ゼロカロリーでも危険!人工甘味料で糖尿病になる理由とは 2017年4月8日
ゼロカロリーやカロリーオフの飲み物が体に悪いことをご存知ですか?
ノンカロリーや低カロリーをうたった清涼飲料水や菓子などの加工食品には砂糖の代わりに人工甘味料が使われています。
人工甘味料は砂糖と同じ重さで、数倍から数万倍の甘さを感じさせる糖とは異なる化合物です。
人工甘味料は砂糖のようにヒトが消化吸収できないため血糖値が上がらない、そのため糖尿病の患者さんにも良いとされてきました。
しかし具体的に人工甘味料がヒトの体にどのような影響を与えるのかについては、まだ不明確な点が多いのです。
この記事では、人工甘味料が腸内細菌バランスを変化させて糖質の消化吸収能力(耐糖能)を異常にするとする研究を紹介します。
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Reference:Suez J., et al., Nature. 2014. Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota.
人工甘味料は食後の血糖値を上昇させてしまう
乳酸菌に代表される腸内の善玉細菌が、ヒトの食事の消化吸収に関係していることは広く知られています。
人工甘味料はヒトが消化できないため血糖値に影響しないとされていますが、腸内細菌は分解できる可能性がありました。
イスラエルのワインツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science)のEran Elinav教授らは、人工甘味料の摂取が耐糖能に与える影響について調査を行いました。
教授らは、米国食品医薬品局(FDA)が定めた1日の最大摂取量のアスパルテーム、スクラロース、サッカリンをそれぞれ水に溶かしてマウスに与えました。
11週後、どの人工甘味料を飲んでいたマウスも食後の血糖値が高くなっていることが確認され、特にサッカリンの影響が最も高いことがわかりました。
また高脂肪な食事と少量のサッカリンを食べていても、人工甘味料を飲んでいないマウスと比べて、食後血糖値が高くなっていました。
これは、なぜなのでしょうか。
人工甘味料は腸内の微生物によって分解吸収されている
教授らは人工甘味料が腸内細菌に作用して、食事の消化吸収に影響したのではないかと考えました。
そこで腸内細菌叢を調べたところ、人工甘味料を飲むと腸内細菌の種類が変化して、肥満患者や糖尿病患者と同じ細菌が増えることがわかったのです。
さらに、この増えた腸内細菌を抗菌薬によって殺したところ、サッカリンを飲み続けていても耐糖能が正常に戻ったのです。
このことから、人工甘味料が腸内の微生物に何らかの影響を起こし、インスリン分泌や血糖コントロールを悪化させていることが判明しました。
人工甘味料はヒトの耐糖能を容易に破壊する
さらに教授らは、ヒトでの人工甘味料の影響を調査しました。
381人の健康人のデータを分析したところ、人工甘味料を含むジュースや菓子を習慣的に摂っていた場合、糖質を大量に摂ると耐糖能が容易に悪化することがわかりました。
さらに7人の健常人にFDAが定めた1日の最大摂取量のサッカリンを1週間飲んでもらったところ、4人の耐糖能に異常が見られたのです。
このことから教授らは人工甘味料の摂取が糖の消化吸収に悪影響を与えていると報告しています。
まとめ
この記事では、ノンカロリーな人工甘味料が腸内細菌を乱して代謝を異常にするという研究を紹介しました。
人工甘味料を使った飲み物は数多く、血糖値のコントロールが必要な患者さんにも勧められています。
しかし人工甘味料が間接的に耐糖能を悪化させる可能性が示唆されました。
カロリーゼロやカロリーオフで太らないからとガブ飲みして、過剰な量の人工甘味料を摂取することは避けたほうが良いでしょう。
https://drdoo.net/nutrition-diet/artificial-sweetener-glucose-tolerance-gut/
糖質ゼロの人工甘味料で糖尿病になる理由
カロリーゼロの“甘い罠”専門家が指摘〈週刊朝日〉10/9(月) 7:00配信
さまざまな飲料で「カロリーゼロ」が謳われている。肥満や糖尿病予防のためであれば、日ごろの食事に気を使った上でこういうものを賢く利用していきたい(撮影/写真部・小山幸佑)
カロリーゼロの人工甘味料入り飲料は、体形が気になる人にとっては心強い味方。しかし、最近の研究では、糖尿病のリスクを高めるという指摘もある。頼りすぎて、油ものなどほかの食べ物でカロリーオーバーになってしまう人もいるようだ。
人工甘味料入りダイエット飲料の糖尿病発症リスクはこちら
https://dot.asahi.com/print_image/index.html?photo=2017100600031_2
中部地方に住むミカコさん(45)夫妻は、週に1〜2本、人工甘味料入りのコーラや炭酸飲料を飲む。気持ちをスカッとさせたいときや、甘いものをとりたいときに利用するそうだ。
「やっぱりカロリーが気になるので。ゼロカロリーの飲みものなら安心です」(ミカコさん)
昨今、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの飲料コーナーでよくみかける人工甘味料入りの、いわゆる“ゼロ・オフ系”ダイエット飲料。ミカコさんのようにカロリーを気にする人や、ダイエット中の人にとっては心強い味方だ。
だが、実は一見ヘルシーにみえるこの人工甘味料は、体内の糖の代謝に影響を与え、糖尿病の発症リスクを高める可能性が指摘されている。糖尿病予防の視点から人工甘味料の研究を行っている金沢医科大学医学部衛生学准教授の櫻井勝さんは、こう話す。
