安保理が追加制裁 金正恩“激怒”で核・ミサイル実験強行も
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2017年12月26日 日刊ゲンダイ
細胞委員長大会では怒りの大演説だった(C)AP
国連安保理が採択した追加制裁決議に北朝鮮が猛反発している。米国の主導で北朝鮮向けの石油精製品の輸出は9割削減。北朝鮮が核実験やICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射を繰り返せば、石油供給はさらに制限される。兵糧攻めで北朝鮮をバンザイに追い込めるのか。むしろ、さらなる暴走を招く危険性が高まっている。
朝鮮労働党の末端組織幹部を集めた「細胞委員長大会」で23日に演説した金正恩委員長は、追加制裁措置を念頭に「我々がこれまで行ったことは始まりに過ぎず、大胆かつスケールの大きな作戦をさらに展開していく」と挑発。北朝鮮外務省は「わが国の主権を著しく侵害しており、朝鮮半島や地域の平和と安定を破壊する戦争行為」とボルテージを上げている。
追加制裁で北朝鮮包囲網は確実に狭まるが、即効性は怪しい。金一族の隠し資産である「革命資金」のほか、兵器売却や労働者派遣、サイバー攻撃などで十分な運転資金を蓄えているとみられている。
米コロンビア大学世界エネルギー政策センターのリチャード・ネフュー氏は日経新聞の取材に、「今後数週間のうちに追加的にICBMや核実験に踏み切る可能性がかなり高いとみている」と話している。
「先日訪朝した米国務省出身のフェルトマン国連事務次長(政治局長)は、来年2月開催の平昌五輪への北朝鮮選手派遣と五輪開催中の核・ミサイル開発実験の休止を提案したといいます。これを突っぱねたら、対話再開の糸口はまた消えかねない。北朝鮮が対抗措置として追加実験に踏み切るとすれば、1月中の可能性が高い。8日の金正恩委員長の誕生日、あるいはカナダで16日に開催される北朝鮮問題をめぐる外相会合あたりがメドになる」(外交事情通)
金正恩の大仰な鼓舞は国内の体制引き締めも兼ねている。
11月に板門店のJSA(共同警備区域)を突破して亡命した兵士(25)に続き、先週は中西部の軍事境界線を越えて入隊2年目の若手兵士が韓国へ逃げ込んだ。
デイリーNKジャパン編集長の高英起氏はこう言う。
「北朝鮮軍は思想統制や人事を掌握する『政治軍人』と戦闘指揮を担う『野戦軍人』に二分されます。攻撃と防御の双方を担う核・ミサイル技術が進展するほど、現場を担う『野戦軍人』は存在意義を失って冷遇され、日々の食糧に窮するほど厳しい状況に追い込まれています。若手兵士2人の脱北について軍内部では箝口令が敷かれているようですが、一般市民には瞬く間に広まる。いずれにせよ、亡命の誘発は避けられないでしょう」
強まる国際社会の圧力、国内の求心力低下に金正恩が黙っていられるのか。