フランス食事情(1) 普段の食事
http://www.j-milk.jp/kenko/column/berohe000000g5ov.html
フランスの統計調査からも見える「普段の食事」をご紹介します。
前菜・メイン・チーズ・デザートにワイン…
フランス料理というと、フルコースの豪華な食事を思い浮かべ、フランス人は毎日そんな食事をして皆グルメだ!というイメージがあるかもしれません。
でも、このようなフランス料理を毎日食べている人は正直ほとんどいません。
いったいフランス人は普段、どのような食事をしているのでしょうか。
朝食
定番は甘い菓子パン
朝食の代表的なパンはクロワッサンやパン・オ・ショコラなどのヴィエノワズリー(Viennoiserie=バターをたっぷり使った菓子パン)や、タルティン(Tartine)。
タルティンはバゲット(フランスパン)を食べやすい長さに切り、バターとジャムまたはハチミツなどを塗っただけのものです。
飲み物はカフェ・オ・レやコーヒー、紅茶。
また、朝食にシリアルを食べる人も多くいます。
甘い系の朝食が定番で、卵やベーコンを焼いたりする人はあまりいません。
■バターとジャムを塗ったタルティン。はちみつやチョコレートペーストを塗ったり好きな味で
昼食
夕食より重くなる傾向も
カフェやレストラン、学食で食べる人、ファストフードを利用する人、近くの店でサンドウィッチを買う、もしくは家から持参する人など、いろいろです。
就労している人でも、一旦自宅へ戻って昼食をとる人もいます。
ちなみに子どもも学校給食を全員が食べるわけではなく、家で食べてから再登校する児童も多くいます。
昼はサンドウィッチだけ、パスタだけ、サラダだけ、と単品で済ませる人がいる一方で、肉料理や魚料理を昼食でとる人が多く*1、どちらかというと夕食より重くなる傾向のようです。
といってもフルコースというわけではなく、メイン(主菜)に付け合せ(副菜)+デザートという感じです。
■町のサンドウィッチ屋。サンドウィッチのパンはバゲット、バターやマヨネーズはぬられていない。具はハム&チーズ、ツナ&野菜、チキン&卵などいろいろ。
■友人宅での昼ごはん。家庭料理は牛肉のグリルとじゃがいものグラタン。シンプルだが皆でいっしょに食べるのがいい
夕食
自宅で家族そろって
夕食はほとんどの人が自宅で家族といっしょにとります。
働いている女性が多いので、平日は簡単なものを準備する場合がほとんど。
パスタ、冷凍のピザ、スープ、キッシュ、ハム、テイクアウトの惣菜などの中から、簡単に出せるものが1品と、あればちょっとしたサラダを付ける程度です。
足りなければ、バゲットにチーズをのせてつまんだり。
デザートにはヨーグルトが多く、フロマージュブラン、プティスイス*2も定番です。
「誰かと一緒に」が大切
大体、普段の食事はこんな感じで意外なほど地味でシンプル。
たとえ食事の中身が簡素なものだったとしても、一人ではなく、必ず誰かと食べることを最も大切にするフランス人。
職場の机で一人で食べたり、時間の合間に食べたり、何かをしながら食べることを嫌い、皆で食卓を囲んで過ごす時間を楽しみます。
日本を始め、多くの国で食事の時間が短縮され、家族ととる時間が減っている中、フランス人の多くが現在も共有し変わらずにいる伝統的な食の習慣です。
*1 Individuelle Nationale des Consomations Alimentaires 2 -INCA 2 2006-2007−(第二回国民栄養調査)/Afssa(フランス食品衛生安全庁)、食事別食品別消費の分布より 。
詳細はこちら→Individuelle Nationale des Consomations Alimentaires 2 -INCA 2 2006-2007
*2 プティスイス…フレッシュチーズの1種で味はフロマージュブランよりも濃厚。
http://www.j-milk.jp/kenko/column/berohe000000g5ov.html
フランス食事情(2) 数字で見る食生活
http://www.j-milk.jp/kenko/column/berohe000000h2er.html
統計調査からみえる、食生活のお国がらとは?
