リサイクル運動が、いかに「しょうもない偽善」かを説明しよう
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2017.02.03 武田邦彦『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』 まぐまぐニュース
ゴミの分別・リサイクルについて異を唱えてきた、メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者である、中部大学の武田教授。今までの記事では、リサイクルやゴミの分別による弊害や、メディアが伝えてきた嘘について暴露してきましたが、今回は著者のもとに届いた異論のメールを取り上げ、なぜ著者が「環境問題を唱える人々」を偽善だと思うかについて、はっきりと答えています。
■古来「焼く文化」であった日本は1つの物を大切に扱ってきた
ある読者からリサイクルに対する私の考え方に、異論があるとしてメールをいただきました。そこには、私が今までこのシリーズでは触れていないことで、かつ、日本の多くの人が錯覚していることがそのまま示されていました。
「ニューヨークの近くにピラミッドほどのゴミ山があると本に出ています。よって、リサイクルの観念は正しい。日本では、100年前からすでにやっていて、自然にその観念がありました。」
まず「事実」ですが、著者の調査ではニューヨーク近くにゴミがピラミッドほどの大きさで積んであるところはありませんでしたが、一度、激しい積雪でゴミの収集が滞ったときにある程度のゴミが山積みになっていたことがあったようです。
ゴミを減らそうとか環境を良くしようと強く思っている人は、「自分がやろうとしていることは正しい」という信念が強すぎて、事実を軽視することがあります。アメリカは国土が広く、大雑把なので、日本のようにキチンとゴミ処理をすることはないのですが、だからといってニューヨークの近くにゴミがピラミッドほどに積まれるというのは、自分の主張を通したいために事実を曲げていると思います。
第二に、だから「リサイクル」というのは論理が飛躍しすぎています。ゴミの山を処理するには、埋め立てか焼却がもっとも簡単なことは、自宅のゴミを考えてもすぐわかります。ゴミをリサイクルできると考えている人は、ゴミをよく見ていないか、ゴミの中の特定のもの(たとえば綺麗なまま捨てられる紙、まだ使えそうなプラスチック容器など)だけを見ている場合があります。
でも、ゴミ処理というのはゴミの10分の1だけを処理してもダメで、ほとんどのゴミをリサイクルして有効に使うか、全部焼却するかの2つしかないとしても良いのです。ところが、自分のところからでるゴミをよく見てみると、台所からのゴミはベチャベチャしている上にすぐ腐敗するのでその中から有用なものだけ取り出すのは不可能です。
また、台所からのゴミを焼却するには、紙かプラスチックのように燃えやすいものが一緒でなければ実際に実施できません。かくして、もし利用するにしても「ほぼ新品のまま、種類が少なく、再利用しても使ってくれる人がいる」というものだけがリサイクルできますが、現実にはよほど「ポイ捨て」社会でなければそんなゴミはないのです。
また、この文で間違っているのは、もともと白人の世界は土に埋める文化で、乾燥した風土であることもあり焼却はほとんどしませんでした。それに対して日本は湿気があるので衛生上、「焼く文化」でした。日本は江戸時代の前も「リサイクル」というのはなく、物が欠乏していたので、大切に何度も使うことが行われていました。
たとえば反物で作った和服は、大人の次は子供に回し、それから手ぬぐい、最後は雑巾というように「下位の用途にまわす」ということで、これは「再利用」ではありません。そして現代は、子供は子供服、タオルはタオルを使い、洋服のお古を切り取ってタオルとして使っている家庭はほとんどありません。
■偽善者こそ環境に関心があり、子供を騙している
現実を無視して「リサイクルは良いことだ」と思うところに錯覚があります。
そして、石油はたっぷりとあるし、木材や紙は太陽の光で育つ樹木を原料にしますから、大いに利用するべきで、使い終わってゴミになったら、家庭の焼却炉とか、近くの市営の焼却施設で焼いてしまうのが、効率も良く、衛生的で、豊かな生活ができます。
私たちは何のために人生を送っているのでしょう。自然が恵んでくれるものの範囲で、自然を破壊しない限度で、自分の目的にそった人生、幸福な生活を目指すものであって、「我慢する生活」をわざとする必要がないのは言うまでもありません。
たとえば、石油が十分にあるのに、節約して洋服のお古を切り取ってタオルにして使うより、綺麗で吸湿性があり、肌にも快適なタオルを使うのが「人間にも自然にも良いこと」と思います。
またせっかく日本には土地の3分の2もの森林があり、太陽の光の恵みで毎日、大量の樹木が育っていて、それから紙ができるのに、わざわざ石油を使って紙をリサイクルしたり、紙の裏を丁寧に使ったりする必要もないのです。「もったいない」というのは本当に自然を破壊したりするから「正しい」ことになるので、「もったいない」ということ自体が「正しい」のではありません。
とかく、知識人(インテリ)は口だけでなんとなく正しいことを言いますが、現実は、高給取りで贅沢をしているものです。厳しい言い方をすれば著者は「環境に関心のある人の多くが偽善者で、子供を騙している」と感じます。リサイクルという社会運動がもたらした「偽善、他人に犠牲を強いる、環境破壊」は誠実で礼儀正しく、他人を尊重するという日本文化を大きく破壊してきました。できるだけ早くリサイクルを止め、もしリサイクルできるようなものをドンドン捨てたいのなら、かつてのようにビジネスになるものだけ自由意志で回収したら良いのです。そうすれば分別の手間、有料ゴミ袋が無くなるとともに、地方税も安くなります。
そろそろ夢から覚めて、正直な生活に戻るときです。
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『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』
著者/武田邦彦
東京大学卒業後、旭化成に入社。同社にてウラン濃縮研究所長を勤め、芝浦工業大学工学部教授を経て現職に就任。現在、テレビ出演等で活躍。メルマガで、原発や環境問題を中心にテレビでは言えない“真実”を発信中。