J S Bachの音楽。第9、 バッハのパルティータ2番の紹介 ラルフ・カークパトリック(cem)の演奏
1、バッハのパルティータ
バッハのパルティータは、かれが生前出版を意図してはじめた、練習曲集の最初にあたる。それは、ゴルトベルク変奏曲まで続いた、バッハの特別な入魂の作品シリーズであった。
ここで、今回は、ラルフ・カークパトリックの演奏するバッハのパルティータ2番1959年 アルヒーフ版を紹介する。
JS Bach / Ralph Kirkpatrick, 1959: Partita No. 2 in C Minor BWV 826
https://www.youtube.com/watch?v=cLXBye4Xexs
davidhertzberg 2017/06/18 に公開
これは、すぐれた演奏なので、まえから紹介しようとしたが、ユーチューブ動画になかった。なぜ、ユーチューブ動画になかったか、というと、おそらくかって批評家が酷評していたからであろう。カークパトリックは、ヨーロッパ文化伝統のないアメリカの音楽学者であり、バッハというよりスカラッティの研究者であり、いわゆる音楽評論家のおめがねにかなわなかったのだ。もっとも、1959年以前の演奏は聴くに耐えないものも多いし、出来不出来のむらが多い人なのだが。
パルティータやフランス組曲やイギリス組曲の全曲版も、さいきんユーチューブ動画にあるのを見つけた。
パルティータ全曲
.S.Bach Complete Partitas (R.Kirkpatrick) (1958) Gigue
https://www.youtube.com/watch?v=MiPBtRjWiBc#t=1h54m50s
BATACHAN DESU 2017/04/11 に公開
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1:36:38 5 1:39:37 Allemande 1:46:28 Sarabande
1:58:40 6 2:05:18 Allemande 2:16:00 Sarabande
フランス組曲全曲
J.S.Bach Complete French-Suites [ R.Kirkpatrick ] (1957)
https://www.youtube.com/watch?v=LdtdplbECEs
イギリス組曲全曲
J.S.Bach Complete English-Suites [ R.Kirkpatrick ] (1956)
https://www.youtube.com/watch?v=MZWJFGdRl3E
この1959年アルヒーフ版パルティータ集が、なぜ、傑作になったかはよくわからないが、1959年のパルティータのとくに、2番、6番などは、カークパトリック以外の演奏が、いまでも、ほとんど必要なくなるほどの名演なのは、まえ書いたシェリング、ヴィンタートゥ―ルのバッハ、ヴァイオリン協奏曲集1965年版と同じである。両方ともアマゾンで買えるが、いままでネット上にはなかったのだ。
音楽が技術だけの問題ではなく、なにかそれ以外の情緒、感情に深くかかわる魂の問題であることが、音楽の評価をむずかしくしている。シェリング1965年版やカークパトリックの1959年アルヒーフ版を聴くたびに、これを感じる。
ディスコグラフィーをみると、1959年アルヒーフ版は、1958年から1959年にかけて録音されたことがわかる。1959年、1958年の両方が記されている理由であろう。
ラルフ・カークパトリックのディスコグラフィー
http://www.bach-cantatas.com/NVP/Kirkpatrick.htm
パルティータ2番と6番のサラバンドを、たとえば、カークパトリック、ヴァルハ、カール・リヒター、スコット・ロス、グレングールドなどと比べてみれば、カークパトリック1959年版が、いかにすぐれた演奏かわかるだろう。もっともヴァルハも名演であり、ヴァルハのパルティータ3番や、とくに6番は、なぜか鬼気せまる演奏である。さらにイギリス組曲になると、もうヴァルハの独断場になる。
パルティータ2番の最初をくらべてみれば、奏者の表現は端的にわかる。1959年のパルティータ2番の動画をアップしたひとは、これに気がついて、最初だけスコアがついている(笑)全曲、スコアのあるgerubachの(Scrolling) トレバー・ピノックの演奏は、便利なのでまとめておこう。
パルティータ gerubachの(Scrolling) トレバー・ピノック
Trevor Pinnock gerubach (Scrolling)
https://www.youtube.com/watch?v=MwKropNNeUA 1 BWV 825
https://www.youtube.com/watch?v=4QYkM5QQCK4 2 BWV 826
https://www.youtube.com/watch?v=bxGQhZVSWbw 3 BWV 827
https://www.youtube.com/watch?v=RXeWMv6Vbe4 4 BWV 828
https://www.youtube.com/watch?v=zhsTQ_mf-RU 5 BWV 829
https://www.youtube.com/watch?v=KTcJHfDq7gE 6 BWV 830
パルティータ2番 BWV526の最初
トレバー・ピノック gerubachの(Scrolling)
https://www.youtube.com/watch?v=4QYkM5QQCK4
カークパトリック
https://www.youtube.com/watch?v=cLXBye4Xexs
ヴァルハ
https://www.youtube.com/watch?v=AIVBpnyefiE
カール・リヒター
