低開発国の人間の老化が早い理由
自分は生き急いだ方がいいライフスタイルなのかどうかを先に考えて生きていく
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「環境が恵まれていたら、この人はもっと若々しかったはずなのに」と思ったりすることもある。しかし、彼らは環境が悪いから健康に気をつけるのではなく、逆に自ら肉体の破壊に結びつくものに突き進む。別の言い方をすると、生き急いでいるかのような方向に突き進んでいく。(鈴木傾城)
彼女たちの容姿の衰えは、日本人女性と違ってとても早い
私は東南アジア・南アジアの女性たちが大好きで、彼女たちと深く関わって今まで生きて来た。今でも彼女たちの褐色の肌を懐かしく思う。暑い部屋の中で汗に濡れた彼女たちの湿った肌の美しさは今でも私の大切な記憶だ。
私が付き合ってきた女性は社会の底辺で過酷な人生を生き延びた女性ばかりだ。恵まれた人生を送ってきた女性なんかひとりもいない。私たちが想像すらできないような過酷な人生で彼女たちの身体は傷ついてきた。
出産した女性の身体についても、そのダメージは日本女性よりも東南アジアや南アジア女性の方が大きい。
日本女性は一人目の子供を産んでも、身体のケアは万全なので、思うほど身体が経産婦《けいさんぷ》のものにならない。人によってはまったく妊娠線もなく、子供を産んだのが分からないことすらもある。
しかし、東南アジアや南アジアの女性たちは、一人目の子供の出産で大きくダメージを受けることが多い。これは女性によって個人差があるので一般化はできない話なのだが、総合的に見るとダメージの鮮明さは南方の貧しい女性の方が大きい。
老いに関してもそうだ。日本人の40代の女性はまだ若々しさを十分に保っているのだが、東南アジアや南アジアの貧しい女性たちの40代というのは老化が加速度的に進んでいて日本人女性の60代と同じレベルに見えることも多い。
彼女たちの容姿の衰えは、日本人女性と違ってとても早いことは私は20代の頃から気付いていた。
強烈な紫外線。厳しい肉体労働。脆弱な医療。絶えない生傷。栄養不良……。
彼女たちの肉体は厳しい環境でどんどん傷つけられていた。そして、寿命は日本人よりもずっと短い。だからなのだろうか。私は彼女たちの姿勢に、どこか生き急いでいるような感覚があることにも気付いている。
人生を早回しで生きようとする姿勢を持つ人がいる
タイ女性のみならず、東南アジアの女性と付き合ったことのある男はみんな一様に言うのは彼女たちがあまり先のことは考えず、常に短期的な利益や快楽をすぐに手に入れようとすることだ。
欲しいモノはすぐに買う。持っている金もすぐに使う。金がなければ借金する。多く食べ、多く楽しみ、多く施しをする。まるで明日がないかのように生きている。
貧しいフィリピン女性と結婚した日本人男性が、一ヶ月分の生活費を渡したらそれを当日には全額を欲しいモノを買って使い切ったという話も普通に聞く。
「彼女たちは欲望を我慢できない」という人もいる。そういう側面も確かにあるかもしれない。それと同時に私は彼女たちの中に「生き急ぎ」があるのではないかとも思っている。「生き急ぎ」というのは、要するに人生を早回しで生きようとする姿勢である。
私が見てきた東南アジアや南アジアの女性の過酷さと重なるのが、肉体労働に従事してきた労働者たちだ。
ドヤ街である大阪あいりん地区や、横浜の寿町や、東京の山谷で、老いた労働者が歩いている姿を見ていると、足を引きずっている人や、どこか身体を壊して背を丸めて痛みをかばいながら歩いている姿をよく見る。
身体を酷使し続けて生きてきた人たち……。そうした人たちの姿に、過酷だった彼の人生を思い描くことができる。
若い頃が過酷でも、徐々に良い環境で暮らせるようになったら身体をいたわる余裕も出てくるかもしれない。しかし、そうでないと身体は修復が効かなくなってしまう。
過酷な環境は人の身体に大きなダメージを与えるというのは、私は貧しさの中で出会う人たちを見てずっと気にしてきたことでもある。「環境が恵まれていたら、この人はもっと若々しかったはずなのに」と思ったりすることもある。
しかし、彼らは環境が悪いから健康に気をつけるのではなく、逆に自ら肉体の破壊に結びつくものに突き進む。別の言い方をすると、生き急いでいるかのような方向に突き進んでいる人が多い。具体的にはどういうことか。
