不安しかない年金額を、最大42%もあっさり増せる現実的な裏ワザ
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2016.12.26 まぐまぐニュース
先日掲載の記事「 破綻している年金制度はやめちまえ!で本当に撤廃したらどうなる?」で、年金制度がなくなったら困るということは理解できましたが、満額支給されても生活費のわずかな足しにしかならないというのが年金の現状でもあります。しかし、この支給額を増やすことができるとしたら…?無料メルマガ『 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、「年金の繰り下げ」で支給額を増やす「裏ワザ」を教えて下さいました。
■これからの年金額に不安がある中で、こういう年金の増やし方もある
年金が上がりにくくなり、また、年金保険料を支払った期間が短いとかだとその分低額になってしまう年金。なんだか最近不安になりそうなニュースが続きましたよね。
これからちゃんと保険料を納める事でしか年金は増やせないのかというと…そういうわけでもありません。年金を貰えるんだけど、わざと年金を貰うのを遅らせればその分年金が勝手に増えていく方法もあります。ただ、利用者は少ないですね(^^;;
というわけで、年金を貰うのを遅らせて勝手に増える方法(以下、「年金の繰り下げ」といいます)をやると一体どのくらい増えるのか?
結論から言えば65歳から1ヶ月遅らせる毎に0.7%ずつ増えていき、最大60ヶ月遅らせると42%増えます。だから70歳まで遅らせれば42%増える。
※注意
65歳後に初めて老齢年金の受給権を獲得したら、その日から5年間繰り下げが可能。だから、68歳で受給権を獲得したら73歳までOK。
ア. 昭和26年12月21日生まれの男性(65歳。実際に歳を取るのは誕生日の前日である20日になる)。
この人は厚生年金期間が1年以上あり、年金を貰うための全体の年金保険料納付済期間+年金保険料免除期間+カラ期間≧25年以上あるものとします(来年8月からは10年に短縮)。
カラ期間についてはこちらを。
● 諦めるなかれ。年金を25年納めなくても貰える「カラ期間」とはカラ期間とは?
この人は60歳から老齢厚生年金(65歳前から支給される厚生年金を特別支給の老齢厚生年金という)を年額120万円貰っていました。65歳からは75万円の老齢基礎年金が支給される予定。
65歳前までは偶数月に20万円の年金を貰いながら、他に今まで貯めた貯蓄があり、70歳くらいまでは貯蓄も取り崩しながら生活資金としてはやや余裕ありの見通し。で、今回65歳を迎える事になり、65歳以降も年金を貰うには再度年金請求をしないといけません。65歳以降は老齢厚生年金と老齢基礎年金を貰うための請求をしなければならないわけです。
請求といってもハガキタイプの簡単な様式の請求書が送られてくるのでそれをちゃちゃっと書いて月末までに返送するだけ。65歳誕生月の初旬までには送られてきます(その月の1日生まれの人は前月の初旬あたりに送付になるので注意。なぜなら1日生まれの人は前月の31日とかに歳を取るので誕生月が異なってくるから)。
で、この時のハガキタイプの年金請求書に、「年金を貰うのを遅らせますか?」という意思表示する部分があるんですね(^^;; 繰り下げ希望って書いてるんですが。
というわけで、この男性はしばらくは貯蓄で暮らそうと年金請求書を出すのはやめました。
※注意
老齢厚生年金または、老齢基礎年金どちらか一方を繰り下げる場合は繰り下げたい年金にマルをつけて年金機構に返送してください。両方繰り下げる場合は、ハガキは出さない。
で、どうなるか。1ヶ月遅らせるごとに0.7%年金が増えていきます。70歳まで遅らせるとすれば、60ヶ月遅らせる事になるから、60ヶ月×0.7%=42%増額。よって、
・老齢厚生年金なら120万円+(120万円×42%)=120円+50万4,000円=170万4,000円。
・老齢基礎年金は75万円+(75万円×42%)=75万円+31万5,000円=106万5,000円。
年金総額は老齢厚生年金170万4,000円+老齢基礎年金106万5,000円=276万9,000円になります。
年金の支給は繰り下げの申し出をした月の翌月から。70歳を既に過ぎている場合は、70歳時点まで遡って支給されます。ただし、5年の時効があるので75歳までには請求しましょう。5年を超える分から年金が貰えなくなってしまいます。なお、70歳時点まで遡れるように法律が変わったのは平成26年4月からだからそれより前までは遡れない。