「人工甘味料は砂糖と違って、血糖値を上げることはありません。ですが、まったく別のメカニズムから糖尿病の発症に関わっている可能性が、さまざまな研究でわかってきています」
人工甘味料とは「化学合成された甘味物質」の総称。日本ではアセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースの3種類がよく使われているという。一方、キシリトールやステビアなどは天然甘味料で、人工甘味料とは別のものだ。
あんなに甘いのに、なぜカロリーがゼロなのだろうか。神奈川県立保健福祉大学栄養学科教授の中島啓さんは説明する。
「ヒトの体内に吸収されるアスパルテームは、グラム当たりのカロリーは砂糖と変わりませんが、使用量はわずかなのでカロリーは限りなくゼロです。一方、アセスルファムカリウムとスクラロースは、生物がカロリーとして利用できる物質ではないため、完全にカロリーはゼロになります」
ちなみにわが国の食品表示基準で「無○○」「○○ゼロ」「ノン○○」という表示は、100ミリリットルあたり5キロカロリー未満と決められている。
人工甘味料は、これまでは肥満や糖尿病などの予防や改善に役立つとされてきた。それが、なぜ糖尿病の発症リスクを高めるという、真逆の指摘がなされるようになったのか。
注目を集めるきっかけは、2014年にイギリスの科学雑誌ネイチャーに発表された論文だ。「人工甘味料の一つサッカリンが腸内細菌叢(腸内フローラ)を変化させて、耐糖能の異常をもたらした」とする研究結果が報告されたのだ。
耐糖能とは、インスリンが血液中のブドウ糖を細胞に取り込む能力のこと。それが異常になると、血液中のブドウ糖を処理する能力が低くなり、糖尿病予備群といえる状態になる。前出の櫻井さんが解説する。
「最近の研究では、腸内フローラが糖尿病などさまざまな生活習慣病に影響を及ぼすことが明らかになっています」
ネイチャーの論文では、人工甘味料を与えたマウスにブドウ糖入りの水を飲ませて血糖値の変化をみると、耐糖能に異常を認めたという。また、その実験マウスの腸内フローラを無菌マウスの腸に移植すると、同じように耐糖能異常が起こることが明らかになった。
人工甘味料が腸内フローラにどのような仕組みで変化をもたらすのか、また腸内フローラの変化がなぜ耐糖能異常を引き起こすのかなど、未解明な部分も多い。ただ、このほかにも人工甘味料が糖尿病の発症リスクを高める研究がいくつか報告されているという。
その一つが「人工甘味料が脳の錯覚をもたらし、食べすぎを促す」可能性だ。
「通常、炭水化物や糖質をとると、ブドウ糖が血液中に取り込まれて血糖値が上がりますが、人工甘味料では血糖値は上昇しない。そのため脳は食事量が足りないと錯覚し、食べすぎてしまうのです」(櫻井さん)
このほかにも、「人工甘味料の強い甘さに慣れると甘みの感覚が鈍くなり、より強い甘さを欲するようになる(甘味への依存性)」「腸にも甘みを感じるレセプターがあり糖の吸収を高める」といった問題も報告されている。
では、どれだけの発症リスクがあるのか。櫻井さんは、富山県の金属製品製造業の従業員で、糖尿病のない35〜55歳の男性2037人を、03年から約7年間にわたって追跡調査した。この間に糖尿病を発症したのは170人。人工甘味料入りダイエット飲料の摂取量と糖尿病の発症との関連を調べると、ダイエット飲料を週にカップに約1杯(237ミリリットル)以上飲む人は、飲まない人に比べて糖尿病のリスクが1.7倍高かった(左上図)。
「一般的には、肥満傾向があり、糖尿病になりやすい人がダイエット飲料を好むと言われています。つまり、“人工甘味料が糖尿病のリスクを高める”のではなく、“そもそも糖尿病になりやすい人が人工甘味料をとっている”わけです。そこで、この調査ではそういう要素を考慮して、分析を行いました」(同)
それでも1.7倍という結果が出たので、「人工甘味料自体がリスクになっている可能性が高い」と話す。
『医者が教える食事術 最強の教科書』の著者で、東京・銀座で糖尿病患者を専門に診るAGE牧田クリニック院長の牧田善二さんは、ネイチャーに人工甘味料のリスクが掲載されて以来、患者には人工甘味料の摂取を勧めなくなったという。
「論文は健康な人の糖尿病のリスクを高めることが示唆されていますが、糖尿病患者については言及していません。ただ、リスクについて知ることは糖尿病の管理に重要だと考えていますので、患者さんには必ず伝えています」
人工甘味料が悪いのではなく、「安易に頼りすぎていることが問題」と指摘するのは、サイエンスライターの松永和紀さんだ。
「ダイエット飲料でカロリーを控えたから大丈夫だろうと気を抜いて、揚げものなど油っぽい料理ばかり食べたり、食べすぎたりする人がいますが、本末転倒。脂質1グラムあたりのカロリーは砂糖の2倍以上あるので、結果的にカロリーオーバーとなり、肥満や糖尿病のリスクを高めます」
やはりカロリーを気にするのであれば、日々の食事の内容にもしっかり気を使うべきなのだ。
人工甘味料に関する数々の論文をチェックしている前出の中島さんは、「評価方法が異なるため、論文には糖尿病のリスクを下げるもの、上げるものが混在していて、結論は出ていない」と話す。だからこそ、上手に使って、健康管理に役立てることが大事だという。
「個人的には、過剰摂取によって甘味への依存性をもたらす危険性はあると思っています。また、空腹時に飲むと、血糖値が上がらないため低血糖が起こることも危惧されます。食後にちょっと甘いものがほしいときに利用するなど、とり方には工夫が必要です」(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2017年10月13日号
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/764.html