米国財務省が隠していた巨大銀行の不正行為を明らかにする文書が明らかに
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2020.09.24 櫻井ジャーナル
世界的に有名な金融機関がマネーロンダリングなど不正行為に手を染めていることを示す文書が公表された。その金融機関とはJPモルガン、HSBC(旧社名は香港上海銀行)、スタンダード・チャータード銀行、ドイツ銀行、ニューヨーク・メロン銀行。文書を作成したのはアメリカ財務省のFinCEN(金融犯罪捜査網)だが、これまで秘密にされていた。それをICIJ(調査ジャーナリスト国際協会)が公表、FinCENから犯罪行為だと非難されている。
JPモルガンは反ニューディール派のクーデターを目論んだことで知られる巨大銀行。1932年の大統領選挙で当選したフランクリン・ルーズベルトを失脚させ、ニューディール派をホワイトハウスから追い出す目的でウォール街の住人は1933年から34年にかけてクーデターを計画したことは本ブログでも繰り返し書いてきたが、そのクーデター計画の中心的な存在がJPモルガンだった。
JPモルガンの創設者はジョン・ピアポント・モルガン。その父親であるジュニアス・モルガンはジョージー・ピーボディーと銀行を経営していた。その銀行が19世紀の半ばに業績が悪化、ピーボディーが親しくしていたロスチャイルド一族の支援を受けている。そのロスチャイルド一族に見込まれたのがジョン・ピアポント・モルガンだ。
HSBCとスタンダード・チャータード銀行は19世紀の半ば、アヘン戦争の直後に創設されたイギリスの金融機関で、いずれも香港と密接な関係がある。イギリスに割譲されて以降、香港は犯罪組織やイギリスやアメリカの情報機関の資金を処理するための拠点になった。1953年にイギリスとアメリカの情報機関はイランのムハマド・モサデク政権をでクーデターで倒したが、その際に工作資金を動かし、後にロッキード事件でも名前が出てくるディーク社も香港を拠点にしていた。アメリカやイギリスが香港に執着している理由のひとつはこの辺にあるのだろう。
中国におけるアヘン取引を18世紀に始めたイギリス人はシェルバーン伯。東インド会社の商人や聖ヨハネ騎士団のメンバーと手を組んでのことだった。イギリスはインド産のアヘンを売っていた。アメリカ人も中国でのアヘン取引で大儲けしているが、そのアヘンの原産地はトルコだ。
イギリスの支配者は中国にアヘンを売りつけるだけでなく、植民地化して富を奪い尽くすつもりだった。当時の中国は満州族が支配する清の時代で、漢民族の不満を利用するため、イギリスを拠点とするイングランド・グランドロッジは清に秘密結社を作る。そのひとつが三合会だ。
アヘンの取り引きで中心的な存在だった会社がジャーディン・マセソン。中国での麻薬取引で大儲けしたこの会社は1859年にふたりのエージェントを日本へ送り込んだ。ひとりは長崎を拠点にしたトーマス・グラバーであり、もうひとりは横浜のウィリアム・ケズウィック。
日本に渡ってから武器商人としても活動するグラバーは歴史小説に登場するので有名だが、大物はケズウィック。ジャーディン・マセソンの創業者一族に属し、後に香港上海銀行の重役になる。現在、ジャーディン・マセソンはケズウィック一族が経営している。
イギリスの支配者は1970年代にロンドンを中心とするオフショア市場のネットワークを築き上げた。それまでの有名な税金避難地はスイス、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ベルギー、モナコなどだったが、秘密度はシティのシステムが圧倒的に高い。
イギリスのシステムはロンドンのシティが中心で、ジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン諸島、バミューダ、英領バージン諸島、タークス・アンド・カイコス諸島、ジブラルタル、バハマ、香港、シンガポール、ドバイ、アイルランドなど、かつで大英帝国を構成していた国や地域が結びついている。
ロンドンに対抗するため、アメリカは1981年にIBF(インターナショナル・バンキング・ファシリティー)を開設、これをモデルにして日本では86年にJOM(ジャパン・オフショア市場)をオープンさせたが、ここにきてアメリカが租税避難の主導権を握ったとされている。
そうした状況を象徴する出来事が2015年9月にあった。ロスチャイルド家の金融持株会社であるロスチャイルド社のアンドリュー・ペニーがサンフランシスコ湾を望む法律事務所で講演したのだが、そこで税金を払いたくない富豪は財産をアメリカへ移すように顧客へアドバイスするべきだと語ったという。
アメリカこそが最善のタックス・ヘイブンだというわけで、ロスチャイルドはネバダのレノへ移しているという。シティを中心としたオフショア市場からアメリカのネバダ、ワイオミング、サウスダコタなどへ富豪たちは口座を移動させたと言われている。
世界の富豪は資産を地下へ隠し、大多数の人びとはその実態を知ることができない。巨大金融機関はそうすた資産隠しもビジネスにしている。その一端が今回、明らかにされたわけだが、アメリカでは財務省だけでなく、公的な機関は富豪の不正を取り締まる意思はなさそうだ。内部告発を支援していたウィキリークスのジュリアン・アッサンジを厳罰に処そうとしているのもそのためである。