フランス版国民栄養調査(*1)をもとに、フランス人が毎日どんな食品を消費し、どのくらいの栄養を摂取しているか見てみましょう。
(フランス:18-79才、日本:20才以上の結果を比較。日本は平成23年国民健康・栄養調査より)
栄養素の摂取
エネルギー
●2,162Kcal
日本人の平均より300Kcal以上多い。
パティスリー(ケーキ・ペストリー類)から129Kcal摂取していて、最も消費量の多い食品であるパン(317Kcal)に次ぐ摂取エネルギーに。
フランスは美味しいパティスリーが充実してるから仕方がない…!?
3大栄養素からのエネルギー摂取割合
●炭水化物44%・たんぱく質17%・脂質39%
日本人の平均(炭水化物 56%、たんぱく質 15%、脂質 26%)と比べ脂質が多く、炭水化物が少ない。
フランスでの推奨量は、炭水化物 55%、たんぱく質 15%、脂質 30%。
カルシウム
●914mg (男性984mg 女性850mg)
18才以上の推奨量は900mg。
牛乳・乳製品からはおよそ 390mg、飲料水から 94mg、野菜から 48mgを摂取。
女性の摂取量はすべての年代で推奨量を下回っている。
特に、男女とも10代のカルシウム不足が深刻で、10-18才の推奨量は1,200mgであるが、 約800mgしか摂れていない。
日本の場合、20才以上のカルシウム摂取量は494mg。
推奨量と比較してみると、男女とも10代以降、すべての年代で不足している。
ミルク解体新書 第1回 カルシウム学
食品の摂取量
牛乳・乳製品の摂取量
●201g
日本人の2倍以上を摂取。牛乳 86g(*2)、チルド乳製品 82g(*3)、チーズ 33g。
牛乳は8割の人が朝食で摂っている。チルド乳製品は女性の方が多く摂取している。
チーズは男性の方が多く摂取しており、男女とも9割以上の人が食べていてる。
ほかに9割以上の人が食べている食品は、パン、野菜、肉、水。
■チーズ売り場のほんの一部。フランスの食卓には欠かせない。
魚の摂取量
●27g
日本人の1/3しか食べていない。
子どもの摂取量は18gだが、これは金曜日の給食に魚が出るおかげ。
魚の摂取量に伴い、ビタミンDの摂取量も少ない。
魚に次いで卵、チーズがビタミンDの摂取源。ビタミンDを強化した牛乳も売られている。
■魚の消費に日本のSUSHIも貢献?
肉の摂取量
●120g
畜肉だけなら50gで日本人とさほど変わらないが、ハムやソーセージなどの肉加工食品を合わせると1.5倍の摂取量に。
肉の種類は牛、豚、鶏のほか、仔牛、うさぎやジビエ(野鳥獣)も含まれる。
■スーパーマーケットで。生ハム、ソーセージ、パテなど、たくさんの肉加工品が並ぶ。
パンの摂取量
●115g
日本人の平均は33g。一方、米の消費量はフランス 25g、日本 319g。
パンはフランス人のほとんどが、朝、昼、夕と食べる食品。日本の主食「米」に匹敵する。
パンは炭水化物のほか、食物繊維、マグネシウム、マンガン、銅などの微量栄養素の摂取源にもなっている。
野菜の摂取量
●139g
日本人に比べ、100g以上少ない。野菜をほとんど食べない人も少なくない。
スーパーでは袋からだしてすぐ食べられるカットサラダが充実しているほか、冷凍や缶詰の野菜も多く利用されている。
■袋からだしてすぐ食べられるサラダ。レタス、ルッコラ、エンダイブなど種類も豊富。
食事を決めるのに大切だと考えることは?
この調査で、79%のフランス人が食事内容を決定する要因に”健康維持”を挙げてはいますが、食事のバランスは決してよいとはいえません。
肥満をはじめ、栄養摂取の過不足が要因の疾患が増加していることをうけ、社会問題健康省(Ministère des Affaires de Social et de la santé)による国民健康栄養プログラム(Programme National Nutrition Santé:PNNS)が2001年より促進されています。
*1 Individuelle Nationale des Consomations Alimentaires 2 -INCA 2 2006-2007−(第2回国民栄養調査)/Afssa(フランス食品衛生安全庁)、
*2 牛乳、その他の乳、乳飲料、練乳、粉乳が含まれる
*3 発酵クリーム、ヨーグルト、フロマージュブラン、プティスイスが含まれる
http://www.j-milk.jp/kenko/column/berohe000000h2er.html
日本人がフランスに住むと食生活はこう変わる!7つの例 2011年4月9日
https://www.madameriri.com/2011/04/09/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%8C%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AB%E4%BD%8F%E3%82%80%E3%81%A8%E9%A3%9F%E7%94%9F%E6%B4%BB%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%86%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8B%EF%BC%81/
環境が変われば食生活も変わる。フランスに住んで1年半。食生活・食習慣は日本にいた時とすっかり変わってしまった。それではフランスで生活するようになると食生活はどう変わってしまうのか?人によってその変化も異なるが、私の場合はこのように変化した!
