日銀の金融政策決定会合
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52903269.html
2017年01月31日 在野のアナリスト
昨日、安倍首相がトヨタ社長と3日にも会談、との記事がでましたが、これは悪い情報と言えます。なぜなら、日米首脳会談の1週間前に開くのですから、妥協点をさぐろうとするとしか思えない。つまり日米首脳会談は、日本側が大幅に譲歩する形になるとしか思えないのです。安倍政権のテンプレである「トランプ氏は自由貿易の重要性を認識しており…」も眉唾であり、自由貿易を高らかに誇る安倍政権が、その旗を下ろして不平等条約に突き進むのか? 来月10日の首脳会談は、様々な意味で注目なのでしょう。
日銀の金融政策決定会合が開かれ、現状維持が決まりました。展望リポートでは実質の成長率を16年度は1.4%増、17年度は1.5%増、18年度は1.1%増、とそれぞれ小幅に上方修正しました。先行きは「緩やかに拡大に転じていく」と、昨年末から市場で語られていたような、トランプ相場への期待も滲みます。しかし市場のテーマは、すでにトランプ政策のネガティブ要因に移っており、日銀の時宜を逸した認識がよりめだつ形となっています。
浜田内閣官房参与が、財政出動もすべき、といった主張をしていますが、その中で「健全財政が不況を招いた」と述べています。しかし独国は健全財政を達成しつつ、高い経済成長を保っており、こうした経済学を一般論でまとめる点で、すでに問題があります。日本の事情を考察した結果、として何が適切かを指摘していない。失敗したら、あれも足りなかった、これも足りなかった、などというのは愚の骨頂です。経済政策を実験でやってもらっては困るのであり、もう失敗は取り戻せないのです。
それは黒田日銀総裁も同じです。バズーカも撃ち尽くし、テーパリングも意識される中ですが、失敗の誤魔化しといった会見がめだちます。例えば、為替はファンダメンタルズを反映…と述べますが、自ら良好と判断する日本経済の、その円は安くなってきた。ファンダメンタルズが強ければ、本来は円高に向かうはずなのに、です。今は金融政策の方向性により強く為替の動きは依存しており、金利差やファンダメンタルズは補完的な位置づけでしかない。そうなってしまったのは、通貨量を拡大したため、実体経済と市場との乖離が生まれたこと。その結果、通貨のボリュームをより強く意識してしまうのです。
古臭い経済学の常識に従って判断を下し、間違える。どこかの米国大統領を笑うこともできません。そもそも安倍ノミクス3本の矢は財政出動、金融政策、成長戦略でしたが、金融政策一本足にしたのが安倍政権です。失敗しました、じゃあ改めて3本同時に放ちましょう、といっても金融政策が限界を迎えた今、3本そろうことがありません。しかも補正予算が組まれましたが、財源不足で赤字国債を発行するようになり、財政出動も難しい。これでもし本当に経済が拡大するとしたら、海外の奇跡を待つしかないのでしょう。
黒田氏は保護主義が拡散することはない、としますが、保護主義は相手への対抗措置を講じることにより、世界的に拡散するものです。個人的には、トランプ政権が続く限り、ドル基軸通貨体制の見直しが、国際的に議論がはじまることを懸念しています。保護主義を率先して輸出する国の通貨を、世界の基軸通貨にしておくことは不合理極まりなく、逆にそのときのマネーの予想もつかない動き、それは世界経済を混乱に導くかもしれません。
安倍ノミクスは、英語だとAbeconomicsと表記されることもあります。economicsにABをつけた形ですが、物事のはじまり、という意味でもつかわれるA、Bをつけなければいけないほど、基本ができていない、という意味にもうけとれます。では黒田バズーカには、後ろにCをつけ黒田バズーカしい、黒田恥ずかしい、と読み替えると、今の日銀のおかれた状況が示せるのかもしれませんね。