トヨタも屈した。トランプの「ヘイト政治」で世界秩序はどうなる?
http://www.mag2.com/p/news/233811
2017.01.11 まぐまぐニュース
いよいよ今月20日、米大統領に就任するトランプ氏ですが、1月6日にはトヨタによるメキシコ工場新設を批判すると共に「米国に輸入するなら高関税をかける」と警告するなど、SNSによる「お騒がせ発言」が止む気配はありません。これらを受け、メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、「トランプ氏は本気で保護貿易を行うつもりであり、世界は確実に大恐慌へと向かう」と分析、さらにこの機に乗じて世界覇権を取りに来る中国の動きと日本の取るべき対策についても記しています。
■世界秩序が変わる時に戦争が起きる
よもや、米国の指導者が法治を破棄して、中国と同じような人治主義者になるとは見通していなかったが、2017年の混乱の原因の多くが、米国発になることが確実である。その検討。
■トヨタなど海外企業にも介入
1月6日、トランプ次期大統領はツイッターで、トヨタがメキシコに新設するカローラの工場を批判して、米国輸入には関税35%が必要であると投稿。
このため、1月6日の株式市場では、自動車株が軒並み下落した。この介入により、トランプ大統領は、NAFTAの再交渉を行うことを示唆したことになる。
また、メキシコの国境に壁を作る予算を取る手続きをして、それを批判する記事に対して、米国が壁の費用を出すが、その費用はメキシコに請求すると述べている。選挙期間中に公約したことを実行するようである。
ということで、トランプ次期大統領は、公約実現に本気である。よって、保護貿易も行うことになる。中国からの輸入には関税45%であり、メキシコからの輸入には関税35%になる。
これは貿易戦争になり、世界経済を大幅に縮小させることは、1930年のストーム・ホーリー法で実験済であるので、確実に世界は大恐慌に向かう。もし実施したら、株価は1万円割れも起こり得る。
しかし多くの人達が、それでは米国も返り血を浴びる事になるので実行しないと言ってきたが、つい最近のツイッターの投稿を見ると、その期待はしない方が良いことがわかるはずである。
米国の製造業労働者は、工場が海外に移転せず、米国内に新設されて大きな利得を得るので、世界が大きな損をしても、特にメキシコや中国が大損をしても関心がない。というより、労働を取り戻しただけで、悪いことをしたとは思わないはずである。
しかし、まだ市場関係者、特にテクニカル分析に基づく評論家は、4ケ月後には2万4,000円まで行くと述べているし、まだ多くの評論家も米国経済は良くなっているので、経済的な観点からもしないと見ているようである。7月まではトランプ上昇相場が続くなどと述べている。
政治が経済に対して非常に大きいダメージを与えることを知らないのか?
この違いは、見ている目線が違うことから来る。あくまでもトランプ氏は、米国経済や米企業経営者ではなく、米製造業労働者だけの観点から見て、その人たちにとって良いことを行う政治をするのである。
早く、トランプ氏の異常な政治観点を見て、市場から回避しないと大損をすることになる。あらぬ期待をせずに日本企業の経営者も、真のトランプ氏の異常性を見るべきなのである。
見方によっては、北朝鮮の金正恩委員長と同じような視点の持ち主であると理解することである。
■北朝鮮に対して
その北朝鮮の金正恩委員長は、米国まで届くICBMが完成直前であると述べると、それに対してトランプ氏は、、「そんなことは起こらない」と断言した。
トランプ氏は、短期的な観点からしか事態を見ていない。新しい問題が起きると、それもそれだけを解決しようとする。長期的戦略的な視野がない。このため、金正恩委員長の脅しに対して、トランプ氏は、それを否定することで脅しを無効にしたのである。
金正恩委員長は、ブラフで世界を動かそうとするが、そのブラフに対して、より大きなブラフをトランプ氏は行うことになる。ブラフの応酬になる。このため、トランプ氏は自身の評価を左右するようなレッドライン(越えてはならない一線)を引いてしまったようである。
もし、ICBMの実験を北朝鮮がしたら、トランプ氏は暴発してしまう可能性がある。子ども同士が、言い合い後、引くに引けないでけんかになるのと同様な紛争になる可能性がある。
トランプを脅したことで最初の犠牲者は北朝鮮となるような気がする。北朝鮮が最初に血祭りに上げられる可能性も出てきた。
■世界秩序が変化する
ワシントン・ポストに「2017年新しい世界秩序」という記事が出ているが、この中で米国が世界の警察を止めるので、世界的な混乱が必至であるという。
イアン・ブレマーは、米国が孤立主義になると、中国が思いのほか早く世界覇権を確立するとしている。
ベンアミ氏は、米国は現実政治ではなく、理念政治になる。イアン・ブレマーもトランプ氏は、ケネディーに似ている。世界にかかわらず米国の理念を復活していくことになるという。
どちらにしても、米国がポジションを変えると、世界に混乱が起きることは間違いない。
今までの歴史を見ると、このような時、経済的に一番強い国が覇権を取る可能性が高い。とすると、中国が米国の代わりに世界の秩序を確立してくる。
この有料版で、経済的な発展がなくなったら戦争が起きるとしたが、まさに近々の問題になり始めてきた。世界秩序が変わる時、今までも多くの大戦争が起きている。戦争を起こさずに、平和的に世界秩序の変更ができるとは考えにくい。
このため、デュテルテ・フィリピン大統領は米国が頼りにならないと、さっさと中国とロシアとの同盟関係を構築し始めている。ベトナムも中国寄りにシフトさせ始めている。インドネシアも豪州との共同防衛を破棄して、中国寄りにシフトし始めた。東南アジアの米国離れが深刻化してきている。パク大統領退任後の選挙で選出される大統領になると、韓国も中国寄りにシフトする可能性が高い。
世界は、米国後を睨んだ動きをしている。
■日本はどうするか?
難しいのは日本の立場である。日本もロシアとの関係改善を図ろうとしている。しかし、中国との関係を改善するには、在日米軍を撤退させないと中国との関係は改善しないし、日本人の多くが中国より米国の方が良いと思っている。
中国軍が米国を脅かす軍に成長しているので、米国も自国防衛には前進基地が必要であり、その基地として日本は重要な存在なはずである。ということで、米国も自国防衛のために、日本との同盟を止めることはない。
日本には日米同盟を維持して、中国とは対峙していくしか選択肢がない。
しかし、在日米軍維持費を全額出せというトランプ氏の演説を日本は、駐留経費の75%を出していると反論して、納得してもらったようであるが、日本自体の防衛費が少ないと安全保障担当補佐官のフリン氏はクレームをつけている。
トランプ氏は、尖閣諸島などの無人島を中国軍が取ったような場面では米軍を出動させないから、日本は自主防衛力の増強を行う必要にもなっている。
米国は自国の防衛のために日本に駐留しているのであり、日本を守るために駐留しているわけではないために、日本の自衛力、特に最初に核ミサイルが飛んでくるので、その防衛をどうするのか、日本自体が考える必要にある。
ということで、日本の米国離れも必要なことになる。日本が防衛力を強化して、中国に対峙する必要になっている。中国は米国を抜くかも知れない軍事力を持つ可能性もある。心して準備が必要である。
益々、日本にとって難しい時代になってきた。
さあ、どうなりますか?
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『国際戦略コラム有料版』より一部抜粋
著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。