住宅ローンで500万円の差がつく「貯金の秘密」 低金利よりも重要なことがあった
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53537
2017.11.24 山下 和之 現代ビジネス
最近は超低金利が続いているし、借りられるだけ目一杯借りても問題ないだろう――そう思い込んでいる人が少なくない。
しかし、それは誤り。超低金利メリットをフルに活用するためには、できるだけ自己資金を多くして、借入額を減らすほうが得策なのだ。
■銀行に食われてしまう
住宅ローンの金利は、融資条件や融資内容などが一律決まっている定型タイプのローン。だから、誰が借りても金利などは同じと思っているかもしれない。しかし、それは大きな誤解。
たしかに、大枠は決まっているが、個人の条件によって適用金利が変わってくることが少なくないのだ。
なかでも条件が決まる上で、大きな比重を占めるのが自己資金の有無やその多寡だ。
何年もかけてセッセと貯蓄を増やして多くの自己資金を用意している人と、そうではなく何の準備もなく、思いつきでマイホームを考える人では、金融機関の評価が変わるのも当たり前。
キチンと家計管理して貯蓄を増やしてきた人は、住宅ローン借入後も確実に返済してくれる優良顧客になる可能性が高い。だからこそ、金利を低くして積極的に優良顧客を囲い込んでいこうとするのは、銀行の論理として当然のことだろう。
それに対して、思いつきで衝動買いするような人だと、計画性が乏しく、銀行ローンの審査面での評価は低くなる。金融機関のリスクが大きいお客だから、金利を高くせざるを得ないわけだ。
では、どの程度の差があるのか。
残念ながら、民間金融機関ではそうした数字を公表していないが、ホームページなどをみると、図表1のように住宅ローン金利が表示されている。変動金利型でみれば店頭表示金利が2.475%に対して、優遇金利は0.625%〜0.775%になっている。
これから類推すれば、自己資金が2割以上あって、年収などの条件も揃っている人には、店頭表示金利から1.85%差し引いた0.625%の最優遇金利が適用され、自己資金が少ない人などはそれより0.15%高い0.775%が適用される可能性が高い。
実際に住宅ローンを申し込んだ人の話によると、条件があまりよくないからとそれより高い金利を提示されることもあるようだ。
たとえば、大手信用金庫のホームページをみると、信用金庫との取引実績に応じて、金利を最大0.4%優遇する制度が実施されている。全預金の残高が1700万円以上あれば10点、毎月定期積金を行っていれば5点などを加算、20点以上あれば0.4%の優遇で、10点なら0.2%といった具合に優遇幅が違ってくる。
自己資金割合ということではないにしろ、計画的に貯蓄して自己資金を蓄える姿勢が大きく評価されていると見て間違いない。
■10年で26万円の差に
上の例にあるような0.15%の程度の差ならさほどのことはないと思うかもしれないが、そんなことはない。図表2をご覧いただきたい。
これは、借入額3000万円で、変動金利型を利用した場合と固定期間選択型の固定期間10年を利用した場合の、当初5年間または10年間の負担の差を表したものだ。
変動金利型は、最優遇金利の0.625%なら毎月返済額は8万円を切るが、0.775%になると8万円を超える。月々2000円以上、年間で2万円以上の差。変動金利型だとこれが5年間続くので、5年間で約12万円の違いが発生する。
変動金利型は借入後に適用金利が上がり、返済額が増加するリスクが大きいので、当初10年間の金利が固定している固定期間選択型の10年ものを利用すると、毎月返済額の差は2199円に増え、10年間で26万円以上の差になる。
最長35年間の金利が固定している全期間固定金利型の住宅ローンだと、この差がもっと大きくなる。
■フラット35は0.44%の差が
民間住宅ローンでも全期間固定金利型があるが、なかでも最も金利が低く、利用しやすいのが、民間と住宅金融支援機構提携のフラット35だ。
このフラット35の金利は図表3にあるように返済期間と自己資金割合によって金利が異なる。
まず返済期間15年〜20年をみると、自己資金が1割以上あれば、1.30%〜1.92%で、1割未満だと1.74%〜2.36%になる。この金利の幅は、金融機関による違いで、フラット35を取り扱っている金融機関のなかでは、一番低い金利を採用しているところが最も多くなっている。
つまり、自己資金が1割以上ある人が、最も低い金利を提示している金融機関に申し込めば1.30%で利用できるということだ。
これに対して、返済期間21年〜35年は、自己資金1割以上が1.37%〜1.99%で、1割未満だと1.81%〜2.43%になる。
最も多くの金融機関が採用している最低金利でみると、自己資金1割以上と1割以下では金利になんと0.44%もの差があるわけだ。
■借入額3000万円で274万円の差
では、実際の返済額ではどれくらいの差になるのだろうか。図表4をご覧いただきたい。
借入額3000万円、35年返済だと、自己資金1割以上なら1.37%の金利が適用されて、毎月返済額は8万9956円。それが、自己資金1割未満では金利が1.81%に上がって、毎月返済額は9万6478円に増える。毎月6522円の負担増で、フラット35はこれが35年間確定しているので、その差は実に約274万円にも達する。
返済期間20年だと多少差は小さくなるが、それでも20年間で約146万円の差になる。
これだけの差があれば、何としても自己資金を増やして、超低金利メリットをフルに活用したいという気になるはずだ。
■実際には500万円近い負担の軽減
しかも、実際には自己資金が増えれば、その分借入額が減って、返済額軽減効果はもっと大きくなる。図表4の2にあるように、4000万円の住まいを全額フラット35で取得すると、金利は1.81%で、毎月返済額は13万円近くになる。
それが、500万円の自己資金を用意して、借入額が3500万円に減少すると、毎月返済額は10万円台の半ばですむ。月額にして2万円以上の軽減で、35年間の合計では購入額4000万円の全額ローンだと約5403万円の総返済額に対して、借入額3500万円だと約4408万円ですむ。
35年間の総返済額が995万円も少なくなる。当初に500万円の自己資金を出すかどうかの違いがあるので、それを差し引いても500万円近くもお得になると言うことだ。
超低金利がいつまでも続くとは限らない。だからこそ早めに自己資金を増やして、超低金利メリットをフルに活用できるうちにマイホームを取得したいところだ。