一部ヘッジファンド、株価下落の読み外れ大打撃
今年の株価下落に賭けたヘッジファンドは予想が裏目に出た。写真はフランクフルトの証券取引所近くにある雄牛(ブル)と熊(ベア)のブロンズ像)
By LAURENCE FLETCHER
2016 年 12 月 22 日 17:26 JST
大手ヘッジファンドの一部は今年初め、株式市場は大幅に下落すると予想していた。だがその予想は大外れとなった。
株価下落に賭ける空売りは、金融危機のさなかにヘッジファンドに多大な利益をもたらした。だが、米大統領選、マイナス金利、中銀の景気刺激策に触発された低位株への資金流入によって株式相場は反発し、一部の著名ファンドが痛手を被った。
ホースマン・キャピタル・マネジメントのラッセル・クラーク氏もその一人。昨年はヘッジファンドマネジャーで世界トップクラスの運用成績を上げ、最大規模の空売りを仕掛けていた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認したところによると、同氏は1月、投資家宛ての書簡で、自身の弱気スタンスはデフレ懸念を根拠にしていると説明した。デフレは通常、株価にとって悪材料となる。同氏は米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長について、映画「スター・ウォーズ」の悪役「ダース・ベイダー」の姿をしたデフレと闘う、主人公「ルーク・スカイウォーカー」だと表現した。
デフレーション・ベイダーはイエレン・スカイウォーカーに、インフレ率を押し上げようとすればするほど「影の部分(デフレ)が力を増す」と告げたという。
直近の投資家宛て書簡によると、クラーク氏は今年、17億ドル(約2000億円)のポートフォリオで、不動産、自動車、航空会社の各セクターの株価下落に賭けるポジションを大幅に増やした。
この賭けは散々な結果に終わった。WSJが確認した投資家向けデータによると、ホースマンの旗艦ファンド「ホースマン・グローバル・ファンド」の11月までのリターンはマイナス18%と、世界最悪に近いパフォーマンスとなった。11月単月でもマイナス12.8%だった。ドナルド・トランプ氏が米大統領選で予想外に勝利し、株価が急伸したことが響いた。ホースマンはコメントの要請に応じていない。クラーク氏は投資家宛ての書簡で、自身のポジション取りやアイデアは「孤独」に感じたが、中国の危機と株価下落が近づいていたと説明した。
書簡によると、ホースマンではこのほか、クラーク氏の同僚で今年を通じて大きなショートポジションを取っていたスティーブン・ロバーツ氏が運営する10億ドル規模の「ホースマン・ヨーロピアン・セレクト」の年初来リターンがマイナス40%となり、ファンドの規模が3億4000万ドルに縮小した。
これだけではない。クリスピン・オデイ氏率いるオデイ・アセット・マネジメントは投資家に、ファンド「オデイ・ヨーロピアン」の資産価値が48%減少したと伝えた。株価下落に賭けたことが主な理由。英タロー・オイルや英鉱業大手アングロ・アメリカンなどの株価下落に賭けたことが特に響いた。同氏は昨年、主要株式市場で相場が40%下落すると予想していた。オデイはコメントの要請に応じていない。
モルガン・スタンレーのアナリストによると、ヘッジファンドが11月にショートポジションで被った損失は、月間の損失としては2010年以降で2番目の大きさだった。
またマークイットによると、2月にはヘッジファンドによる米国株のショート・ポジションが10年以降で最大に達した。
スイスの資産運用会社GAMのポートフォリオマネジャー、アンソニー・ローラー氏は、今年の初めには世界の経済成長に勢いが見られなかったため、株式が2桁のリターンをもたらすなどと誰も考えていなかったと述べた。GAMは1191億スイスフラン相当の資産を運用している。
運用マネジャーは、空売りが不発に終わった理由としてさまざまな要因を挙げている。共通しているのは、ユーロ圏、日本、英国の量的緩和に対する不満だ。景気刺激策は、空売り筋が当てにしている、パフォーマンスの良い銘柄と悪い銘柄の差を縮小させると説明している。
超低金利やマイナス金利もヘッジファンドに逆風となる。空売り筋は株を借りて市場で売り、現金を手にする。かつてはこの現金が大きな利益を生み出していたが、今や利益を生まないばかりか、逆に負担となっている。
アバディーン・アセット・マネジメントのピーター・ワスコ氏は「空売りは難しくなっている」と指摘した。アバディーンのヘッジファンドの運用資産は約110億ドル。同氏は、ヘッジファンドが増やした資産価値の大部分は株の空売りではなく株の購入によるものだとし、ここ2年ほどは空売り投資家にとってたいへん良かった年はないと述べた。
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米景気先行き信頼感、12年以来の高水準
17日にアラバマ州モービルで開いた集会で演説するドナルド・トランプ次期米大統領 ENLARGE
17日にアラバマ州モービルで開いた集会で演説するドナルド・トランプ次期米大統領 PHOTO: BRYNN ANDERSON/ASSOCIATED PRESS
By NICK TIMIRAOS
2016 年 12 月 22 日 13:31 JST
米国では米大統領選でのドナルド・トランプ氏の当選を受けて、景気の先行きに対する信頼感が2012年以来の高水準に達している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCテレビの最新の世論調査で明らかになった。
それによると、来年景気が「好転すると思う」と回答したのは全体の約42%に達し、「悪化すると思う」と答えたのは19%だった。これほど楽観的な見方が多かったのは12年10月以来で、当時、「好転する」は45%、「悪化する」はわずか9%だった。