1. ごはんの友が“バゲット”に!
日本で、食事に欠かせないものと言えば白ご飯。フランスではフランスパン(バゲット)です。最初はパンを片手に食事するフランス人を不思議に思っていましたが、いつの間にか私も、毎日のバケットが欠かせなくなっていました。そう!フランス人の毎日の食事を支える、ごはんの友はバゲットなのです。
2. 気が付けば肉ばかり
肉と魚はどうしても日本のモノと比べてしまいます…。フランスのなかでも魚介がおいしいといわれるニースに住んでいますが、それでもやっぱり魚の国、日本には敵いません。フランスの魚は品質もそうですが、魚屋さんの下処理もあまりよろしくないような…。その代り、フランスのお肉はおいしい!ビーフステーキも日本より安く、肉汁たっぷりで種類も豊富。結果的に1週間の献立は、気づけば「肉ばかり」になってしまいます。
3. 一日中、乳製品ばかり
さすがはチーズの国、フランス。チーズはもちろん、乳製品の種類もとても豊富です。朝はココア、毎食後にクリームチーズとパン、夕飯はフレッシュクリームを使ったキッシュ、食後はヨーグルト。一日中、カルシウム摂取!フランスにいれば、骨粗しょう症になる心配はないかも。
4. 食後のデザートは欠かせません!
これはフランス人の食習慣なのでしょうか?食後はどうしてもデザートが欠かせないようです。食事が終わると、たいていチーズ→デザートが待っています。家庭によっては、チーズ→果物→デザートの順で食べるところも。いつのまにか私も、デザートがないと食事が終わったような気にならなくなってしまいました。メインでお腹いっぱいにしないように、腹八分目に食べるのがポイント。
5. お茶はコーヒー、紅茶と同じジャンル
日本では毎食お茶を飲んでいましたが、そんな習慣のないフランスでは水ばかり。すると、何となくお茶に対する価値観も変わってくるものです。お茶は水分補給としてガブガブ飲むものではなく、休憩時やおやつの時間に飲むものというように捉えるようになりました。不思議なもので、飲む回数が少なくなるとカフェインの心配までするようになりました。
6. 朝は軽くいきましょう
朝食に白ご飯とお味噌汁と塩鮭。こんな元祖日本の朝ごはんメニューは考えるだけでも重たい…。よく食べるグルメなフランス人ですが、朝は軽く!が基本のようです。日本食の朝ごはんはあくまで「1回の食事」としてのごはんという位置づけですが、フランスでは「おまけ」ごはんのような気がします。フランスでの朝食は、シリアルやブリオッシュ、ビスケットやクロワッサン、パン・オ・ショコラなどが主流です。
7. Tremper(トンペー)
クッキーやパンを、カフェオレやコーヒー、紅茶に浸して食べることをフランス語で「Tremper(トンペー)」と言います。トンペーはフランス人の常識なのでしょうか?誰もが飲み物に浸して食べるのです。最初は何となく気持ちが悪いと思い、私がトンペーせずに食べていました。すると周りのフランス人が「何でこの日本人はつけないの?」と不思議な顔をされることもありました。そんな私も今ではすっかりフランス人の仲間入りです。何となくトンペー食べせずにはいられなくなりました。
https://www.madameriri.com/2011/04/09/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%8C%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AB%E4%BD%8F%E3%82%80%E3%81%A8%E9%A3%9F%E7%94%9F%E6%B4%BB%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%86%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8B%EF%BC%81/
フランス人が本音でガブリ!「ここが変だよ日本のパン」
本場外国人がハマる本当にうまい店 2017/08/01
https://lifemagazine.yahoo.co.jp/articles/7444
フランスの食生活でに欠かせないパン。日本人よりも日常的に食べるからこそ、彼らのパンへのこだわりは並々ならぬモノがある。今回は、日本で暮らすフランス人3名に集まってもらい、本場のパン事情や日本のパンの味について、本音で語ってもらいました。
日本人が食べているのはパンではなかった!? フランス人が日本のパンを語り尽くす!
