東海第二 30キロ圏で避難計画難航
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2018年11月08日 こちら原発取材班 東京新聞
11月末で運転開始から40年を迎える東海第二原発(茨城県東海村)は7日、20年間の運転延長が認められ、再稼働にまた一歩近づいた。全国の原発立地30キロ圏で最多の96万人が暮らし、自治体に課せられた事故時の避難計画作りは難航している。東海第二から北約9キロにある日立市塙山(はなやま)地区の住民団体は、市が想定する福島とは別に、独自に避難先を探し始めた。(山下葉月) 「避難先 自分たちで探す」日立の住民、選択肢増やす 「冬場に雪が積もる福島県への避難は現実的ではない。住民にとって雪道の運転に慣れていない中で、移動するのは不安だ」。塙山地区の住民団体副会長で、市議の伊藤智毅さん(64)は住民の声を代弁した。 市の計画案によると、住民は市内23地区ごとに、自家用車で常磐道などを通って福島県の17市町村に向かう。 約7000人が暮らす塙山地区の避難先は、140キロ離れた福島県本宮市。冬場の積雪は20センチ以上に及び、「市中心部を走る国道もアイスバーンを起こしやすく、スノータイヤは必要になる」(同市の担当者)。 伊藤さんは「実際、本宮に行ったが、細い道もあり、事故が起きたら、渋滞の恐れもある。スノータイヤを持っている住民も少ないと思われる」と懸念する。 さらに東海第二が地震などで事故を起こした場合、事故収束作業が続く東京電力福島第一と、核燃料が残る福島第二原発も同時に被災すれば、本宮市の避難所が使えない可能性がある。 そこで伊藤さんたちは「住民レベルでやれることからやりたい。避難先の確保は、結果的に行政の役に立つ」と思い立った。 昨年末には、塙山地区の住民団体と災害時の支援協定を結んでいる仙台市宮城野区福住町の町内会に受け入れを打診。福住町の町内会長で獣医師の菅原康雄さん(71)は「コミュニティー同士だからこそ、同じ目線で必要な支援ができる。来たら当然受け入れます」と前向きだ。 仙台も福島と同じ雪国だが、まずは選択肢を増やすことを優先する。伊藤さんは「雪が降らない地区でも避難所を探していきたい。まだ足りないので、少しでも増やせれば」と説明。その上で「そもそも円滑に避難できるような避難計画ができないのに再稼働させるのはおかしい」と訴えた。 避難計画策定は茨城県で3市のみ 東海第二原発の場合、原子力災害対策特別措置法などで避難計画の策定が義務づけられている30キロ圏の自治体は、茨城県内の14市町村。住民が安全でスムーズに避難するための計画が作れるのかは、未知数の部分が大きい。 茨城県は今年3月末までに計画を完成させたいと説明していたが、これまでに策定できたのは笠間市など3市のみ。この3市でさえ、地震などが重なる複合災害を想定しておらず、高齢者や障害者ら自力で逃げられない「要支援者」のバスの確保などが見通せない。 日立市では、1月に開かれた住民説明会で「複合災害を想定してほしい」「避難所までの知らない道を運転することが怖い」と不安の声が相次ぎ、策定が延期となった。市は今後、住民へのアンケートで要支援者のためのバスの台数などを把握する。 ほかの市町村も「実効性の確保に苦労している」(大洗町)などとしており、策定時期どころか、実際に作れるのかも怪しい。 原発を所管する世耕弘成経済産業相は国会で「しっかりとした避難計画がない中で、再稼働が実態として進むことはない」と答弁。避難計画の観点からも、再稼働には疑問符が付く。 |