ベラルーシ
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2020年8月23日 マスコミに載らない海外記事
クレイグ・マレー
2020年8月16日
欧米マスコミは、ルカシェンコはプーチンの手先だと誤解している。それは正しくない。プーチンは、彼のことを腹立たしく、むしろ頭の鈍い時代に合わない人物と見なしている。ルカシェンコが本当は最近の選挙で負けたという欧米の誤解もある。それは正しくない。公式結果発表で、差が極めて誇張されているが、彼はほぼ確実に勝っていた。ロンドンがイギリスではないのと全く同様、ミンスクはベラルーシではない。ベラルーシの大部分がかなり遅れており、国家機構によって大きく影響を受ける。独裁者は自分の人気を高くするため自由に使える、あらゆる手段を持っている。だからといって、奇妙な選挙や国民投票が、その人物が独裁者ではないことを意味しない。私が20年近く言っているように、ルカシェンコは独裁者だ。
私の分析は、おそらく、ルカシェンコは票の60%以上で楽勝していた。だが、それは決して自由な公正な選挙ではなかった。マスコミは(同じことがイギリスのマスコミにも言えることをお忘れなく)非常に偏っており、あらゆる重要な反政府派は、なんらかの方法で立候補を阻止されたので、弱い野党候補者しかいなかったのだ。
欧米は、ベラルーシ世論をかなり露骨に、「カラー革命」に向けて工作しようとしている。だが彼らは困難な状況の上にいる。西ウクライナは、消費生活を実現したいと願って、西欧やとEUに近付くのに本気で熱狂的だった。ベラルーシでは、中央ミンスク以外では、そういう感情は極わずかしかない。最も重要なのは、ベラルーシというのは「白いロシア」を意味し、白いロシア人は、文化的に自身をロシア人だと非常に強く考えている。ベラルーシではカラー革命は起こらないだろう。だが、欧米は試みている。
読者の多くと異なり、私はこの事態を、とんでもないことだとは思っていない。他国の政治的方向を自分に有利な方向に変えるために影響を与えようとするのは外交の重要な目的で、常にそうだったのだ。私は20年間、イギリス政府のために、むしろその良き擁護者だった。BBCワールドサービスは常に、外務省に資金供給されており、その存在そのものが、そもそもの発端から、多数の言語でプロパガンダを送り出すことで、影響を与えようとする試みに基づいている。ブリティシュ・カウンシルは、シェークスピアへの純愛から外国でイギリス文化を促進するのに何百万も費やしているわけではない。政府資金は、マスコミや社会に影響を与えることを目指すNGOに与えられている。将来の指導者を見つけ出し、親イギリス感情を持たせるため、教育や学士課程に招聘するのだ。
私はそれのいずれも問題と思わない。それは外交がというものの一環だ。イギリスが遥かに大規模に行っている全く同じ活動をロシアがするのに対し、イギリスがかっとなるのも一興だ。だが、それは全て昔からのゲームの一環だ。もし私が今ベラルーシ大使だったら、反ルカシェンコ・デモ支援を見つかってもる、良心の呵責はないはずだ。それはすべて仕事の一部なのだ。
もちろんこの全てには、より暗く、陰気な側面があり、その場合、活動は公開ではなく隠蔽される。イギリスが、密かに外国マスコミのジャーナリストを買収するIntegrity Initiativeの事業に資金供給したり、政府言説を推進するため、何千という偽のソーシャル・メディア・アカウントを作ったり(後者は、特に国防省や政府通信本部GCHQが行う)しているのは、うさんくさい。大量の現金で、政治家や公務員や将官を買収する、MI6の、より伝統的な活動もそうだ。だが、またもや、私はそれについて余り騒ぎ立てる気持ちになれない。それはゲームの中の汚れ仕事だが、暗黙の限界がある、昔からのものだ。再び、私が強く反対なのは、ロシアが、まさにイギリスが遥かに大規模に行っていることをすることに対し、イギリスがとてつもなく殊勝ぶることだ。
だが、更に、暗殺や偽旗射撃や爆撃と冤罪を負わせるなどの遥かに暗いものもある。これでは、一線が越えられ、命が奪われ、猛烈な対立が引き起こされる。ここで、由緒ある国際的慣習が、これらの行為を受容可能にすると言う用意は私にはない。この一線がウクライナでは越えられた。上に述べたような理由から、ベラルーシには、このような火花に衝撃を与えるような火口が存在すると私は思わない。
ルカシェンが退陣するのは私としてはとてもうれしい。あらゆる品位ある民主主義において、トップの任期期限は要因たるべきだ。権力さえ握ってしまえば、外部からの衝撃を阻止し、何十年間も個人の人気を維持するのは困難ではない。人気は、民主的正当性と同一ではない。前から言っているように、憲法上の詭弁にもかかわらず、大衆の支援にもかかわらず、プーチンが任期二期を上回って留任するのは絶対に間違っていると私は非常にはっきり述べざるを得ない。
ルカシェンコにとって理想的なのは、一度も選挙に勝ったことがない大統領を担ぎ上げる欧米のベネズエラ戦術と逆に、新たな選挙に進むことだ。ベラルーシ国民にとって、国際的安定性にとって、最良の結果は、改革志向だが、おおむね親ロシア候補者の当選だろう。プーチンは、この危機を、20年前に署名された単一市場・自由貿易地域、ロシアとベラルーシ「連合」を再主張するのに利用している。重要なことに、ごくわずかのベラルーシ人を含め、ベラルーシの未来はEUよりロシアとの統合にあるのを疑う人はごくわずかだ。
プーチンに対する歴史的に最大の批判は、ロシアの経済基盤を多様化し、一次産品の輸出から、高付加価値経済へと変える上での彼の失敗だろう。ベラルーシでの彼の目的は、固く結びつき、大いに裕福なオリガルヒに支配される大規模商品輸出の鋳型にベラルーシをぴったり合わせることだろう。プーチンはベラルーシが必要とする経済改革には、ほとんど興味はあるまい。
私の期待は、ルカシェンコが続投し、経済をロシアに戻す新方向に向けることだ。プーチンの長期的政治目標は、常に、旧ソビエト社会主義共和国連邦の大多数のロシア語圏地域をロシアに再統合することだ。それは、ウクライナとジョージアでの彼の政策だった。ベラルーシは重要な目標だ。彼はエネルギー助成金増加(プーチンの経済武器庫は非常に限定されている)で、ベラルーシを、よりしっかり結び付けようと努めるだろう。ルカシェンコ更迭は、プーチンのやるべき仕事のリストで上位になるだろう。私はそれは、三年と考える。ミンスクでの現在のデモは、本格的な経済的、社会的影響を与えずに終わるだろう。
情報更新 8月17日
私は下のコメントに応えて次のことを書いたが、私の考えの重要な部分を効果的に説明していると思う。ベラルーシについてだけではない。
私と多くの読者の相違は、双方とも、「欧米」政府を、資本主義エリートによる労働者階級を搾取する略奪で、エリートに奉仕するマスコミによって支配されるエセ民主主義国家として認知しているが、あなたと他の人たちは、反欧米というだけで、そうした政府がずっと良いと考えているように思われる。 多くの反欧米政権、ルカシェンコやアサド、そして、そう、プーチンも、資本主義エリートによる労働者階級の搾取で、エリートに奉仕するマスコミに支配されるエセ民主主義だと私は考えている。少し違った形で組織されているだけだ。そして市民的自由への対応は、より酷い。 |
記事原文のurl:https://www.craigmurray.org.uk/archives/2020/08/belarus/
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