失業率2・8%は20年前と同じ…かさ上げされた雇用の実態 徹底検証 アベノミクス5つの疑問
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2017年10月4日 日刊ゲンダイ 文字お越し
20代前半の失業率は5%超(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ
最新の完全失業率は2.8%で、完全失業者数は87カ月連続で減少したが、就業者数は56カ月連続で増加したという。総務省は「15歳から64歳までの就業率が過去最高となり、雇用情勢は着実に改善している」と胸を張る。
完全失業率が3%を下回るのは、1994年以来23年ぶりの低水準で、ほぼ“完全雇用状態”。額面通りならスゴイことだが、数字の中身をチェックすると、心もとない実態が浮上する。人材コンサルタントの菅野宏三氏が言う。
「就業者数のうち、パートや派遣などの非正規労働者が占める割合は約31%。昨年は40%近くに達したこともありました。完全失業率が同じ2.8%だった90年代前半の非正規割合は、せいぜい20%。高い賃金の正社員を減らして、低賃金の非正規を増やしているのが実情です。安倍政権は、いざなぎ景気を上回る景気拡大をアピールしていますが、この不安定な雇用状態では、家計に景気拡大の実感はありません」
安倍政権は、年金改革とセットで企業に定年延長の仕組みも導入。企業が高齢者を再雇用しやすい仕組みを整え、雇用確保もPRするが、これも裏を返せば、高齢の社員を正社員から契約社員に切り替える仕組みにほかならない。
「安倍政権は男女平等を大義名分に女性の職場参加を促しています。働き方改革といえば聞こえはいいですが、ダブルインカムで働かないと、家計がもたないのです。非正規労働者は7割が年収200万円未満ですから。そうやって、女性や高齢者が非正規職を担うことで、完全失業率が低くキープされているのです」 非正規なら、基本給も安いし、退職金もない。人件費を抑えたい企業にとって、非正規のウマミは“麻薬”みたいなもので、一度味をしめた企業はやめられない。
「失業者は、『就職を希望して実際に求職活動をしている人』で、相次ぐ失敗で就職をあきらめた人や、育児や介護などでやむを得ず就職活動をしていない人は含まれません。そんな現状を反映した失業率が、『広義の失業率』です。そこに、本当は正社員として働きたいのに非正規で耐えている“不本意非正規”を加えると、『広義の失業率』は今年4〜6月時点で10%にハネ上がります。雇用情勢は、まったくよくありません」
雇用関係の数字は安倍政権によってかさ上げされたマヤカシで、求人も配送ドライバーや警備、飲食など中高年には厳しい職場が圧倒的に多い。ホワイトカラーの事務系の求人は、年齢にかかわらず超激戦区だという。
「20代前半の失業率は、改善しつつあるとはいえなお5%を超えています。そういう人たちがやむを得ず非正規で職をつなぐと、非正規のドロ沼から抜け出せなくなるのです。潤うのは人材派遣会社だけ。その証拠にパソナやリクルートなど人材派遣会社の株価は、ここ1年右肩上がりです」
非正規のつらい現実をウヤムヤにして、雇用拡大を主張する安倍政権は断罪されるべきだろう。