コラム2019年10月23日 / 14:01 / 5時間前更新
ウィーワーク混乱に見るカリスマ創業者崇拝時代の終幕
Antony Currie
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[ニューヨーク 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 共有オフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーは、創業者のアダム・ニューマン氏が君臨する時代が幕を閉じた。経営危機という結果を伴ってだ。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は22日、同社取締役会が、後ろ盾となっているソフトバンクグループ(9984.T)から総額100億ドル近い支援策を受け入れる道を選んだが、ウィーの評価額はピーク時の470億ドルを83%下回ったと伝えた。これでウィーが利益を生み出せる土台を築けるかどうかはまだしばらく判明しそうにない。ただ株主らは、ニューマン氏が創業者として悪あがきするのを防ぐ態勢は確保できた。
ソフトバンクはニューマン氏から10億ドル相当のウィー株を買い入れ、同氏が抱えるJPモルガンからの借り入れの返済に充当できるように5億ドルを融資する。またいわゆる顧問料として1億8500万ドルを支払う。こうした取引を通じて、ソフトバンクはニューマン氏から経営権を買い取るのと引き換えに、事実上の「手切れ金」を渡したと言える。
ただ他の株主や社員は怒り心頭だろう。結局のところ、ウィーが一時日の出の勢いになったのも、足元で破綻寸前に陥っているのも、ひとえにニューマン氏の責任だった。支援者たちも当初は、ニューマン氏の「世界の意識を引き上げたい」などという訳の分からない発言も受け入れた。しかし、要するにウィーは不動産事業だという点をしっかり見据えなかったことで市場の熱が冷め、新規株式公開(IPO)を中止せざるを得なくなった。
利益相反の要素も多々ある。ニューマン氏が所有する不動産をウィーにリースしたり、商標料として590万ドルを受け取っていたことなどだ。もっとも後者は、アドバイザーが何とかIPO計画を救おうとする過程で、返済を余儀なくされた。一方、ウィーが昨年つぎ込んだ現金は22億ドルと総収入を上回った。
IPOの手続きを通じてウィーの内部の動きが厳しい目にさらされたおかげで、一般の投資家は泥沼にはまり込むのを避けられた。とはいえソフトバンクは、以前に出資した際と同じぐらい困った立場に置かれている。これは自らが壮大な構想を持つ投資家にとって教訓になるはずだ。
もう1つ、ある企業の誰かが外部の投資家の資金を何のチェックも受けずに自由に処分するのを許してしまう危険性も学べる。ソフトバンクも、ベンチマーク・キャピタルなどの比較的初期にウィーに出資した投資家も、そうした面では自分たち以外を責めることはできない。
ニューマン氏のようなカリスマ性を備えたハイテク企業の創業者は、まるで神のように扱われる。ところが彼らが常に大きな組織を切り盛りするのに適した人物とは限らない。例えばベンチマークは、ウーバー・テクノロジーズ(UBER.N)におけるトラビス・カラニック氏のケースでそれを認識しなければならなかったのだ。もはや創業者を盲目的に崇拝する時代ではない。
●背景となるニュース
*ソフトバンクグループは、共有オフィス「ウィーワーク」運営のウィーカンパニーの経営権取得に合意した。[nL3N2773ZV]
*WSJによると、ソフトバンクはウィーの創業者で最近最高経営責任者(CEO)を辞任したアダム・ニューマン氏から10億ドル相当の株式を購入するほか、ニューマン氏に対して5億ドルを融資し、顧問料として1億8500万ドルを支払う。同氏は取締役会メンバーからも退く。
*さらにソフトバンクは、ウィーの社員と株主から最大20億ドル相当の株式を買い取る。この取引はウィーの企業価値を約80億ドルと評価している。ソフトバンクも参加した今年1月のウィーの資金調達ラウンドにおける評価額は470億ドルだった。
*ソフトバンクは、ウィーに約束していた15億ドル規模の追加出資も加速させるとともに、50億ドルをウィーに貸し付ける。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/wework-softbank-breakingviews-idJPKBN1X205O
ソフトバンク救済でウィーワーク創業者「ビリオネアに復帰」へ
Sergei Klebnikov , FORBES STAFF
