視点:
生産性革命こそ日本の変わらぬ課題
1月27日、米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授は、日本の課題として、効率性向上を目指す働き方改革の遂行、投資から消費への税負担シフトを柱とする持続可能な財政政策の採用、そして生産性革命をもたらす新たな産業政策の実行の3つに言及。写真は2014年5月に都内で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
デール・ジョルゲンソン ハーバード大学教授
[東京 27日] - 日本経済の問題点は引き続き、1990年代以降低迷傾向にある生産性と減少を続ける労働力人口、そして急速な高齢化に伴う社会保障費の増大だと、ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授は指摘する。
解決策としては、生産性革命をもたらす新たな産業政策の実行、効率性向上を目指す働き方改革の遂行、投資から消費への税負担シフトを柱とする持続可能な財政政策の採用の3つだと説く。
同氏の見解は以下の通り。
<自由貿易協定停滞なら自力での競争促進が先決>
アベノミクスについて、私は次の3つの目標を完遂することを求めたい。
まず、生産性革命を起こし、頑強な経済をつくること。次に、出生率を(現在の1.4台から)1.8まで引き上げ、1億人の総人口を長期にわたって維持すること。最後に、社会保障の責務を果たすため、政府歳入を対国内総生産(GDP)比で増やすなど持続可能な財政政策を採用することである。
1点目について言えば、一段の競争促進が(1991年以降低迷する)生産性上昇率を引き上げる上で、大きな鍵を握る。成長政策における日本の伝統的なアプローチは、重点産業分野に補助金を与えることだ。だが、優遇された産業は、成熟化すれば、規制を盾(たて)に競争を阻害しようとする。新たな産業政策は、彼らが頼る岩盤規制に風穴を開けることで、競争を促進することに主眼を置くべきだ。
具体的には、多国間自由貿易協定を促進し、農協の影響力を削ぐなどして、農業改革を進めることだ。トランプ米大統領誕生がもたらした一番大きな課題は貿易政策だが、環太平洋連携協定(TPP)から米国が離脱するからといって、果たして中国などを含む東アジア地域包括的経済連携(RCEP)がこれを代替できるのか、あるいはTPPは別の形で蘇生されるのか、判断を下すまでにはまだかなりの時間が必要だ。
まずは、流通、金融・保険、建設、不動産、その他サービス分野における岩盤規制を排除したり、全国統合の送電網(National grid)構築などによって電力の生産(発電)・小売り分野での一層の自由化を図ったりするなどの新たな産業政策の実行が急務だ。
<生産性が反映されない賃金システムと決別を>
次に、日本は働き方改革の遂行によって出生率の改善と労働効率の向上を目指し、(1998年をピークに減少傾向にある)労働力人口問題の解決に取り組む必要がある。
日本の雇用・賃金システムはいまだ年功序列・終身雇用の考えに基づいており、労働市場の流動性は凍りついてしまっている。日本はせっかく高いクオリティーの労働力を持っているのだから、生産性を反映しない給与体系を変革して、そうした労働力の有効活用を目指すべきだ。
また、今の日本の雇用システムには、仕事上のキャリアを追求する女性が結婚を遅らせたり、家族が子供を持つことを先延ばししたりするように促す誘因が多いため、出生率の低迷を招いてしまっている。(働き方改革によって)この部分は変えていかなければいけない。
最後に財政政策について言えば、高齢者のために設計された社会保険システムを維持するためには、前述した通り、政府歳入をGDP対比で増やしていく必要がある。
そのためには、税負担の投資から消費へのシフトが不可欠だ。そうすることで、民間投資は刺激され、より高い生産性上昇がもたらされるだろう。もちろん、総需要を維持するために、歳入増加は、経済成長率が上昇していく中で、段階的に図られていく必要がある。
*デール・ジョルゲンソン氏は米国の経済学者で、ハーバード大学名誉教授。計量経済学会会長、米国経済学会会長、米国学術研究会議経済政策部門(STEP)委員長などを歴任。スウェーデン王立科学アカデミー、全米科学アカデミーなどの名誉会員。
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
(編集:麻生祐司)
コラム:トランプ米大統領、対メキシコ強硬姿勢で「共倒れ」も 2017年 01月 26日
コラム:トランプ相場でドル125円へ=田中泰輔氏 2017年 01月 10日
再送-為替こうみる:早くも期待外れの米国、対米戦略にいそしむ中国=三井住友銀 宇野氏 2017年 01月 06日
http://jp.reuters.com/article/view-dale-jorgenson-idJPKBN15A0RB?sp=true
コラム:メキシコ国境の壁建設費、ツケは米消費者に
Gina Chon