身体が壊れるよりも死ぬ方が先だと思っている
たとえば、過度のアルコールに溺れる人は大勢いる。アルコールの大量摂取もまた人間の身体を大きく老化させるのは誰もが経験的に知っていることだ。
アルコールの摂取は身体の「糖化」を進める要因になっているのだが、この糖化が身体の老化を押し進める元凶となる。さらに言えば、喫煙も大きな影響がある。喫煙は身体に悪いとは言われ続けているが「だから何だ?」と取り合わない。
アンダーグラウンドに生きている男女が急激に老け込むように見えるのは、アルコールとタバコが最も大きな要因になっているのは間違いない。
アンダーグラウンドの人間はそこに恒常的な睡眠不足が加わる。この睡眠不足もまた身体を老化させる大きな要因だ。
どんなに環境的に恵まれていても、酒・タバコ・睡眠不足というライフスタイルに染まっていくと、想像以上のダメージを身体に与える。しかし、生き急いでいる人にとってはダメージなんか関係ない。
身体が壊れるよりも死ぬ方が先だと思っているからだ。
人間の身体はひとつしかない。この身体は徐々に徐々に劣化して最後にはあちこち壊れて使えなくなる。挙げ句の果てに、最後は何をどうしても完全に機能を停止する。それが死だ。どんなに身体を大切にしても、最後は身体が壊れて死に至る。
人の身体は常に良い状態を保てるわけではない。時間の経過と共に、どんなにメンテナンスをきちんとしていても劣化して壊れて死んでいく。生老病死のサイクルから逃れられた個体はひとつもない。
すべての形あるものは崩れて壊れていく。だから「諸行無常」であって「栄枯盛衰」なのである。
若さはなくなってから貴重なものであると気付く。健康は失ってから大切なものであると気付く。命は消えつつあることを自覚した瞬間から取り返せないものであったことを理解する。
もし自分の寿命が長くないと思う人は、どうするのだろうか。少なくともじっくり生きようとは思わなくなる。それよりも、楽しいこと、面白いこと、心地良いことは、どんどん経験しておこうと思う。つまり、生き急ぎがそこに発生する。
生き急いだ方がいいのに何もしていない人が多いように見える
かく言う私は、東南アジアの売春地帯にどっぷり浸っていた時、自分の寿命はもしかしたら長くないのではないかという予感にいつも怯えていた。20代から30代は健康にはかなり無頓着な状況で過ごしてきたからだ。
20代の私はアルコール、タバコ、ドラッグ、連日連夜の睡眠不足のすべてを一通りやってきた。その時期の私は確かに「どうせ人生が短いなら、今のうちにいろいろ経験しておかないと損だ」という気持ちが無意識にあったように思える。
その乱脈生活は40代から悪影響として現れた。きっかけは交通事故だった。全快するのに半年以上もかかった。
そして、その後から体力が急激に衰えていき、原因不明の倦怠感、絶え間ない頭痛、耳鳴り、めまいに苦しむようになり、突発性難聴になって聴力の半分以上を失った。今も聴力は戻らない。
慢性的に腰も痛いし、歩き続けると足の先から膝まで痛んでくる。身体のいろんなところが徐々に徐々に劣化し、壊れているのがリアルタイムで分かる。
結局、私は身体を壊すごとに悪い習慣をやめていったのだが、若い頃は生き急いでいたので健康悪化を食い止めるのはやや遅かった。そのため、健康を害したまま生きなければならない羽目に陥っている。
モノは壊れたら買いかえればいいが、肉体はそういうわけにはいかない。自分の身体は劣化したからと言って、違う身体に乗り換えることはできない。そのように考えると、自分の身体は早く劣化するのか、それとも徐々に劣化していくのかを考えておくのは悪くない。
悪い環境で生きるしかない人や、悪いライフスタイルをやめられない人は、とにかく生き急いだ方がいい。もし、身体を大切にして慎重に生きることができる人はじっくりと物事を詰めることができる時間的余裕はある。
生き急いだ方がいいのか。
じっくり生きた方がいいのか。
私から見ると、生き急いだ方がいいのに何もしていない人が多いように見える。身体はひとつしかなく、時間は巻き戻せないのでもったいないと思う。
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