10−12月期GDP速報値について
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52904029.html
2017年02月13日 在野のアナリスト
日米首脳会談を、経済の専門家で評価する人がいたことは驚きです。「日本は為替操作していない」や「貿易不均衡はない」との言葉が、共同声明には入らずとも、言質をとれたのなら及第点ですが、何も決まっておらず、不透明感だけが残るからです。安保では及第点、というのはまだ分からなくもないですが、それでも共同記者会見で「日本を100%支持する」との言葉は、北朝鮮問題で米国が前面にでることはない、と述べたようにも聞こえます。日本がやるなら応援するよ、と言っているようにしか聞こえないからです。
「Look at me」が話題です。安倍氏をみつめるトランプ氏、という珍妙な映像を残しましたが、再び使わざるを得なくなる日。それは先送りしたあらゆる問題を、議論の俎上にのせたとき、になるのでしょう。日本が何を言っても聞く耳をもたず、要求をごり押ししてくるとき「私たちの状況をみて」と言わざるを得なくなるのでしょう。
10-12月期GDPが発表され、季節調整済みの前期比で実質0.2%増、名目0.3%増でした。実質で外需は0.2%増、内需は0.0%減の寄与と、外需依存が鮮明です。販売奨励金で好調な自動車、需要が一巡したとされながら買い替えと寿命サイクルの短いスマホなどの電子部品、が伸びた形です。ここ1年、内需がダメだと外需が、外需がダメだと内需が、といった形でうまく循環が働き、暦年でも実質で1.0%増となりました。
ただこの数字、GDPの統計手法が変わったたため、今ひとつ評価が低くなっています。安倍政権では暦年で2013年2.0%増、14年0.3%増、15年1.2%増、16年1.0%増(速報値ベース)と、1%以上の成長を達成しているようにみますが、国民にその実感はない。研究開発費もGDPに計上されたとて、それが国内で寄与しているかどうかは不明です。設備投資も同様、国内の設備を海外に移しても、それがGDPに反映されるわけではない。設備投資減税のある国で設備投資をし、それを生産拠点である他国にもちだすことなど、今はふつうに行われているのですから、特に変更後のGDPが映すのは総生産とは別の形です。
国内に限ってみれば、家計消費支出が0.0%減、住宅投資が0.2%増、設備投資が0.9%増、政府支出が0.4%増、GDPの6割を占める個人消費が微減する中、他が支えた形ですが、住宅投資は賃貸用がバブル症状、政府は赤字国債を増発して公共工事を増やす始末で、まともな状態ではありません。企業の設備投資も、トランプ政権により米投資が増えるなら、国内の設備投資は減るでしょう。不思議などこかがダメだと、どこかが支える、といった好循環が今後、つづく見こみもないのです。トランプ相場で、停滞気味だったバブルにもう一度ムチが入る、といった期待が外需を支えますが、金利上昇と不動産投資と、そのバランスが崩れるのがいつか、それがカギでもあるのでしょう。
国内需要デフレーターが暦年で-0.5%となり、デフレ傾向が鮮明です。円安で押し上げられていたGDPデフレーターも0.3%と、もう「デフレでない」ともいえなくなってきた。そんな中、内閣府の発表で今回、最終需要という項目が入ってきました。GDPから在庫変動を控除した数字、として示されますが、13年2.4%増、14年0.2%増、15年0.6%増、16年1.2%増と、消費税増税でおちこんだ需要が、着実に回復している、という政権にとって都合のいい数字ですが、在庫は国内のために積み上げているばかりでないので、その変動をとって『最終需要』とするのは違和感があります。こんな参考値を載せなければ、安倍ノミクスが成功した、といえないぐらいに低い伸びが、心苦しいところなのでしょう。
2016年の雇用者報酬は、前年比で実質2.6%増です。誰もがそんなにもらっていない、と感じるところですが、高額所得者が伸びれば高くなりますし、日本最大の雇用となる公務員給与が上がると、一気に上昇します。つまりこの数字が示すのは、さらに格差が拡大する方向、といったところなのでしょう。今回のGDP、国民の感じるところと、より大きく乖離した、というのが実感です。しかしこれほど良い数字なのですから、国内で大騒ぎしても良さそうです。しかしあまり大きく取り扱われていない。それは、これだけよい数字だと米国からの圧力がより高まるからでしょう。もっと日本は出せるではないか、余裕があるだろう、と。そのとき、安倍氏は「Don't look at me」と、この数字を隠そうとするのかもしれません。国内向けに、安倍ノミクスは成功していると言いたい心境と、そうすると米国の圧力が高まる懸念。よい経済指標を捻出しようと工夫してきたことが、こんなところで逆効果になりかねない、安倍氏の「しまった」顔がまた出ることになりかねないのでしょうね。
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