フランス人は“バゲット”と呼ばれる細長〜いパンを小脇に抱えて街を闊歩する。そんな印象を抱いている人も多いのでは? でも今日はガブリと本音で嚙みつきます!
日本人が普段食べるパンとフランスのパンは、味はもちろん、種類や嗜好(しこう)にどうやら大きな隔たりがあるらしい。私たちもなんとなくは感じていた日仏のパンの違いを、フランス人の方々に直撃……する前に、日本で味わえる本場のパンを買い出しに行きましょう!
\パンが主食の素敵な3人ぐみ!/
写真左から、銭湯ジャーナリストで、日本銭湯文化協会公認の銭湯大使として日本で活動するステファニーさん、日本人男性と結婚した来日7年目のアヌークさん、来日10年目の写真家ジョルディさん
フランス人に学ぶ「いいパン屋さんの条件」とは?
東京・三宿の「ブーランジェリー ボネダンヌ」は、在日フランス人のステファニーさん行きつけのパン屋さんだ。パリで5年半修行を積んだ同店オーナーシェフの荻原浩さんが作るパンに彼女はとりこになったという。
ボネダンヌ
住所世田谷区三宿1-28-1
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131705/13158722/
「ブーランジェリー ボネダンヌ」の店内で早速、気になったパンを選ぶ3人。おいしそうなパンを前に会話が弾んで止まりません!
以来、ステファニーさんは、日本で暮らすフランス人の友人に荻原さんのお店を紹介しているそう。彼女の友人ジョルディさんもその一人。今回、初めて「ブーランジェリー ボネダンヌ」を訪れたアヌークさんを加えて、フランス流のパンの選び方を見せてもらった。
【フランス人の“いいパン屋さん”の条件】
1.営業開始は早朝からである
2.濃い茶色のパンが多く陳列されている
3.仏語を“正しく”使っている
同店は朝8時オープン。陳列するパンの色味は、全体的に茶色ければ茶色いほどフランス人をワクワクさせる
ジョルディさん
「ここは本当にいいお店だね。フランスで売ってるパンと変わらないモノが買えるんだ」
ステファニーさん
「フランスでは多くの家庭が、朝、その日に食べるパンを買いに行きます。焼き立てのパンを食べたいものなの。だから早朝6時からオープンするパン屋もあるんですよ」
アヌークさん
「毎朝、買いに行くよね」
ステファニーさん
「日本では早朝にパンを買いに出掛ける習慣はないのかもしれないけど、フランス人のパン生活に合わせるかのように、日本でも朝早くからお店を開けるっていうのは、焼き立てのパンを届けたいという職人の信念を感じるし、いいパン屋のひとつの基準になると思います。ヒロシも深夜から仕込みを始めるから全然寝てないよ〜(笑)」
黒板には、同店バゲットに具材を挟むサンドイッチと、スライスしたパンの上に色々な具材をのせたタルティーヌのメニューが。抜かりなく、チェック!
アヌークさん
「私は店内に並べてあるパンの種類を軽く眺めれば、直感的にいいパン屋さんかそうでないかが分かります。そこのパン職人がフランスでの修行経験のあるなしも分かってしまうの。感覚的なモノだから伝えにくいですけど……」
ステファニーさん
「だったら、パンの色味や焦げ具合をチェックするといいんじゃないかな。フランス人の好むパンは茶色が濃いんです」
アヌークさん
「そうね。日本のパンは私たちから見ると全体的に白っぽく見えます。ブリオッシュの焦げも物足りない気がします。もっと焦げてていい(笑)」
フランス語で「伝統」を意味する同店のバゲット「トラディション」(290円)。フランス産の小麦を100%使用し、深い香りも心地よい
――フランスの定番であるバゲットについてはどうですか?
