創業たった7カ月でトヨタと提携 変わりゆくベンチャーと大手企業の関係
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171108-00000039-sasahi-bus_all
AERA 2017年11月13日号
図版=AERA 2017年11月13日号より、写真=プリファード・ネットワークス提供
ベンチャー企業と大手企業の関係が変化し始めているという。上下関係ではない関わり方が、互いの成長につながるケースもある。
プリファード・ネットワークスは機械が自律的に動くように、「深層学習」させる技術を開発している。深層学習は大量のデータを解析して新たな知見を得る手法。最高執行責任者(COO)の長谷川順一さんが明かす。
「どこで利用できるか想像もつかず、将来が見通せない状態で開発を始めました」
トヨタ自動車と手を組んだのは創業から7カ月後。自動運転に取り組む。さまざまな映像データを使って車、人、標識など路上に現れるものを覚えさせた。いまでは一部が隠れていても認識できる。トヨタは2016年、家電・技術見本市CESで同社の技術を使った「ぶつからない車」のデモを披露した。
ロボット開発のファナックとは15年6月に協業を始めた。雑然と箱詰めされた円筒形の部品を吸着させて持ち上げるロボットに、どの部分に吸着すればうまくいくのかを学習させる。最初は失敗続きだが、8時間かけて5千回試せば9割以上成功するようになる。今年10月には工作機械の消耗部品の適切な交換時期を予測する技術も共同開発した。
全国23の金融機関に加えてクレジットカード会社と手を組んだのはfreee(フリー)。クラウド、つまりネットにつないで必要な機能を呼び出して使う会計、人事労務、確定申告などのソフトを提供する。主に中小企業が使い、経理業務の時間を従来の「50分の1」に短縮。ソフトをほぼ毎日改善するのも売りだ。会計ソフトではシェア3割以上で首位に立つ。
石川県の北國銀行とは今年4月、ソフトに記録された利用者の情報に基づいて事業概況、資金繰り、経理状況を人工知能が分析する機能を共同開発した。利用者に大きな変化が起きると同行に知らせる。
将来は、これらのソフトを利用者の共通基盤にする構想を持つ。記録された全取引の情報を利用者間で共有すれば、「原材料の共同購買や共同事業の相手探しに役立つ可能性もあります」(東後澄人COO)。
つながることで新しい世界が見えてくる。(編集委員・江畠俊彦)