森友問題の再調査にも4候補で唯一言及した。財務省での決済文書の改ざんを批判した上で「総裁になったら党に解明チームをつくり、必要に応じて調査する」と述べた。
加えて、皇位継承問題については「総裁選で皇位の議論をすべきではない」とした上で、「女系天皇」も「選択肢の一つ」との見解を示した。
週刊文春は9月8日、野田氏の夫が警察庁のデータベース上で「過去に暴力団に所属していたと記録されていることがわかった」と報じた。過去にも週刊文春は野田氏の夫が暴力団員だったと報じてきたが、野田氏側は否定し名誉毀損だとして訴え、訴訟になった。
東京地裁は2021年3月に、大筋で名誉毀損を認めつつも「夫は元暴力団員」とした部分については「真実と信じる相当な理由があった」との判決を下したが、野田氏側・週刊文春側ともに控訴している。