アダム・ニューマン (Michael Kovac/Getty Images for WeWork)
資金繰りに苦戦中のシェアオフィス「ウィーワーク」が、ソフトバンクグループの救済案を承認し、ウィーワークの経営権をソフトバンクが取得することが決まった。これにより、ウィーワーク創業者で元CEOのアダム・ニューマンは17億ドル(約1800億円)近い大金を手にして、経営から退くことになる。
ウィーワークの取締役会は10月22日、ソフトバンクの救済案を受け入れ、JPモルガンからの融資を断ったとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えた。
ソフトバンクは債務の形で50億ドルを、ウィーワーク運営元のウィーに支払う。ウィーの企業価値は今年1月にソフトバンクが出資した時点で470億ドルとされたが、今回は80億ドルの評価となった。ウィーの企業価値は数カ月で83%も減少したことになる。
ソフトバンクはニューマンの持ち株を10億ドルで買い取り、4年間のコンサルティング費用として1億8500万ドルを支払う。さらに、5億ドルをニューマンに融資し、彼のJPモルガンへの借金の返済を支援するとWSJは報じている。
ウィーの取締役会長にはソフトバンク幹部のマルセロ・クラウレが就任し、ニューマンの業務を引き継ぐ。さらに現在、ウィーの共同CEOを務めているアーティー・ミンソンやセバスチャン・ガニングハムに代わる人材の候補者選びも開始し、事業再編を進めていくという。
ニューマンは今後も、ウィーの取締役会には参加するが投票権を持たないボードオブザーバーの位置にとどまる。ソフトバンクに株式を売却後の、ニューマンの持ち株比率は10%未満に低下する見通した。
ニューマンは今年7月、IPOを目前に控える中で、株式の売却などにより7億ドル以上を手に入れていたとWSJが報じていた。スタートアップの経営者は通常、上場まで株式を保有し続けるが、ニューマンの行為は異例のものとされた。
かつて、米国で最も企業価値の高いスタートアップに数えられたウィーワークは先月、IPO計画を延期して以降、強い非難を浴びている。企業の存続を図る同社にとって、新たな資金調達は喫緊の課題となっていた。
ウィーワーク創業者のニューマンの保有資産は、今年3月時点では41億ドル(約4400億円)とされたが、フォーブスは10月10日、彼の資産を最大で6億ドルに引き下げた。しかし、今回のソフトバンクの救済措置により、ニューマンの資産は再び10億ドルを超えることになりそうだ。
編集=上田裕資
https://forbesjapan.com/articles/detail/30328
ソフトバンクGが一時3.5%安、ウィーワークに1兆円支援
・ウィーの経営権取得へ
・クラウレ氏を会長に
Source: Bloomberg
株式 ソフトバンク 株式公開
Hajime Yamaguchi | Financial Writer, Tokyo | Wednesday 23 October 2019 15:48
23日の東京株式市場でソフトバンクグループ<9984>が大幅続落。米シェアオフィス大手のウィーワークを運営するウィーカンパニーが現地時間22日、筆頭株主のソフトバンクGから総額で最大95億ドル(約1兆円)の金融支援を受け入れると発表したことが材料になった。ソフトバンクGはウィーカンパニーの経営権を取得する。
ソフトバンクGの終値は前営業日比108円(2.51%)安の4190円。
ウィーカンパニーが支援を受け入れると伝わった午前11時前に株価は3.51%安の4147円の安値を付けた。
ソフトバンクGは当初、ウィーワークのIPO(新規株式公開)で利益を得るとみられていたが、実際にはこれとは逆に経営再建へ追加の支援を余儀なくされる格好となった。IPOは9月に撤回された。
発表によると、ソフトバンクGはウィーカンパニーに対し、新たに50億ドルを貸し付ける。また、30億ドルを上限として既存株主や従業員からのウィーカンパニー株の公開買い付け(TOB)を実施し、さらに2020年4月に期限を迎える新株予約権(ワラント)の形で15億ドル出資するこれまでの計画を進める。
ソフトバンクGのマルセロ・クラウレ副社長をウィーカンパニーの会長として派遣し、再建を主導する考え。現会長で創業者のアダム・ニューマン氏は取締役を退任する方針だ。
ウィー評価額、年初から83%減
ウィーカンパニーに対し、ソフトバンクグループは「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を通じて累計約106億ドルを出資しており、株式のおよそ3分の1を保有している。
