OPCWの元調査責任者が組織上層部による報告書の捏造を国連で証言
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2020.01.28 櫻井ジャーナル
西側の政府や有力メディアはシリア政府軍が昨年4月7日にドゥーマで化学兵器を使用したと主張、アメリカ、イギリス、フランスの3カ国は2018年4月14日にシリアを100機以上の巡航ミサイル(トマホーク)で攻撃した。その情報源はアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラムやジハード傭兵の医療部隊と言われているSCD(シリア市民防衛/通称白いヘルメット)だ。
化学兵器が使われたとする主張を確かめるため、OPCW(化学兵器禁止機関)の専門家が調査、アメリカなどの主張に反する結論を出している。例えば調査チームのリーダーだったイアン・ヘンダーソン名義の文書によると、化学物質が入っていた筒状の物体は航空機から投下されたのではなく、人の手で地面に置かれていたことを証拠は示している。シリア政府軍が投下したのではなく、ジハード傭兵が置いた可能性が高いということだ。
OPCWの調査チームはそのように報告しているが、組織の上層部は最終報告書で調査チームの結論と逆の主張をした。報告書の捏造だ。その事実をヘンダーソンは国連の安全保障理事会で1月20日に証言することになるのだが、本人が会議場に現れることはなかった。アメリカがビザの発給を拒否したからだ。
同じように判断した西側のジャーナリストもいる。例えばイギリスのインディペンデント紙が派遣していたロバート・フィスク特派員は、攻撃があったとされる地域で治療に当たった医師らを取材、その際に患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。
またアメリカのケーブル・テレビ局OANの記者も現地を調査し、同じ内容の報告をしている。ロシア系のRTは西側の有力メディアが化学兵器の被害者だとして報道した子どもとその父親を取材し、やはり化学兵器が使用されたという話を否定している。
ドゥーマにおける化学兵器の話も西側の政府や有力メディアが繰り返しているフェイク情報だということだが、その事実をできるだけ隠したいのだろう。そうした隠蔽工作を西側の有力メディアは「ファクト・チェック」と呼んでいる。
それまでの西側の政府や有力メディアはシリア政府が化学兵器を使ったと何度か主張しているが、調査が進むといずれも嘘が発覚している。それを反省したのか、2018年の時はOPCWの調査チームの現地入りを妨害、調査が始まる前にミサイル攻撃を実施している。
しかし、この攻撃でミサイルの約7割が無力化された。その1年前にアメリカ軍は地中海から59機のトマホークを発射しているが、その時に無力化された比率は約6割だった。
2018年には発射数を倍増、発射地点は地中海だけでなく紅海やペルシャ湾も加えたにもかかわらず無力化されたミサイルの率が高くなっている。その理由として、2018年に配備された短距離用防空システム、パーンツィリ-S1が効果的だったからだと言われている。
ミサイル攻撃がアメリカ側の思惑通りに進んだ場合、地上のジハード傭兵が総攻撃を始めてダマスカスを一気に制圧することになっていたようだ。この思惑通りに進めばOPCWの調査は実現せず、化学兵器話の嘘も問題にならなかっただろうが、ロシア製の防空システムが機能、調査は実施され、アメリカ側の嘘が露見することになり、事実を隠蔽する西側有力メディアの信頼度はさらに低下することになった。