[ワシントン 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領の「米国第一」主義が壁にぶち当たっている。新政権は、メキシコとの国境に壁を建設する費用を負担させるため、同国からの輸入品に課税する方針を示した。資金をたっぷり捻出できそうだが、ツケを払うのは米国の消費者かもしれない。
トランプ氏は不法移民を防ぐために壁を建設し、メキシコに建設費を負担させると繰り返し述べてきた。就任後第1週目にして壁建設の大統領令に署名。ペニャニエト・メキシコ大統領は26日、トランプ氏との会談を中止すると発表した。
スパイサー大統領報道官はその数時間後、メキシコからの輸入品に20%課税して壁の建設費に充てる方針を表明し、年間100億ドルを調達できると述べた。これは議会下院の共和党議員が提唱している法人税の「国境調整」に似ているようだ。トランプ氏は先に、国境調整は複雑過ぎると述べている。
下院案では、法人税率を現行の35%から20%に引き下げる。同時に輸入コストを税控除の対象から外し、輸出で得た収入について所得税を免除する。これにより10年間で税収が1兆ドル増えるとしているが、輸入品への依存度が高い産業は税負担が重くなる可能性がある。
企業はそのコストを消費者に転嫁するかもしれない。米国は昨年1─11月にメキシコ製品を2700億ドル相当輸入した。最大品目は自動車だが、果物や野菜、ビールも数十億ドル規模で輸入している。全米小売連盟は、国境調整が導入されればメンバー企業は小売り価格を最大15%引き上げざるを得なくなると表明した。
トランプ氏は貿易協定のほごや移民制限に関する大ざっぱな大統領令に次々と署名し、「米国第一」の約束を果たそうとしている。しかし実際に政策を実施するのはもっと複雑である。壁建設費の請求書は結局、米国の消費者に回ってくるかもしれない。
●背景となるニュース
*スパイサー大統領報道官は26日、メキシコからの輸入品に20%課税し、その税収を壁の建設費に充てる方針を表明した。ホワイトハウスはその後、検討している多くの案の1つに過ぎないと述べ、この構想についてトーンダウンした。
*輸入課税の構想は、下院共和党が法人税改革の一環として提案している国境調整税に似ている。輸入コストを税控除の対象から外し、輸出で得た収入について所得税を免除するもの。法人税率の35%から20%への引き下げも提案している。トランプ氏はさらに大幅な15%への引き下げを示唆したことがある。
*メキシコのペニャニエト大統領は26日、トランプ氏が壁建設の大統領令に署名したのを受け、来週予定していたワシントン訪問を中止したと発表した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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米CBOの金利見通し、利上げ観測に一石
米議会予算局の金利見通し引き下げは、FRBの利上げ観測に一石を投じた
By DAVID HARRISON
2017 年 1 月 27 日 12:36 JST
米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年12月に発表した最新の見通しで、9月時点の見通しよりも利上げペースが若干速まるとの予想を示した。これに対し、米議会予算局(CBO)は24日発表した最新の経済見通しで、想定される利上げペースを8月時点の予想からやや下方修正した。
FRBが想定するフェデラルファンド(FF)金利誘導目標(中央値)は2017年が1.4%、18年は2.1%だったが、CBOは17年が1.1%にとどまり、18年は1.6%(8月時点の予想は1.8%)になると見込む。
ただ長期の見通しについては、CBOは3.1%程度と予想し、FRBが想定する3%をわずかに上回る程度だった。
両者の今後2年間の予想に差が生じた理由はいくつかある。まず、CBOの長期見通しは現行法を前提にしている。つまり、財政政策が変更され経済や金利に影響が及ぶ可能性は想定していないということだ。
一方、FRB当局者の一部は財政政策が見直される可能性を考慮しつつ予想を立てていると、FRBのジャネット・イエレン議長は12月の記者会見で語った。だとすれば、ドナルド・トランプ米大統領の減税案や歳出拡大案が実現した場合、経済成長は加速し、失業率は低下すると織り込んでいる当局者がいることになる。
CBOは今回の報告で、生産性に関する新たな予想を踏まえて、17年と18年の経済成長見通しも下方修正した。このところ生産性の伸びが鈍っているのは、構造変化が一因というわけではなく、リセッション(景気後退)がもたらした面もあるようだと指摘した。このため、生産性が上向くのはしばらく先になると考えられる。
確かに、FRBとCBOの金利見通しにそれほど大きな差があるわけではない。ただ今回のCBOの報告は、FRBの利上げ観測に一石を投じるものだ。労働市場は堅調を保ち、足元でインフレ率や賃金上昇率に加速の兆候が見られるため、FRBの利上げペース加速を当たり前のことと考えるのはたやすい。CBOの報告は警鐘を鳴らしている。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiWisCWv-HRAhVKFJQKHbJICzEQFggaMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10852398588237353609804582584322839010892&usg=AFQjCNFgbqEjpr215vo39YZmkW0PmPvblw&bvm=bv.145063293,d.dGo