ステファニーさん
「バゲットは塩加減が大事だと思う。お店によってはバゲットの塩味が足りないと感じることも多いです。日本人にはちょっと堅いと思うくらい外見はカリカリ、だけど中身は柔らかい食感のバゲットが私の理想です」
ジョルディさん
「家族の人数にもよりますが、フランスでは毎朝、約2〜3本のバゲットを買って、朝、昼、晩かけて、小分けにして食べているんです」
アヌークさん
「私の叔父さんは、朝食だけでバゲット1本を平気食べちゃう(笑)。フランスのおじさんたち、めっちゃ食べるの。私は子供の頃、バゲットにチョコレートを挟んで食べてました」
ステファニーさん
「懐かしいね。それ、私もやってた(笑)。日本でもそうだけど、よくバゲット1本買って帰るんだけだと、なぜか家に着いたらなくなってるの!」
ジョルディさん
「あるある(笑)。歩きながらバゲットを食べるのもフランス人なら普通のことだよね」
アヌークさん
「私も途中で食べちゃう派(笑)。だってアツアツの時に食べたいじゃない」
店名「ボネダンヌ」は「ロバの耳の帽子」という意。ドアには“pain au levain naturel”という文字も。「意味は天然酵母パン。期待感が膨らむフレーズよ!」(アヌークさん)
オーナーシェフの荻原さん(右)とは、ステファニーさんが考案したレモンカスタードを共同開発したこともある親しい間柄だという
ステファニーさん
「あと、看板にフランス語の店名が掲げてあるけど……ん? ちょっとフランス語の文法的にオカシイぞってなる日本のパン屋は結構多い。日本人に覚えてもらうためにあえてそういう表現にしてるのかもしれないですね」
ジョルディさん
「これもあるある(笑)。意味不明なフランス語を使うパン屋は、僕は素通りしちゃうね。まぁ、どうしても近くに他のパン屋が見つからない時なら、妥協して立ち寄るかもしれないけど」
アヌークさん
「『ブーランジェリー ボネダンヌ』は初めて来たけど、ドアの“rue Alphonse daudet(アルフォンス・ドデ通り)”の文字を見たとき、好印象を持ったわ。パリのこの地区で修行したんだなって想像ができたもの」
――看板などのフランス語を正しく使うパン屋には自然とフランス人が集まるんですね。となると、私たちはフランス人が多く集まる店を、パン屋を選ぶ時の参考にしたいです!
バゲットの入った紙袋を片手に街を歩くフレンチ・スタイル! 本場フランスではバゲットを裸で持って食べ歩くのも日常的な光景だとか。やっぱり、みなさん絵になります
フランス人によるピクニック座談会で日仏のパンを大いに語る!
左から、フランスのボルドー出身のジョルディさん、モンペリエ出身のアヌークさん、プロヴァンス出身のステファニーさん。皆さんピクニックは大好きだそうで「なぜここにワインがないの(笑)!?」と残念がる
日本人が親しんでいるパンから彼らの母国フランスのパン文化の奥深さまで、その真実と誤解を本音の座談会で解き明かします。
日本人のコンビニ感覚!フランスには100m間隔でパン屋が並ぶ
――みなさんの食生活にやはりパンは欠かせませんか?
ステファニーさん
「そうですね。フランスの家庭では朝、昼、晩、必ずパンがテーブルに並びます。日本人にとっての米(ごはん)と同じ感覚と言えます。主食ですね。だから日本に居ても、ちゃんとしたパンを食べたいと思ってパン屋を探しているの」
ジョルディさん
「肉料理と一緒に食べたり、野菜と一緒に食べたり、毎日食べるよ」
ステファニーさん
「ただ今は、ライフスタイルや食生活の変化で毎日三食必ずパンを食べるかといえばそうではない人もいます。特に若いフランス人はパンを頻繁に食べないから、フランス人といっても人それぞれということになると思う」
アヌークさん
「私の叔父さんは、毎日三食パンを食べるけどね(笑)」
「朝食なら紅茶、コーヒー、牛乳と合わせてパンを食べる。これは日本でも同じですよね。ただフランスではアイスコーヒーは積極的には飲まないね」(ジョルディさん)
――食卓にはどんなパンが並ぶのでしょうか?
