日本は共産党にとって天国だった 意外と知られていない世界の共産党事情
デイリー新潮 2019年2月19日掲載
日本は稀有な国
「安倍一強」を許しているのは野党があまりにだらしないから、というのは衆目の一致するところ。特に旧・民主党への世間の風当たりは強い。くっついたり離れたりを繰り返していて、何だかよくわからないからだ。
一方で、共産党に対しては一定の評価をする向きもいる。とにもかくにも一貫性はある、ぶれていない、というあたりが代表的な声だろうか。根強い支持層を持ち、現在でも衆議院に12名、参議院に14名もの議員を擁している。彼らの情報収集能力や国会での質問力には侮れないものがある。
もっとも、このように議会で共産党が活動している国は、実は先進国では稀有であることは意外と知られていない。欧米ではほとんどの国で、共産党は国会に議席を持っておらず、それどころか活動を禁じられている国すらあるというのだ。
近現代史研究家の福冨健一氏の新著『日本共産党の正体』
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から知られざる共産党の実情を見てみよう(以下、出典を記していない引用は同書より)。
「1954年8月22日、『ニューヨーク・タイムズ』は、共産党を非合法化している国を調査しています。同紙によると非合法化の程度は様々ですが、非合法化している国は、アメリカ、スペイン、韓国など約40カ国にも及んでいます。違法ではないが制限している国は、西ドイツなど多数あります。
象徴的な事例として、西ドイツの例を見てみましょう。憲法であるドイツ基本法は、
第21条第1項 政党は、国民の政治的意思形成に協力する。その設立は自由である。……
第2項 政党で、その目的または党員の行動が自由で民主的な基本秩序を侵害もしくは除去し、または、ドイツ連邦共和国の存立を危くすることを目指すものは違憲である。……
と規定しています。
基本法は、第1項で政党の設立の自由を保障しています。そのため、ナチスやソ連共産党のように、自由と民主主義を破壊する全体主義の政党、独裁政治を招く政党が誕生する危険があります。そこで第2項で『政党の設立の自由』の例外として、自由や民主主義を壊す政党、ドイツを危険にさらす政党の設立は認めません、憲法違反ですよ、としたのです」
そしてこの「憲法違反」の対象となったのが、ドイツ共産党だった。ドイツの憲法裁判所は「マルクス・レーニン主義を掲げていること」「政党の方針が自由・民主主義を破壊しようという意図があること」から「犯罪行為がないとしても憲法違反の政党である」という判断を下したのである。
こうした厳しい見解は、街中に共産党候補者のポスターがベタベタと貼ってあるのが日常の光景となっている日本人には違和感があるかもしれない。しかしながら、海外では共産主義への見方は極めて厳しい。国際政治学者のズビグネフ・ブレジンスキーは「20世紀における人類の共産主義との遭遇ほど、無意味で大きな犠牲を引き起こしたものはなかった」と述べている(『大いなる失敗』)。
「ブレジンスキーによると、ソ連で殺戮された人の数は、革命期処刑者100万人、革命後処刑者200万人、貴族資本家等100万人、富農階級500万人、強制移住死亡者1千万人、粛清された共産主義者100万人、中国や東欧で失われた人命を加算すれば5千万人を下らないとのことです。同様にユン・チアンとジョン・ハリデイは『マオ』で、『毛沢東は、7千万有余という数の国民を平時において死に追いやった』、ステファヌ・クルトワとニコラ・ヴェルトは『共産主義黒書』で『ソ連2千万人、中国6500万人』が粛清・殺戮されたと述べています」
こうしたことから共産主義への警戒感を持つ国が多いのである。
「現在、共産主義の国は、中国、キューバ、北朝鮮、ベトナム、ラオスの5カ国のみです。主要先進国で共産党が国会で議席を持っている国は日本とフランスのみで、しかも『モスクワの長女』と呼ばれたフランス共産党は、イタリア共産党が共産党の党名を捨て左翼民主党に変えたように、共産党の党名変更さえ議論し衰亡の危機にあります」
日本共産党の党員は今でも30万人以上。「野党共闘」が実現すれば、勢力をさらに拡大する可能性もある。同党は、ことあるごとに現政権に対して「戦前」「ファシズム」といった言葉を持ち出して批判をするのだが、実際には日本は世界でも数少ない共産党に寛容な国だと言えそうなのだ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/02190700/?all=1
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