Karl Richter BWV 826 Partita N°2
https://www.youtube.com/watch?v=lZuUiNdqt6Y#t=0h11m08s
スコット・ロス
Scott Ross BWV 826
https://www.youtube.com/watch?v=Xb_m61NqehI#t=0h19m15s
グレングールド
Bach - Partitas 1-6 Glenn Gould BWV 826 Partita 2
https://www.youtube.com/watch?v=cmYv5TuHg7Q#t=11m30s
パルティータ6番のSarabande
トレバー・ピノック gerubachの(Scrolling)
BWV 830 - Partita No.6 in E Minor (Scrolling)
https://www.youtube.com/watch?v=KTcJHfDq7gE
カークパトリック
J.S.Bach Complete Partitas (R.Kirkpatrick) (1958) BWV 830 Sarabande
https://www.youtube.com/watch?v=MiPBtRjWiBc#t=2h16m00s
ヴァルハ
J.S Bach - Partita n° 6 BWV 830 Helmut Walcha
https://www.youtube.com/watch?v=-hEzVXqHbG8#t=11m44s sarabande
カール・リヒター
Karl Richter BWV 830 Partita 6 sarabande
https://www.youtube.com/watch?v=lZuUiNdqt6Y#t=1h23m01s
スコット・ロス
Scott Ross BWV 830 Partita 6 sarabande
https://www.youtube.com/watch?v=Xb_m61NqehI#t=2h11m12s
グレングールド
Glenn Gould BWV 830 Partita 6 sarabande
https://www.youtube.com/watch?v=cmYv5TuHg7Q#t=1h28m00s
2、音楽の感動体験とは、なにか
音楽は、作曲家の意図と演奏家の表現、聴衆の聞き方、3つが複雑にからむ
1959年ころを境として、カークパトリックが、おおきく円熟していったことに、多くの音楽評論家は、気がつかなかった。ほとんどの人は、音楽評論家の判断をたよりにしてLPを買って聴いていたので、カークパトリックは一般聴衆からも、とりのこされたのだろう。いまになって再評価というか、あたらしい世代の音楽評論家にはじめて評価され始めてきたのだろうか。これには、インターネットの情報検索が容易になってきた理由もあるのだろう。
しかし、わたしが、ユーチューブ動画で、バッハを聴き始めたときは、カークパトリックはおろかヴァルハでさえ検索にひっかかってくることはあまりなかった。ヴァルハやカール・リヒターさえ、あたらしい世代は、名のみ知るという状態だというならば、存命中ですら語られることのなかったカークパトリックの演奏が、ユーチューブ上にあるわけないと、ながらく思っていた。
なにせ、音楽会社の利益がかかわり、グーグル、ユーチューブ社の方針もある。いまの音楽が無料で聴けるという方針は、むやみにおおきく変えることもできないだろう。だが、カークパトリックは、新人あつかいでいいのだ。CDの売り上げも伸びるだろう。こういったわけで、カークパトリックの動画が出現しはじめたのだろう。これは、ここ半年くらいの現象のように思う。どこかの外国音楽雑誌が特集したのかもしれない。
おかげで、自由闊達、柔軟で風通しのよいカークパトリックのパルティータ集がネットで簡単に聴けるようになったわけだ。平均率もクラビコードのものばかりでなく、チェンバロの演奏もそのうち出てくるかもしれない。ただ出来不出来の落差が大きいのがカークパトリックの特徴で、モダンチェンバロの音もあまりよくない。
というより、あらゆる奏者にも、出来不出来のおおきな落差がある。演奏家も人間なのだからとうぜんだ。出来不出来のおおきな落差といっていても、聴衆の聞き方が変わっていく場合もある。
作曲家の意図と演奏家の表現、聴衆の聞き方、3つが複雑にからむのだ。○○がいいといっても、その意味は、複雑だ。作曲家があらゆる努力をし、演奏家が最善の表現をしていても、聴衆の聞き方が粗雑ならそれでだめなのだ。3つのなかで、1つでも低いレベルなら、なにか全体の意義が、その低いレベルになる。
なぜなら、音楽感動体験は、この物質宇宙でおきることでなく、おそらく非物質宇宙の意識宇宙でおきることだからであると思う。作曲家が世界に意味を与えるのが最初のステップ、演奏家が聴衆に提供する第2ステップ、聴衆がそれに参加して世界の意味を体験する第3ステップで、その感動宇宙の創造は完成する。聴衆すらも、作曲家と演奏家と同等な意味を持ち、感動宇宙の創造に参加しているのだ、とわたしは思っている。
カークパトリックの場合、聴衆の聞き方が粗雑であったが、時間がたつうちに聴衆の聞き方が変わり、作曲家の意図と演奏家の表現を一望におさめる峠に立ち、聴衆の聞き方が、作曲家と演奏家と同等の位置に立つような人が多くなってきたのだ。カークパトリックの演奏するバッハのパルティータ2番の動画が、ユーチューブ上に現れてきたのは、おおくの聴衆の聞き方が、作曲家の意図と演奏家の表現を一望におさめる峠にさしかかってきたからだろう。だから、パルティータ2番の動画をアップしたひとの感動を、わたしも共にしたくて、この紹介をしたわけだ。
【過去の投稿】
J S Bachの音楽。1〜8
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