ビットコインETF、「規制当局の壁」越えられるか
http://diamond.jp/articles/-/155753
2018.1.12 ロイター
1月9日、仮想通貨ビットコインの値動きに連動する上場投資信託(ETF)設定の承認を規制当局から得ようと競い合う米企業にとって、状況は厳しくなりつつある。サラエボで昨年12月撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)
[ニューヨーク 9日 ロイター] - 仮想通貨ビットコインの値動きに連動する上場投資信託(ETF)設定の承認を規制当局から得ようと競い合う米企業にとって、状況は厳しくなりつつある。
ビットコイン価格は昨年1500%急騰しており、過熱する同資産の関連商品に対する、投資家の旺盛な需要をかき立てている。多くの企業が、ビットコインを広くリテール市場へと開放することになるETFをわれ先に立ち上げようと躍起になっている。
だが規制当局は厳しい問題提起を行っており、投資ファンド5社は今週に入り、ビットコイン先物に連動するETFの設定計画を延期し、理由として、米証券取引委員会(SEC)の懸念表明を挙げた。
「ビットコイン取引に関わる企業に対する監視を、SECが一段と強めるとみている」と、コンプライアンス管理会社インテリジャイズのディレクター、マーク・バトラー氏は語る。「投資家は用心すべきだ。うますぎる話は、おそらく本当に眉唾ものだ」
申請書類によれば、SECは少なくとも14件の異なるビットコインETFまたは関連商品についての申請を保留している。
いくつかのファンドはすでに申請を却下された。SECは3月、ビットコイン取引所「ジェミニ」を運営するキャメロンとタイラーのウィンクルボス兄弟によるETF上場申請を却下した。
同兄弟の投資ファンドは直接ビットコインに投資することを目指している。一方、他のファンドは、米取引所に最近上場したビットコイン先物に期待を寄せていた。ETFの基盤としては、先物の方が、ほとんど規制のないスポット取引よりも、確かな安定を約束するものだった。
だが8日、ビットコインETFの上場を申請していたラファティー・アセット・マネジメントは、SECがビットコイン先物取引の「流動性とバリュエーション」に懸念を示したことを明らかにした。SEC当局者はラファティーに対し、そうした問題に対処できるようになるまで申請を取り下げるよう伝えたという。
また9日には、プロシェア・キャピタル・マネジメントなど3社は、ビットコインETFの上場計画を見送るようSEC当局者から言われたと、提出書類のなかで述べている。
ビットコインは9日、ルクセンブルクに本拠を置くビットスタンプで1万4779ドルで取引された。
■止まらぬ熱狂
とはいえ、ビットコインETF上場を巡る競争は激しさを増す可能性があると専門家は指摘する。投資ファンドがSECの懸念に大急ぎで取り組み、ETFを設計し直しているからだ。
「個人投資家の需要に後押しされている」。そう語るのは、2014年に金の現物に裏付けされたETFを立ち上げたメルク・インベストメンツの創業者で最高投資責任者(CIO)のアクセル・メルク氏だ。「人々がビットコインに熱狂するなら、ビットコインETFを売ろうとするだろう」
過去の申請で受けた批判を検討して、自社のビットコインETF設立に向け、承認を得ようと動いているファンドをいくつか知っている、とメルク氏は言う。
また一部は、より伝統的な資産を通してビットコイン商品を提供する間接的なアプローチを試みている。例えば、投資ファンド5社は、ビットコインやその基盤となるブロックチェーン(分散型台帳)技術 に関連する株式に投資する投資信託を申請している。
しかしビットコイン先物で取引しようとするファンドにとっては、委託保証金の水準や、先物価格と現物価格が大幅にかい離するリスクなど、依然として厄介な問題が残っているとSECと議論した関係者2人は語る。
仮想通貨取引への監視は現在、強化されているように見えるものの、規制面での懸念はビットコイン先物が上場する妨げにはならなかった。
米商品先物取引委員会(CFTC)は先月、CMEグループとCBOEグローバルマーケッツに対し、ビットコイン先物の上場を許可した。しかし最近になって、仮想通貨先物の上場に関するプロセスを見直そうとする動きも見せている。
ビットコインの目まぐるしいボラティリティーはさておき、慎重に構えすぎれば、急成長する仮想通貨がもたらす機会を、米国資本市場が逃すことになりかねないと考える向きもある。
「SECが承認に踏み切らないのであれば、米国の資本市場は欧州やアジアに後れを取ることになるという懸念が常にある」と、バーンズ・アンド・ソーンバーグ法律事務所(シカゴ)のパートナー、トレース・シュメルツ氏は語った。
(Gertrude Chavez-Dreyfuss and Trevor Hunnicutt 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)