ステファニーさん
「毎朝、近所のパン屋に焼きたてのバゲットを買いに行くんです」
アヌークさん
「街にパン屋がたくさんあるのよ。わかりやすく例えるなら、日本のコンビニのような感じかな。100メートル間隔でパン屋があるの」
ステファニーさん
「フランス人は特に“焼き立てのパン”にこだわっているかもしれません。ですので、トースターはあまり使いません」
ジョルディさん
「トースター? 僕は使わないね」
アヌークさん
「日が経ったパンをちょっと焼くためにトーストを使うことはあるけどね。私たちは焼き立てのパンをフレッシュなうちに食べるのが好きなの」
ステファニーさん
「そう、新鮮なパンが好き。日本で夫に買ったばかりのクロワッサンをトーストされたことがあったの。『何してるの!』って文句を言って、夫婦ゲンカになったこともあったわ(笑)」
フランスでは、毎朝、バゲットを買いに行く習慣が根づいている。「夕食なら赤ワインを飲みながらバゲットをほおばりたいね」(ジョルディさん)
フランス人と日本人ではパンへの認識が違う!
写真右の細長いバゲットのみがフランス人にとってパンなのだ。他は菓子パンや焼き菓子の意味を持つ“ヴィエノワズリー”と呼ぶ
――「ブーランジェリー ボネダンヌ」で、それぞれ気になるパンを買ってもらいました。
アヌークさん
「待って! 日本人はこれをすべてパンだと思ってるのですか。それは違うよ。私たちがこの中でパンと呼ぶのはバゲットだけなの」
ジョルディさん
「そう。たくさんあるけど、パンはバゲットだけだね」
――そうなのですか! ではバゲット以外の商品がパンではないとすると?
アヌークさん
「サンドイッチ、タルティーヌ(スライスしたパンの上にいろいろな具材をのせたモノ)、そして“ヴィエノワズリー”という……日本語では菓子パンと呼ぶモノです」
ステファニーさん
「日本人はパンをお菓子(おやつ)としても食べてますが、フランス人にとってのパンは主食で食べるもの。おやつ感覚で食べる菓子パンは、パンではなくヴィエノワズリーなんです」
ジョルディさん
「甘いヴィエノワズリーは朝食で食べることもあるね」
ステファニーさん
「そう。朝食にヴィエノワズリーとあわせてバゲットも並ぶ。日本人はパンがいっぱいと思うでしょうけど、私たちはパンとヴィエノワズリー。それぞれ別の食品という認識です」
アヌークさん
「子供はヴィエノワズリーが大好物だよね。学校が終わって家に戻る午後4時くらいに、小腹が空いていたらヴィエノワズリーを食べるの」
「フランボワーズ、おいしいね!」と、アヌークさん。「ボネダンヌ」の「木いちごタルティーヌ」(280円)の程よい甘さに大満足!
――フランスではジャムやスプレッドをパンに塗りますよね。日本各地でも地域の特産品を使ったオリジナルのジャムを作っています。
ステファニーさん
「朝食ならパンにハチミツを塗って食べたり、フランスでもジャムやスプレッドをパンに塗って食べるのは日常的。バラの花のジャムなど、種類も多いです」
アヌークさん
「フランスは自家製ジャムを作る家庭が多いかも。私の叔父さんも自家製のグリオットチェリーのジャムを作っていたわ。あと、フランス人はフルーツをよく食べるので、キロ単位で購入するの。食べきれなかったフルーツをジャムにして使い切るなんてこともしています。アプリコットのジャムとか、ね」
日本のパンは甘い、甘すぎる……!
――日本のパンにはどんなイメージを持っていますか? 日本ではバゲットほど長さはなく、歯ごたえのあるパンを「フランスパン」という商品名で販売しているのですが。
ステファニーさん
「まず、日本独特の『フランパン』と言われてるパンは柔らかすぎます」
ジョルディさん
「日本のパンは申し訳ないけど安っぽく思えてしまうな。マーガリン、オイル、砂糖……使う素材がどれも安っぽいなって」
アヌークさん
「私も日本のパンはどれも柔らかいと感じます。あまりに柔らかすぎて日本のパンは苦手というフランス人も結構多いと思います」
ステファニーさん
「でもね、フランス人は堅いパンが好きってわけではないんです。外見はパリっと中身はしっとり。こんな繊細さを感じるパンが好きなんです」
アヌークさん
「食感は大事にしてるよね。口に含んだらコクを感じるような」
フランス人にとってフランスパンはバゲットであり、そこは絶対に譲れない。外はカリカリ、中は大きな穴があり、もちもちなのがおいしいバゲットだと力説
――クリームパンのような日本の菓子パンはどうですか?
