米好戦派の強硬策がターゲット国の連携を強めている(1/2)
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2019.10.11 櫻井ジャーナル
2014年にウクライナと香港で実行した工作はロシアと中国にアメリカの本性を見せることになり、両国を戦略的な同盟関係に入らせてしまった。そして今、アメリカから経済戦争を仕掛けられているイランが中国と手を組もうとしている。 ネオコンをはじめとするアメリカの好戦派はイスラエルと同様、「脅せば屈する」という考え方で政策を決めている。国力に大きな差のある国に対しては有効な考え方だったが、相手がロシアや中国になってからは機能していない。 「脅せば屈する」という考えに基づいてアメリカの好戦派が世界制覇プランを始動させたのはソ連が消滅した直後のことである。このプランは軍事力を前面に出したもので、それに基づく侵略戦争が始まることになった。ソ連消滅を冷戦の終結と考え、平和な時代になると考えた人は冷戦の本質を見誤っていたのである。 アメリカの支配層が身にまとっていた「民主主義」という隠れ蓑を脱ぎ捨て、その侵略体質をむき出しにしたのは1992年2月のことである。その直前、1991年12月にソ連が消滅したことでアメリカが「唯一の超大国」になったと認識、他国を配慮せず単独で行動できる時代になったと考えたのである。 世界制覇プランを国防総省のDPG草案という形でまとめたのが国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを中心とするネオコンのグループ。そこでこのプランはウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれる。 ウォルフォウィッツは1991年の段階でイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官の話だ。(3月、10月)このプランに従い、トランプはイランに経済戦争を仕掛けている。 当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニーだが、ウォルフォウィッツを含め、3人ともジェラルド・フォード政権で台頭してきた好戦派だ。 この好戦派はユーゴスラビア、次いでアフガニスタンやイラクを先制攻撃、リビア、シリア、南オセチア、ウクライナなどでは傭兵を使って侵略を試みている。そのうちリビアは政権どころか国を破壊、今では暴力が支配する破綻国家だ。南オセチアではロシア軍の反撃で手先のジョージア軍が完敗、シリアやウクライナではアメリカの思惑通りに進まなかった。 ユーゴスラビアに戦争を仕掛けた当時のアメリカ大統領はビル・クリントン。第1期目は戦争圧力に抵抗していたが、スキャンダル攻勢を受けたこともあり、第2期目に国務長官を戦争に消極的なクリストファー・ウォーレンから好戦的なマデリーン・オルブライトへ交代、ユーゴスラビアに対する攻撃を始めたのである。 ジョージ・W・ブッシュ政権やバラク・オバマ政権も基本的に戦略は同じ。ヒラリー・クリントンもその世界制覇プランに基づく政策を打ち出すはずだったのだが、それに対抗する動きが現れる。例えば民主党のバーニー・サンダースや共和党のドナルド・トランプだ。民主党内のサンダース潰しを明らかにしたのがウィキリークスである。この内部告発支援グループの顔であるジュリアン・アッサンジは現在、イギリスの刑務所に入れられている。 2016年のアメリカ大統領選挙で当選したのはロシアとの関係修復を訴えたトランプ。そのトランプが大統領に就任する直前、同年12月にバラク・オバマ政権は外交官35名を含むロシア人96名を追放する。トランプ政権が始まるまでにアメリカとロシアとの関係をできるだけ悪化させておきたかったのだろう。 大統領選挙で民主党の候補者に選ばれたのはヒラリー・クリントン。そのクリントンを支援する目的でCIA副長官を辞任したマイク・モレルは2016年8月、CBSの番組でアンカーを務めていたチャーリー・ローズのインタビューの中で、ロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語る。ローズからロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われると、その通りだと答えたのだ。わからないようにと付け加えることも忘れなかった。CIAの副長官だった人物がロシアやイランの要人を殺すとテレビで語ったのだ。 その発言後、ロシア政府の幹部が変死している。例えば2016年11月8日にニューヨークのロシア領事館で副領事の死体が発見され、12月19日にはトルコのアンカラでロシア大使が射殺され、12月20日にはロシア外務省ラテン・アメリカ局の幹部外交官が射殺され、12月29日にはKGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見され、17年1月9日にはギリシャのアパートでロシア領事が死亡、1月26日にはインドでロシア大使が心臓発作で死亡、そして2月20日にはロシアの国連大使だったビタリー・チュルキンが心臓発作で急死した。 こうした外交官はモレル発言の後の死者だが、2015年11月5日にはアメリカ政府が目の敵にしてきたRTを創設した人物がワシントンDCのホテルで死亡している。この人物の死にも疑惑を持つ人がいる。 ロシア人やイラン人の殺害を公言した元CIA副長官は問題にされなかったが、その元副長官から重大な証言を引き出したローズは2017年11月にセクハラでCBSのアンカーを辞めざるをえなくなった。2019年に彼は告訴されている。(つづく) |