〔最重要拠点ラッカ陥落〜「イスラム国」後のシリアは…〕11月4日、TBS報道特集
ラッカ陥落の直後JNNのカメラがレバノン東部のベッカー高原に入った。国境を接するシリアからたくさんの難民が流れてきている。ある家族は土地を提供した地主から立ち退きを要求されテントを取り壊していた。一家10人のこの夜の寝る場所は決まっていない。
先月17日ラッカ陥落。祝勝ムードでラッカ解放のニュースを伝える欧米メディア。
しかし、これでシリアに平和は訪れるのか。ベッカー高原にいるラッカ難民たちは、ラッカ解放を全く別の視点から捉えている。
アハメディさん「ラッカにイスラム国がいようといまいと、私たちに安全はないんです」
アラブ系の住民である彼らにとって新たな支配者は脅威でしかないというのだ。ラッカを制圧したのは米軍の支援を受ける「シリア民主軍」だ。表向きはアラブ人も参加していることになっているが、実態はクルド人主体の武装組織だ(「我々は勝利したぞ!」と歓声をを上げるクルド人兵士たちの映像)。
3年前、イスラム国が祝勝パレードをしたその同じ広場で(戦車が回転する映像)、今度はクルド人部隊がラッカ制圧を誇示してみせた(同じ場所で戦車を回転)。旗が黒から黄色に変わっただけのようなその光景はラッカの元住民たちにとって、新たな混乱の始まりとしか見えていないようだ。
アハメディさん「戦いが止むことはありえないでしょう」
アハメディさんの父「シリア民主軍は、絶対に信用できません。彼らは自分たちの利益しか考えない。イスラム国の時よりも悪くなるでしょう」
激しい攻防の末、イスラム国はラッカから放逐された。しかし、新たな混乱の芽は、ラッカ解放を祝う式典で早くも露(あら)わになった。キッカケは式典舞台の後に掲げられた大きなポスター、クルド人指導者オジャラン氏のものだ(その映像)。トルコや米国がテロ組織だとしているトルコのクルド人組織PKKの創設者でもある。
トルコではテロリストの首謀者と見なされ、今獄中にいる。ラッカに掲げられたオジャラン氏のポスターに激しく反発したのはトルコ・エルドアン大統領。怒りの矛先はクルド人部隊を支援する米国に向けられた。
エルドアン「ラッカでテロリストのポスターが掲げられたそうだが、米国はこれをどう説明するのだろうか。米国は”あなたたちの味方だ”と言っていたが信じられない。我々の味方ではない」
トルコと同盟関係にある米国はトルコに配慮したコメントを出さざるを得なくなった。
「PKKは外国テロ組織に認定されておりオジャラン氏は敬意を払うに値しない人物だ」
ラッカが解放された後も、そこにさまざまな勢力による内戦が続くシリア、そこにJNNの取材班が入った。