世界潮流を読む 岡崎研究所論評集
これまでになく鮮明に対中強硬姿勢を示す台湾・蔡総統
2018/11/05
台湾の蔡英文総統は、10月10日の双十節(中華民国建国記念日)演説で、これまでになく鮮明に中国に対する強硬な姿勢を示した。以下に、同演説のごくあらましを紹介する。
(alphabetMN/AzFree/lantapix/iStock)
過去2年間、私(蔡英文)は、一貫して次のことを主張してきた。2300万の台湾人の自由で民主的な生き方を守る。中華民国の持続的な発展を守る。両岸の平和と地域の安定を維持する。これらは全台湾人にとり最大の共通の了解だ。
全世界が中国の影響力拡大に直面する中、台湾政府は、世界に台湾の強さと復元力を見せたい。
台湾人は、外部勢力が一方的に台湾海峡の現状を変えることを、決して受け入れない。国際社会は、普遍的価値を破ることを決して承認も支持もしないだろう。
私は再度、北京の権威主義者たちに、責任ある大国として、紛争の源となるのではなく、地域と世界のためにプラスとなる役割を果たすよう求める。
我々は、対立を激化させるような行動に走らない。両岸関係を危うくするような挑発もしないが、国民の意思から離れて台湾の主権を犠牲にすることもない。
我々は、安定と順応性を追求し、前進する。我々は、この道を着実に歩むべきだ。
効果的な対応戦略の基礎は国の強さにある。それゆえ、目下、我々の最も重要な任務は、国家安全保障、経済、社会的セーフティネットの強化である。我々は、台湾をより強くし、世界にとりかけがえのない場所とする。これが台湾が生き残る道だ。
我々の安全保障への現在のチャレンジは、伝統的な軍事的防衛を越えるものである。外交的圧力、社会への侵入、経済安全保障、全てが潜在的脅威にさらされている。我々の優先課題は、全面的な戦略を立て、国家安全保障を強化することだ。
第一の要素は、価値に基づく外交的リンクを強化し、台湾を戦略的にかけがえのないものとすることだ。台湾は、戦略的に重要な位置にある。我々の選択肢は明確だ。すなわち、自由、民主主義、市場経済を断固として守ることだ。過去2年間、中国の圧力に直面し、台湾はその価値と信念を支持してきた。それで、ますます多くの同じ考えの国々の支持を得ている。
第二の要素は、我々の国防能力の強化だ。
第三の要素は、外国勢力が我々の社会に侵入し転覆することを防ぎ、民主的組織と社会経済的機能を正常に保つことだ。外国勢力が混沌を作り出そうとする企ては、決して座視せず、必要とあれば先制的に対処する。
第四の要素は、グローバル経済および貿易戦略を見直すことだ。米中貿易摩擦、グローバル経済・貿易の秩序の再編に対応すべく、台湾は、地域の発展とサプライチェーンにおける役割を再調整しなければならない。
台湾自身が、かがり火である。かつて、我々の民主的移行は我々自身の前途を照らし、今も、香港、中国大陸、そして世界中で民主主義を熱望する人々へのかがり火であり続けている。
我々の国は、2300万人の台湾人のものだ。我々の国は、次の世代に、今の姿のまま手渡されなければならない。
参考:蔡英文,‘President Tsai delivers 2018 National Day Address’(Office of the Republic of China(Taiwan), October 10, 2018)
https://english.president.gov.tw/NEWS/5548
最近の世論調査によれば、全体として蔡英文の人気は低迷している。そして、11月下旬には統一地方選挙が予定されており、その選挙は蔡・民進党政権の今後を占うものとして重視されている。そのような状況下での蔡のスピーチについては、これまで特に、中国との関係において基本的に慎重な立場をとってきた蔡が、その立場を変えるかどうか注目されるところであった。
この点、蔡英文が最近の米中関係の動きや11月の地方選挙を控えて、これまでの、「不明確で曖昧な路線への決別」を宣言し、その立場を鮮明なものにした、と見ることができよう。特に、10月4日のペンス副大統領の対中国政策演説の内容が蔡のスピーチに影響を与えたものと思われる。上記要約では割愛したが、ペンス演説については名指しで触れている。
ペンス演説は、台湾については2か所において言及しているが、いずれも米国が台湾の民主主義を支持し、台湾の地位を強く擁護することを強調している。
中国の共産党独裁と台湾の民主主義との違いについては、蔡英文もこれまで言及することはあったが、今回のスピーチのように、「台湾自身が香港や中国において民主主義を追求している同志たちの前途を照らすかがり火となるだろう」といった表現ははじめてのことである。この表現は中国から見ると、到底容認しがたいものだろう。
過去2年半を振り返ってみれば、台湾独立でも統一でもない「現状維持」を標榜した蔡英文であったが、中国側のきわめて厳しい対台湾政策により、中台間の公的なチャネルは断絶したままである。他方、台湾内部では蔡の対中国政策は「軟弱」であるという独立派の意見も強い。
蔡としては、「現状維持」の大枠は維持しつつも、台湾における「民主主義」を強調することにより、米、日、欧との連帯を強める方向に舵を切ったということだろう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14374
トップニュース2018年11月5日 / 12:22 / 17分前更新
財新の10月中国サービス部門PMIは50.8、13カ月ぶり低水準
1 分で読む
[北京 5日 ロイター] - 財新/マークイットが発表した10月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は50.8と9月の53.1から低下し、2017年9月以来、1年1カ月ぶりの低水準となった。
新規受注が伸び悩み、年末にかけて経済が一段と失速する可能性を示唆した。10月のPMIは景況の拡大・悪化の分かれ目となる50にも近付いた。
中国経済の半分以上を占めるサービス部門の減速は、米中貿易摩擦による輸出への打撃をサービス部門で相殺することを期待してきた当局者にとって特に懸念材料となる。
サービス部門の弱さが続けば、米中貿易摩擦や国内製造業の減速に加え、過剰生産能力削減や環境汚染対策、民間債務削減といった政府の取り組みにも影響が生じる。
今年に入って国内不動産市場が減速していることも不動産サービスへの需要を圧迫している。
10月は新規受注のサブ指数が50.1と前月の52.4から低下し、50を割り込んだ2008年11月以来の低水準を記録。新規受注がほぼ拡大しなかったことが明らかになった。
こうした中で今後の活動に対する信頼感も3カ月ぶりの水準に悪化した。
セクター別では金融サービスがとりわけ軟調となった。
一部の調査対象企業は、米中貿易摩擦が今後の活動に影響する可能性があるとの懸念を示し、貿易摩擦による企業の信頼感や実際の活動への影響が広範囲で現れつつある状況が浮き彫りになった。
9月に約2年ぶりに50を割り込んだ雇用のサブ指数は今回50を上回ったものの、雇用者数の伸びは小幅にとどまり、歴史的な傾向を下回った。
財新が前週発表した10月の製造業PMIは50.1と、9月の50.0から小幅な上昇にとどまった。[nL3N1XC1F4]
製造業とサービス部門を合わせた10月の総合PMIは50.5と前月の52.1から低下し、2016年6月以来の低水準となった。
https://jp.reuters.com/article/china-service-pmi-idJPKCN1NA075?il=0