1年前の調査では「好転する」と「悪化する」がともに24%だった。
今回の調査結果は、景況感に関するその他の指標と一致する。企業の最高経営責任者(CEO)を対象とした調査では、トランプ氏の政策について楽観的な声が聞かれた。エコノミストらは、リセッション(景気後退)のリスクはやや低いとみている。
WSJとNBCの調査では、景気見通しの改善は、大統領選後に共和党陣営が活気づいていることによるところが大きい。共和党有権者の約68%が来年は景気が好転すると予想しており、悪化すると予想しているのは6%にとどまった。昨年、「好転する」と答えたのはわずか14%で、「悪化する」は34%だった。
無党派層でも、「好転する」が「悪化する」を22ポイント上回った。昨年は「悪化する」が「好転する」を15ポイント上回っていた。
所得別では、総じてどの所得層も来年景気が好転するとみているが、5万ドル以上の場合は楽観的な傾向が強まる。性別では、男性の方が女性よりも景気先行きを楽観している。
人種別では結果が大きく異なった。白人の場合は、「好転する」が「悪化する」を34ポイント上回ったのに対し、黒人の場合は、「悪化する」が「好転する」を8ポイント上回った。
今回の調査は、12月12〜15日に成人1000人を対象に電話で行われた。
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米地方債投資、税制改革の影響はいかに
米連邦議会議事堂(ワシントン) PHOTO: BLOOMBERG NEWS
By
LAURA SAUNDERS
2016 年 12 月 22 日 16:02 JST 更新
米地方債の投資家は過去30年ほどの間、税優遇措置を享受してきた。だがこうした利点が劇的に縮小する可能性が浮上してきた。
ドナルド・トランプ次期大統領と米下院共和党は、投資からの金利収入のうち課税対象への税率を引き下げることを提案している。それが実現すれば現在非課税の地方債の利点は減り、場合によっては投資の意味がなくなってしまうような影響を及ぼすことになりそうだ。
最も急進的な提案は、ポール・ライアン下院議長(ウィスコンシン州)率いる下院共和党と、ケビン・ブレイディ下院歳入委員会委員長(テキサス州)によるもので、10年物国債や社債など現在課税されている債券の最高税率を、現行の43.4%から16.5%へと6割以上引き下げるとしている。
課税対象の年利5%の債券に投資すると仮定すると、この金利に対する連邦税は現在1ドルにつき最大0.434ドル。最高税率が引き下げられれば、投資家の手取り分が増えることになる。
現在は無税の地方債が課税されるようになれば、5%の金利は各改正案によってこのように変化する
https://si.wsj.net/public/resources/images/BF-AM773_TAXREP_16U_20161216100907.jpg
一方、非課税の地方債は非課税のままで、最高税率引き下げの恩恵はない。つまり投資家にとって地方債の魅力は低下して値下がりする可能性がある。
税務戦略を手掛けるトウェンティファースト証券(ニューヨーク)のロバート・ゴードン社長は「地方債の計算は変わろうとしている。免税であることの価値は下がる。ただ、どの程度かは分からない」と述べた。
変化が最も小幅で支持が最大なのは、金利収入、配当収入、キャピタルゲイン(売却益)などの純投資収益にかかる3.8%の付加税を廃止するというもの。付加税は所得が夫婦世帯で25万ドル以上、単身者で20万ドル以上の場合に課されており、トランプ氏と米議会の多くの議員が廃止を求めている。
付加税が廃止されれば、課税債の最高税率は現行の43.4%から39.6%に低下する。メリット・リサーチ・サービシズ(シカゴ)の社長兼最高経営責任者(CEO)で地方債専門家のリチャード・シカロン氏によると、他の条件が同じと仮定すれば、最高税率が適用される投資家に同等のリターンをもたらすためには、指標となる10年物地方債の利回りは現行の2.37%から2.55%に上昇する必要がある。
別の提案でトランプ氏は、賃金など「通常の」収入の最高税率を現行の39.6%から33%に引き下げることを求めている。付加税の廃止と共に実現すれば、シカロン氏によると、同じ金利収入を得るために指標となる10年物地方債の利回りは2.80%程度にまで上昇する必要がある。ゴードン氏によると、他の市場環境に変化がなければ、1万ドルの投資の価値は9627ドルに縮小する見通し。
3つ目の、最も混乱を招きそうな提案は、下院共和党の税制改革案だ。これは金利収入に現在税優遇措置の対象となっている長期投資のキャピタルゲインと同じ恩恵を与えるというものだ。金利収入に通常の所得と同じ税率を適用するという長年続いてきた慣行が変わることになる。
この提案での最高税率は16.5%。シカロン氏によると、この場合、最高税率が適用される投資家に同等のリターンをもたらすためには、現行2.37%の地方債利回りが3.50%に上昇する必要がある。
1986年の税制改革で金利収入の最高税率を50%から28%に引き下げて以降、地方債はこうした大掛かりな改革に直面したことがなかった。
16.5%の最高税率が個人投資家に適用される可能性はどの程度あるだろうか。税制専門家は、この税率は企業の支払う金利に対する控除を認めない包括的な提案の一部だと指摘する。これは控除の恩恵を失いたくない高レバレッジ企業の反発が強いだろうと、ワシントンを拠点とするタックス基金のアラン・コール氏は予想する。
ウェルズ・ファーゴ証券の地方債調査責任者、ナタリー・コーエン氏は、税制改革前には売却・購入とも注意が必要だと指摘している。地方債は安全な投資先であるとの認識など、金利以外の要因の影響があるためだ。
同氏は「税制改革はまだ分からないことばかりだ」と語った。