新たな支援によりウィーカンパニーへの出資比率は約80%に高まる。一方、議決権は過半数を占めず、連結子会社にはしない方針という。
19年1月の直近の資金調達ラウンドにおけるウィーカンパニーの推定企業価値は470億ドルだった。米メディアによると、現在は83%減の約80億ドル。
https://www.ig.com/jp/news-and-trade-ideas/_g_1_softbank-to-provide-up-to--9-5-billion-lifework-to-wework-191023
ソフトバンクG、WeWorkに金融支援1兆円−株式8割保有
日向貴彦
2019年10月23日 10:57 JST 更新日時 2019年10月23日 17:00 JST
50億ドルの貸し付け、30億ドル相当の株式を公開買い付けで取得
ソフトバンクGの助言金融機関にはレイン・グループ
ソフトバンクグループは23日、シェアオフィス事業を手掛ける米ウィーワークの支援策を発表した。総額は95億ドル(約1兆円)規模となる。
発表によれば、ソフトバンクGは50億ドル(約5400億円)を貸し付けるほか、既存株主から最大30億ドルの株式を公開買い付け(TOB)し、株式の保有比率を80%程度まで高める。すでに予定していた15億ドル相当も出資する。ソフトバンクGは傘下のビジョン・ファンドなどを通じて1兆円程度を出資し、約3割を持つ筆頭株主となっていた。
ソフトバンクGは議決権の過半は保有せず、ウィーワークは連結子会社とはしないが、ソフトバンクG副社長のマルセロ・クラウレ氏がウィーワークのエグゼクティブチェアマンとなり再建にあたる。共同創業者で同社を率いてきたアダム・ニューマン氏は議決権を行使しないオブザーバーとして取締役会に参加する。
Masayoshi Son Delivers Keynote At Annual SoftBank World Event
ソフトバンクGの孫社長Photographer: Akio Kon/Bloomberg
企業統治上の問題や実際の企業価値は低いとの見方が浮上したウィーワークは上場中止に追い込まれ、ソフトバンクGとJPモルガン・チェースがそれぞれ提示した資金支援案を検討していた。支援を受けなければ、来月にも資金繰りに窮するところだった。ソフトバンクGの救済策はウィーワークの企業価値を約80億ドルと見積もっており、今年1月に評価された470億ドルから大きく目減りした。
ソフトバンクGの孫正義会長兼社長は発表文で、ソフトバンクGはウィーワークが人々の働き方の変革をけん引すると信じており、「大型の資本投入と業務支援を通じ、同社に再投資することに決めた」と説明した。
ソフトバンクGのフィナンシャルアドバイザー(FA)は米投資銀行のレイン・グループ、ビジョン・ファンドにはラザードなどが務めた。ウィーワークのFAはペレラ・ワインバーグ・パートナーズ。
いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は今回の支援について、ソフトバンクG本体が「1つの会社にこれほどの金額を出すとは信じられない。これはおかしいとリスクを感じている投資家もいるだろう」と分析。「ユニコーンと言われる企業に本当に価値があるのか疑心暗鬼にならざるを得ない事例だ」と話した。
株価は自社株買い発表前の水準まで下落
ウィーワーク救済は、ソフトバンクGの孫社長が注力する10兆円規模のビジョン・ファンドへの悪影響も必至だ。現在、1号ファンドを上回る規模の2号ファンドへの出資を募っている。
事情に詳しい関係者によると、孫社長は21日、2017年に210億ドル強のバリュエーション(株価評価)でウィーワークに出資したビジョン・ファンド1号の投資家に電話会議で陳謝した。ソフトバンクGとビジョン・ファンドの広報担当者はコメントを控えるとしている。
ソフトバンクGの株価は23日、最大で前日比3.5%下落し、2.5%安の4190円で取引を終えた。6000億円規模の自社株買いを発表した2月以前の安値水準にある。同社の投資先では米配車サービスのウーバー・テクノロジーズや職場向けメッセージアプリのスラック・テクノロジーズの株価も下落傾向にある。
ウィーワークは2010年設立。現在100都市の500以上の拠点でデスクや専用オフィス、本社機能を提供する。日本には18年2月に進出し、東京・丸の内北口や銀座にも拠点を持つ。日本拠点のCEOには10月、マネジングディレクターだった佐々木一之氏が就任した。
(株価を更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-23/PZT11RDWLU6C01