ギリシャと債権団、救済策巡る交渉で折り合いつかず
ギリシャのチプラス首相(右)とツァカロトス財務相
By VIKTORIA DENDRINOU AND NEKTARIA STAMOULI
2017 年 1 月 27 日 10:02 JST
【ブリュッセル】ギリシャとその債権団は26日、行き詰まりを見せるギリシャ救済の解決策を巡る交渉での折り合いがつかなかった。
ブリュッセルで開かれたユーロ圏財務相会合(ユーログループ)では、ギリシャに対する最大860億ユーロの金融支援策の第2次審査に関する交渉妥結への道を開く進展が見られなかった。だが今年はオランダ、フランス、ドイツ(おそらくイタリアも)で選挙が予定されており、ギリシャへの不本意な譲歩に対する各国の関心が薄れる可能性があるため、2月までの合意を迫られている。
ユーログループのイェルン・ダイセルブルーム議長(オランダ財務相)は「第2次審査を早く終わらせることが全員の利益になることは十分理解されている」と述べた。
ギリシャは、巨額の債務の返済期限を迎える7月までに、数十億ドルの新たな救済融資を必要としている。だが、国際通貨基金(IMF)はギリシャにさらなる緊縮財政を求め、ドイツは大規模な債務免除の検討を拒否している。ギリシャ政府は債務負担が大幅に減ることなく、痛みを伴う支援策をのまざるを得なくなることを恐れている。
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2017年の欧州最大の課題は選挙にあらず
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjZ-sWJv-HRAhUGFpQKHQpBAfAQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10852398588237353609804582584113797188888&usg=AFQjCNF-MG0gKTvuR3QYUfkymFca79OQSQ
英首相、貿易問題で厄介な綱渡り トランプ氏と会談へ
トランプ氏と会談では貿易問題で厄介な綱渡り的対応を求められるメイ首相 PHOTO: SIMON DAWSON/BLOOMBERG NEWS
By
JASON DOUGLAS AND JENNY GROSS
2017 年 1 月 27 日 10:44 JST 更新
【ロンドン】訪米中の英国のテリーザ・メイ首相が27日、ホワイトハイスでトランプ米大統領と会談する。会談では綱渡り的な対応を迫られるだろう。この会談で米国との新貿易協定合意の土台作りに努める必要がある一方で、欧州指導者たちの反感を買わないようにしなければならない。同首相は欧州指導者たちとの間で、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)で合意しなければならないからだ。
メイ氏とトランプ氏は意見の異なるさまざまなテーマを話し合う見通しだ。その中にはトランプ氏が拒否しているイラン核合意と、同じく同氏が時代遅れと呼んだ北大西洋条約機構(NATO)も含まれている。
しかし貿易に関する意見の相違は際立っている。トランプ氏は保護貿易主義の「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げ、多国間貿易協定を非難してきた。メイ氏は英国を自由貿易の最大の提唱者とするビジョンを打ち出した。
米国入りしたメイ首相は26日、フィラデルフィアで共和党議員を前に演説し、英国は「世界中のどこでも、ビジネス、自由市場、自由貿易の最大かつ最強の提唱国の一つとして行動し続けるだろう」と語った。
メイ首相は25日、訪米に先立ち英下院で、「米国の大統領に率直に話すのを恐れていない」と述べた。またフィラデルフィア行きの飛行機の中で、「トランプ氏と1対1で話す機会になるだろう」と記者団に語り、会談のテーマは「われわれが共有している利益、(英米両国の)特別の関係、両国が直面している課題」になるだろうと述べた。
トランプ氏とうまくやっていけると考えるかとの記者団の質問に対して、通常控えめなメイ氏は「(ことわざにあるように)時には正反対の者が引き合う」と述べた。
トランプ氏は、海外での米国の経済同盟再編の一環として、昨年世界5位の経済大国である英国との貿易協定の可能性を強調した。
メイ首相は貿易協定への一層のコミットメントを求めている。同首相は、自らのEU単一市場からの離脱プランが、英国に打撃にならないばかりか、英国の繁栄を逆に促進する可能性すらあることを示そうと努力している。EU単一市場からの離脱は、英国とEUとの新たな貿易障壁を意味する可能性があるからだ。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のトニー・トレーバー教授(政治学)は、「メイ氏は自分のブレグジット政策がうまく機能するという信頼を醸成するために早い段階での勝利を必要としている」と述べた。
