「日の丸原発」は誕生するのか? 日立、三菱重工、東芝が事業統合を模索するワケを探った!
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日立製作所と東芝、三菱重工業の原発メーカー3社が、発電に使う燃料事業の統合に向け交渉を進めている。3分の1ずつ出資する持ち株会社を設立し、傘下に各燃料会社を収める案を検討中で、今春にも実現する見通しだ。この統合が注目されているのは、事業規模が大きいからではない。これを機に、「本丸」である原子炉の統合に踏み込む可能性があるからだ。国内の原発新設が途絶え、事業環境が厳しさを増すなか、「日の丸原発」は実現するのか。
「(新設が見込めない以上)海外に活路を求めるしかない。それには国内産業の立て直しが急務だ」
経済産業省の幹部はそう力説する。同省は電力業界だけでなく、原発メーカーの再編も模索している。
国内では2011年の福島第一原発事故以降、原発新設がほとんど見込めない状況にある。原発メーカーは、既存施設の保守で食いつないでいるが、このままでは先細りになるのが目に見えている。
もともと日本以外に複数の原発メーカーを抱える国はほとんどない。しかも世界的大手といえるのは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏アレバ、06年に東芝子会社となった米ウエスチングハウス(WH)ぐらいだ。三菱重工の宮永俊一社長は「3社もあるのはしんどい」と認める。
しかもこの分野では、中国が国を挙げて海外進出を加速し、英国などで攻勢をかけている。ロシアや韓国も侮れない。日立の東原敏昭社長が「燃料だけでなく(原子炉も含む)全体を考えなければならない時期がくる」と語るように、メーカーも将来について論じることの必要は感じている。
ただ、再編にはいくつもの障害が待ち構えている。
最大の壁は、炉型の違いだ。原子炉には、大きく分けて加圧水型軽水炉(PWR)と沸騰水型軽水炉(BWR)がある。両者は発電タービンを回す蒸気の作り方が異なり、原子炉の中で直接、蒸気を発生させるBWRに対し、PWRは放射性物質を含まない2次冷却水を蒸気にする。
福島第1原発をはじめ、国内に多いBWRに対し、世界の原発は約7割がPWRを採用している。放射性物質を含む蒸気で発電するBWRを嫌う国が多いためだ。
日本メーカーは三菱重工がPWR、日立と東芝がBWRを採用している。東芝子会社のWHはPWRだ。三菱重工の宮永社長は「炉型が全然違うのでシナジーがない」と言い切る。
提携先の存在も再編を阻みそうだ。3社はWHを子会社に持つ東芝に限らず、すべて海外大手と組んでいる。三菱重工はアレバと中型炉を開発し、業績が悪化している同社に出資する方向で検討している。日立もGEと提携関係にある。日の丸連合を組むなら、提携先と調整し、関係を整理する必要がある。
14年に日立と三菱重工が火力発電関連事業を統合するなど、個別事業で組むことはあっても、基本的にはライバル同士の3社だ。総合電機メーカーの日立と東芝には、特にそれがあてはまる。日立の社員は「(同じBWRでも)東芝とは組んだことがないし、やりたくない。向こうも同じだろう」と本音をもらす。
国内は確かに厳しい状況にあるが、世界全体を見渡せば、原発市場は先細りどころか、有望とさえいえる。原発メーカーなどの関連企業で構成する日本原子力産業協会によると、16年1月時点で稼働している原発は世界に434基あり、ほかに建設中が74基、計画中が101基もある。国内の保守に加え、海外の新設案件をコンスタントに受注できれば、事業が行き詰まることはない。
このため、日本電機工業会の志賀重範会長(東芝会長)は「結論付ける時期なのか」と慎重姿勢を示す。
もっとも、メーカーが乗り気ではないからといって、再編の可能性がまったくないかというと、そうではない。ここにきて3社体制を揺るがしかねない事態が起こりつつあるからだ。
東芝は昨年12月27日、WHを通じて買収した米企業で想定外のコストが生じ、数千億円規模の減損損失が発生すると発表した。損失額によっては債務超過もちらつくなか、今後は金融機関に支援をあおぐ一方、不採算事業の整理や資産売却を加速することになる。原発は主力に位置づけているため、事業そのものを手放す可能性は低いが、経営存続を最優先するため“荒療治”の対象に加える可能性は否めない。そうなると、再編はぐっと現実味を帯びてくる。
もともと経産省が原発メーカーの再編を模索するようになったのは、福島第一事故による新設需要の停滞に加えて、14年に東芝の不正会計が発覚し、国内産業の維持に危機感を抱いたためだ。原発業界の行方を左右するという意味でも、東芝の再建からは目が離せない。(経済本部 井田通人)
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