トランプの国家安全保障演説
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-8c1d.html
2017年12月20日 マスコミに載らない海外記事
2017年12月19日
Paul Craig Roberts
トランプの国家安全保障演説を、どう理解すべきだろう? そもそも、これは軍安保複合体の演説で、ロシアとの関係を正常化するというトランプの意図とは矛盾する。
軍安保複合体は、トランプの大統領という地位を利用して、ワシントンの単独覇権主義よりも、自らの国益を優先しようとするワシントンのライバル諸国、ロシアと中国を“修正主義大国”と規定した 。彼らの国益の主張がワシントンの覇権を制限するがゆえに、ロシアと中国は“修正主義大国”なのだ。
言い換えれば、ワシントンと、他国の国益がワシントンの権益に反する場合、他国の国益の正当性を受け入れないのだ。ロシアと中国が“我が国益や価値観と対極にある世界を作ろう”としているという演説をしておいて、トランプがロシアと中国と協力するなど、一体どうして期待できようか。
“我々の価値観”とは、もちろん、ワシントンによる支配を意味する。
トランプは、軍、警察、国土安全保障省と統合参謀本部議長を称賛して、話を始めた。言い換えれば、“アメリカ・ファースト”とは、アメリカ国民と他の国々に対するワシントンによる支配を意味するのだ。
次にトランプは“アメリカを再び偉大にするために投票した”アメリカ国民で自分を覆った。
次にトランプ演説は、イランとのまずい協定についてのイスラエル・ロビーの言い分を述べ、実際は前政権がISISを作り出し、リビアとシリアに送り込んだのに、前政権はISISを容認したと彼は主張した。
更に、彼は環境保護を攻撃し、ワシントンの戦争がヨーロッパに押しつけた難民を無視して、不法入国外国人問題を訴えた。
ネオコンがアメリカ世界覇権を慶賀する時代に、トランプは、前任者たちを、アメリカへの信頼を失わせたと非難した。これは驚くべきことだ。国家の外交政策丸ごとが、アメリカが“例外的な、必要欠くべからざる国”だという前提に基づいているのに、一体なぜこれが、信頼喪失だろう? 途方もない傲慢さとうぬぼれなのだ。問題は、支配者連中の信頼喪失ではなく、尊大なうぬぼれだ。
更に、トランプは、彼を通して、アメリカ国民が再び国を支配していると主張した。
今やワシントンは国民のために働いていると彼は言った。減税法案を見れば、彼は1パーセントで構成される国民を意味しているに違いない。
彼は次に軍にもっと金を注ぎ込むことと、アメリカ・ファーストとを関連づけた。
彼は更にイランがそれを恐れて暮らしているテロのかどでイランを非難したが、彼は、サウジアラビアのテロ支援や、その膨大な予算と権限の口実として、イランやロシアに対する兵器として、テロを奨励しているアメリカ軍安保複合体の支援には触れなかった。
トランプは次に、ロシア/シリアによるISIS打倒を自分の功績だと主張した。ワシントンがISISを支援し、資金提供していることは既に証明されている。トランプの主張は、アメリカがナチス・ドイツを打ち破ったというオバマ政権の主張より遥かにばかげている。ドイツを打倒したロシアは記念式典に招待されなかった。
トランプは次に、我々が守っている国々が、その費用を支払うよう要求した。その国々とは一体どこで、我々は彼らを一体誰から守っているのだろう? 彼が言っているのは、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、イスラエルと日本しかない。ワシントンは、そうした国々を、ロシア、中国、北朝鮮とイラン、あるいは、リビアやシリアや、ワシントンが、まんまとテロリストをけしかけた他の国々を打倒するため、ワシントンが作り出し、武器を与え、補給しているテロリストから守っているのだ。どうやら、こうしたCIAが作り出したテロ組織の一部が創造主の制約から逃れ、自分たちの作戦を遂行しているもののようだ。だから、ワシントンは自らの敵を生み出す政府なのだ。
トランプは次に、彼が“北朝鮮政権”に課した経済制裁を自慢した。彼は 、1950年以来、ワシントンが、北朝鮮との和平協定を結ぼうとしないことに触れなかったが、彼はそれを知らないのだろうと私は思う。ワシントンが64年間、戦争状態を継続しているのだ。リビア、イラク、アフガニスタン、シリア、ソマリアなどの運命を見れば、北朝鮮が核兵器を欲しがるのは何の不思議でもない。
トランプ、演壇に立って世界を脅かして、ワシントンは、北朝鮮が世界を脅かすのを防ぐために必要なあらゆる措置を行うと述べた。
トランプは次に、失業は空前の低さで、株式市場は、空前の高さだという支配体制のプロパガンダを語った。空前の低さの失業で、中流アメリカ国民をトランプはどう救うのだろう? 雇用の海外移転反対というトランプの主張はどうなったのだろう?
これは、良い気分にさせてくれるお話にすぎない。ウソが彼が立派に見えるがゆえに、トランプはウソを繰り返しているのだ。トランプは、過去4週間に職探しをしたわずかな人々だけを数え、就業意欲を喪失した失業者者を数に入れない無意味な失業率を指摘するべきだ。株式市場高騰は、経済成長の指標ではなく、アメリカ、EU、イギリスや日本の中央銀行による膨大な紙幣創出の指標であることを彼は指摘すべきだ。莫大な量の紙幣が、証券類にどっと流れ込み、価格を押し上げ、1パーセントを更に富ませているのだ。
トランプは、戦略の一本の脚は“力によって、平和を維持する”ことだと述べた。一体どんな平和を彼は語っているのだろう? 過去二十年間、ワシントンは、8カ国の丸ごと、あるいは一部を破壊し、他国の民主的政権を打倒した。トランプは、平和を、ワシントンの戦争と同一視しているのだろうか? 戦争や侵略や爆撃やよその国々の国境に攻撃的な軍事行動を仕掛けている国は他にない。トランプは、アメリカは敵に脅かされており、アメリカを守るため、軍を拡大するという。明らかに決して存在などしていない“国防を抑止する連中”を自分は打倒しているのだと彼は述べた。
アメリカの本当の支配者連中、つまり軍安保複合体、イスラエル、環境汚染企業、ウオール街や“大き過ぎて潰せない”銀行などの強力な既得権益集団に、トランプは屈したというのが私の結論だ。
アメリカ中部の住民たちがトランプに抱いた期待にもかかわらず、アメリカは、強力な権力を持ったごく少数の連中が支配する国なのだ。アメリカ国民は、誰を選出するかに関係なく、何の発言権もなく、代表する議員もいない。
ロナルド・レーガンとジョージ・H・W・ブッシュの政権が、多少の説明責任を負っていた最後の政府だった。クリントン政権で、アメリカ合州国は専制政治時代に入ったのだ。
記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2017/12/19/trumps-national-security-speech/
----------