65歳からは老齢厚生年金120万円+老齢基礎年金75万円=195万円でしたが、たった5年間年金を貰わないだけで80万円くらい年金がアップしました。
老齢厚生年金は5年遅らせただけで50万4,000円増額しましたが、老齢厚生年金を50万くらい増やそうとしたらかなり加入しないといけないですね。
例えば平均給与40万円くらいだった人なら、ザックリ計算してみると40万円÷1,000×5.481×229ヶ月=50万2,057円になるから、40万円くらいの給与貰っている人が229ヶ月(約19年間)も厚生年金加入しないと50万くらいの老齢厚生年金にならないのに、5年遅らせただけで軽く増やす事が出来ました(^^;;
老齢基礎年金は31万5,000円増えてますが、31万5,000円の老齢基礎年金を貰うなら普通は194ヶ月(老齢基礎年金満額78万100円÷480ヶ月×194ヶ月(約16年)=31万5,290円)の国民年金保険料を納めないといけません。
もし、65歳以降に別に年金貰わなくても生活資金的に余裕があるとか、健康に自信があるという人はやってみる価値はある方法ですね。
ちなみに、65歳前から貰う特別支給の老齢厚生年金は遅らせても増額はしないので、支給開始年齢になったら素早く請求して年金貰ってくださいね!あくまで65歳後に新たに支給される、老齢厚生年金と老齢基礎年金の請求を遅らせて、貰うのをしばらくやめておくという事です。
なお、1ヶ月遅らせるごとに0.7%増えてはいきますが、最低でも66歳に到達する日まで待たないと増額した年金を申し出る事はできません。例えば65歳10ヶ月で、10ヶ月増額分(7%増えた年金)を貰うというのはできないわけです。
さて、繰り下げた年金をもらう場合と、普通に65歳から年金を貰う場合とではどこで支給総額が逆転するのかという疑問もよく持たれます。総額が逆転するのは11年10ヶ月を過ぎてから。つまり、65歳から貰う年金を70歳まで繰り下げて、70歳から年金もらい始めたら、81歳10ヶ月過ぎれば65歳から年金をもらう場合よりも得をしていく事になります。
この11年10ヶ月は別に70歳から貰わなくても、66歳とか68歳とかその辺で繰り下げても同じ年数で総額が逆転します。70歳から繰り下げするなら、81歳10ヶ月は生きないと65歳から貰うよりは総額で劣る事になるわけですねー。
まあ、今は80歳以上長生きされる人がものすごく多いので、自分は長生き出来る!! と自信があるのであれば検討してみてください。
あと、年金を貰うのを遅らせてたけど、やっぱり65歳から貰いたい場合は今まで貰ってなかった年金が65歳に遡って年金が一時金として支払われます。一時金として支払われますが、税金としては一時所得ではなく、その年その年に支払われていたであろう年金額が雑所得になります。よって、源泉徴収票も年分送付されてきます。
また、年金を貰うのを遅らせてる最中に亡くなられた場合は65歳から亡くなるまで貰わなかった年金が遡って、遺族の請求により未支給年金として支払われます。
●未支給年金(日本年金機構)
※追記
年金の繰り下げ最中に、遺族年金の受給権を得たり、障害年金の受給権を得た場合はその時点で老齢年金の繰り下げ増額は不可になります。65歳以降に初めて障害年金の受給権を得るというのはかなり稀ですが(^^;;
よって遺族年金や障害年金の受給権を得た時点まで増額させた老齢年金を受け取るか、または、65歳時点に遡って老齢年金を一時金として受け取るか選択する必要があります。
なお、65歳時点で既に遺族年金や障害年金の受給権を持っている人は繰り下げ不可です。過去に一度でも障害年金2級以上に該当し、例えば障害基礎年金が3級に該当して年金が停止の状態でも、障害年金の受給権者である事は変わらないので繰り下げが不可。あと、3級にすら該当しなくなって65歳時点で3年を経過していない場合も、65歳時点で障害年金の受給権者だから繰り下げは不可。
ただし、障害基礎年金のみの受給権者は老齢厚生年金は繰り下げる事が出来ます。
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『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』
年金は国民全員にとってとても身近なものであるにもかかわらず、なかなかわかりづらくてなんだか難しそうなイメージではありますが、老齢年金・遺族年金・障害年金、その他年金に関する知っておくべき周辺知識をご紹介します!