ジョルディさん
「無理、無理! 僕はクリームの詰まったパンは苦手だね」
アヌークさん
「先ほどお話したように、フランスにも菓子パン、焼き菓子にあたるヴィエノワズリーがありますが、口当たりはどれも程よい甘さ。日本の菓子パンは甘すぎです」
在日フランス人が足繁く通う、ご贔屓パン屋 in TOKYOを紹介!
1.「ブーランジェリー ボネダンヌ」(三宿)
最寄り駅から離れた地域密着型のパン屋ながら、評判を聞きつけた遠方からのお客さんも多い
シンプルな具材をバゲットに挟んだサンドイッチ「ブリノア」(650円)。それぞれの素材が見事に引き立ち、歯ごたえも抜群
パリ14区のパン屋で腕を磨いた荻原浩シェフが2013年にオープン。天然酵母を使ってひと晩熟成させたバゲットの豊かな香りは、在日フランス人をも魅了する。バゲットにくるみとブリ―チーズを挟んだサンドイッチや、バターと自家製の木いちごのジャムをたっぷり塗った「木いちごタルティーヌ」(280円)は注文後の作り立てを提供する。
「夏のボストック」(240円)はじめ、焼き菓子類も充実
アヌークさん
「パンから焼き菓子までしっかりした味わいを感じられてどれもおいしかったわ。ウチの近所にこんなパン屋があればいいのに!」
2.「ル・グルニエ・ア・パン」(半蔵門)
ル・グルニエ・ア・パン
住所千代田区麹町1-8-8 グランドメゾン麹町 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1308/A130803/13011374/
フランスに30店舗以上ある人気のパン屋。同店は、2016年に日本2号店となる「アトレ恵比寿店」もオープン
フランスに同名の本店を構え、2013年に日本国内第1号店として半蔵門・麹町エリアにオープン。本店のバゲットは、毎年パリで開催される「バゲット・コンクール」で2010年、2015年に二度も優勝した逸品。本場と変わらぬバゲットを日本でも味わえる。
フランス産の発酵バター100%使用した「クロワッサン」(259円)は、ほんのり甘く香り高い
「エクレール カフェ」「エクレール ショコラ」(各302円)。クリームとチョコレートの絶妙なハーモニー
ステファニーさん
「エクレアやタルトなどフランスの伝統の焼き菓子もとってもおいしいの! ベーコン入りのパン・シューがお気に入り」
「私の地元ではおいしいパンを表現する時、パンに耳をあて『パンが歌ってる〜』なんて言うの」と、アヌークさん
実は……日本のパンも好きよ!
――フランスの有名なパン屋を教えてください。
バゲットは手で一口サイズにちぎって、スプレッドを塗ったり、惣菜と一緒に食べたりする
ステファニーさん
「老舗の『PAUL(ポール)』(1889年にフランス北部のリールで創業)や、パリの人気店『MAISON KAYSER(メゾン・カイザー)』は有名です。この2店舗は、日本にもあちこちに支店があるので、知っている方も多いのではないでしょうか」
アヌークさん
「日本の有名な和菓子店『とらや』は、パリに『トラヤフランス』として出店しているよね。パリでもとても人気があって、実は私も『とらや』のアンパンが大好きなの! 日本で初めて本店に行った時は感動しちゃった」
ジョルディさん
「……僕はアンパンもダメなんだけど(苦笑)」
アヌークさん
「そうなの? 『木村屋』のアンパンも大好き!」
ジョルディさん
「僕も好きなのあるよ。『アルテリア・ベーカリー おいしいメロンパン』のメロンパン。本当においしかったね」
アヌークさん
「メロンパンおいしいよね! 日本に住んでるフランス人はみんなメロンパン好きになると思う」
ステファニーさん
「でも、アンパンもメロンパンもパンではないかな(苦笑)」
アヌークさん
「それは、しっかり言っておきたいね」
最後までフランスの方々が誇るパンへのこだわりを伝えてくれました。
みなさん、Grand merci!
https://lifemagazine.yahoo.co.jp/articles/7444