ホワイトハウス執務室のトランプ大統領(中央) PHOTO: EVAN VUCCI/ASSOCIATED PRESS
しかし、メイ首相がトランプ氏に取り入ろうとしているようにみえれば、同首相はEU指導者たちを一層怒らせるリスクを冒すことになる。トランプ氏は、EUの利点を否定し、昨年6月の英国民投票によるEU離脱を称賛しているからだ。EU指導者の中には、自らに対するポピュリスト的な反発に直面している指導者もいる。
また、協定について協議するメイ首相の裁量余地は、EUの規則によって制約されたままだ。同規則はEU加盟国が2国間協定で正式に交渉合意ないし批准するのを禁止しているからだ。それは、EUから正式に離脱するまで英国が順守しなければならない禁止条項だ。現在のところ、EU離脱は、通告2年後の2019年3月が目標とされている。
英国は過去数カ月間、貿易協定に関するEUの規則の限界を試してきた。メイ政権の貿易政策責任者のリアム・フォックス国際貿易担当相は、世界中を回り、将来の協定の可能性を「精査」してきた。オーストラリアなど旧来の同盟国のほか、急速に成長するアジアや中東の新興市場諸国との協定が可能かどうかだ。
米英間の項目別貿易収支
What the U.K. trades with the U.S.
The relationship represents $231 billion in total trade.
U.K. imports from the U.S., 2015
U.K. exports to the U.S., 2015
Goods
Services
Height of bar reflects total trade in billions of dollars
The U.K. imports $111.3 billion in total from the U.S. and exports $119.8 billion to the U.S.
What the U.K. trades with the U.S.
The relationship represents $231 billion in total trade.
U.K. imports from the U.S., 2015
U.K. exports to the U.S., 2015
Goods
Services
Height of bar reflects total trade in billions of dollars
The U.K. imports $111.3 billion in total from the U.S. and exports $119.8 billion to the U.S.
Trade Balance
これに対し、ブリュッセルのEU当局者は不快感を表明した。EUスポークスマンは23日、ジャンクロード・ユンケルEU委員長が昨年9月に表明した不満に改めて言及した。EU加盟国が独自に自由貿易協定で交渉しようとすることへの不満だ。
一部エコノミストによれば、英国が抱えるリスクは、他の協定をEU域外国とまとめようとする英政府に対する欧州側のいら立ちだ。それは英国のEU離脱と将来のEUとの関係をめぐる将来の交渉をまずくしかねないだろうという。
例えば、ロンドンのシンクタンク「欧州改革センター(CER)」の研究ディレクター、ジョン・スプリングフォード氏は「メイ氏がこの道(貿易協定模索)を行き過ぎれば、それは有害な雰囲気を生み出すだけだ」と述べた。CERは親EUだがEUの抜本的改革を提唱している。
一方、トランプ大統領にとっては、英国との協定は意義があるかもしれない。ロンドンのシンクタンク、レガタム・インスティチュートのシャンカー・シンガム氏が指摘するように協定で合意できれば、オバマ前大統領が推進した多国間貿易アプローチから脱却するというトランプ氏の戦略が成果を上げていることを示せるからだ。
トランプ大統領は23日、オバマ前政権が交渉し合意していた環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を正式に表明した。
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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwi9mNHuveHRAhXDi5QKHUpECHoQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11177354273695693774104582584111844883858&usg=AFQjCNEu_uwhOxCyAq85o7bXfCKSVptyNg
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/368.html