世界の金融財政政策、予想される変化
ドナルド・トランプ氏が次期大統領に決まったことで世界の市場が織り込んでいたさまざまな前提が打ち砕かれた
By RICHARD BARLEY
2016 年 11 月 14 日 12:00 JST
米大統領選で共和党ドナルド・トランプ氏が勝利したことによって世界の市場が織り込んでいたさまざまな前提が打ち砕かれた。金融刺激策から財政てこ入れへの転換、自由貿易、グローバル化の反転といったさまざまな面での変化が予想され、投資家の抱いていた確信のほぼ全てが覆されている。
その結果、投資家はインフレ急伸を予想している。しかし、最大の変化は世界各国・地域の経済成長と景気てこ入れ策に違いが戻ってくることかもしれない。
債券市場には既にこうしたシフトが垣間見えていたが、トランプ氏が次の大統領に決まったことで無視できなくなった。利回り曲線のスティープ化(米国債2年物と10年物の利回り格差は1月以降で最大に拡大している)と、利回りの上昇は持続する公算が大きい。
今年上半期、世界の経済政策は驚くほど均一だった。利上げ見通しが強まると、その国の通貨が上昇しインフレ期待が押し下げられてきたことから、先進国の利回りはゼロ%付近にとどまっていた。財政政策についても大いにうわさされてきたが、実現を予想する向きはほとんどいなかった。市場では、特に為替ヘッジベースで世界の利回りが収束した。だが、JPモルガン・アセット・マネジメントによると、状況は一変した。
米国のこうした変化は、経済成長加速とインフレ高進の予想が高まっていることを反映している。そのため、米国のポリシーミックス予想は、緩和的財政政策と、インフレ高進の場合の金融政策引き締め可能性に傾いている。英国ではブレグジット(欧州連合離脱)による潜在成長率への影響を巡る不透明感を受けてポンドが急落したことから、政策の変更は現在、全てインフレ次第となっている。英国に財政拡大を実施する政治的・財政的余地があるかどうかは不透明だ。従って、英金融政策は現時点では緩和が維持されるだろうが、これ以上の緩和はないかもしれない。
ユーロ圏の利回り上昇の主因は域外での利上げで、いまだ脆弱(ぜいじゃく)な経済成長を脅かす可能性もある。ドイツと、イタリアやポルトガルといった諸国間の利回り格差の拡大が主な懸念だ。ますます効果の薄れる金融政策からのスラック(緩み)を吸収するための財政政策の必要性についてはほぼ常に話題に上っているが、ユーロ圏の規定のために大幅な変更は期待しがたい。
一方、日本はその正反対で、日銀が利回り曲線へ照準を移したことは、金融緩和と財政出動がともに一段と進む可能性を示している。
今後の政策はかなり不透明だ。市場は現在、過剰反応している可能性がある。しかしそれでも、世界の中銀が市場寄りの同じセリフを口にし、政府が受け身だった時期が過ぎ去った後、高まるリスクを反映して利回りが上昇することが十分考えられる。これまでの前提を捨て去る時だ。
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上海経済特区の一部である洋山深水港に停泊する巨大コンテナ船 PHOTO: ALY SONG/REUTERS
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JOHN LYONS
2016 年 11 月 14 日 14:31 JST
【香港】米国のドナルド・トランプ次期大統領は中国に懲罰的な関税を課すと約束したが、これは米国の同盟国である日本と韓国に打撃を与えるだろう。日韓は共に中国市場への依存度をますます高めてきたからだ。
トランプ氏は、中国が鉄鋼業などへの補助金支給といった慣行を見直さない限り同国からの全ての輸入に45%の関税を課すほか、環太平洋経済連携協定(TPP)から撤退すると宣言。オバマ大統領が11日、選挙後の会期中に議会承認を取り付けるのを断念したことで、TPPは実質的な廃案に追い込まれた。
15年にわたる高度成長の間に、中国は幅広い国・地域にとって最大の輸出先になってきた。韓国などの製造業者、ブラジルなどのコモディティー(商品)生産者にとって、中国は米国を超える世界最大の市場になったのだ。中国は関税による打撃で成長ペースが鈍化すれば輸入を減らすため、貿易パートナーの成長も鈍化するだろう。
米国による中国への関税、その行く末は・・・
中国のGDP成長率が1ポイント低下した場合に各国・地域が受けると予想される打撃
https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AR613B_ASIAT_16U_20161111061509.jpg
つまり、これはトランプ氏と同氏の側近が検討している、あらゆる通商政策のリスクを高めているのだ。国際通貨基金(IMF)によると、過去15年間、世界成長の3分の1を中国による貢献が占めてきた。近ごろは中国の輸入が鈍化してきたが、それでも同国は2015年に世界の輸出の9%を購入した。この割合は2000年の3倍に達する。
慶応義塾大学の渡邊頼純教授は、中国に対する報復的な保護貿易が国際貿易秩序を揺るがすだろうと指摘し、日本だけでなく、あらゆる国・地域にとって良いことにはならないと述べた。
大和証券の推計によると、中国からのモノの輸入に15%の関税を課すだけで、同国の成長率を1ポイント押し下げることが見込まれるという。今年IMFの研究者らが試算したように、これは世界経済の成長を0.25ポイント押し下げるのに十分だろう。
最も大きな打撃を受けると見込まれるのが日本や韓国、台湾だ。これらの国・地域は中国の消費者にモノを輸出しているだけではなく、アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」が中国で組み立てられているように、国際的に拡大するサプライチェーン(供給網)の大部分を形成しているからだ。
HSBCが最近行った、米国と中国の生産がそれぞれ1ポイント上がった場合にアジア地域に与える影響を比較した調査によると、2006年以降、アジア経済は米国よりも中国の変化により敏感になってきた。
中国に向けられたものであっても、米国における保護主義の台頭は韓国に打撃を与えるだろう。IMFの研究者らが今月発表した論文では、中国経済の成長率が1ポイント低下するごとに韓国経済の成長ペースは0.5ポイント低くなると試算されている。
日本も多方面のリスクに直面している。日本政府は米国市場へのアクセスを高め、長期低迷から抜け出す方策としてTPPを頼みにしてきた。
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江蘇省で鋼管の引き上げ作業を行う作業員ら(11月) PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
韓国と同様、日本にとっても中国は主要な輸出先だ。トランプ氏が計画通り北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に臨めば、トヨタ自動車や日産自動車など高度なグローバル生産体制を整えた自動車メーカーは大きな打撃を受けるだろう。日本の自動車メーカーの多くは米国向け輸出車の組み立てをメキシコで行っている。
さらに、米国の政策変化によって引き起こされる不安感が安全通貨である円相場を押し上げると、日本の輸出が一段と浸食される可能性すらある。
トランプ氏が選挙運動中に主張してきたレトリックが、どれほど現実の政策になるかは不透明だ。ただ、多くのオブザーバーが指摘してきたように、トランプ氏は交渉における譲歩を少なくするため、関税を大幅に引き上げるという脅しを使っているだけなのかもしれない。
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次期米大統領の中国政策、貿易戦争の引き金か 為替操作国に認定すれば新たな火種に
中国・金華市の国際貿易センター内で次期米大統領に決まったトランプ候補の選挙応援グッズを手にするショップ経営者
By IAN TALLEY
2016 年 11 月 14 日 06:56 JST
【ワシントン】次期米大統領に決まったドナルド・トランプ氏は、就任初日に中国を為替操作国に認定すると選挙運動中に約束していた。これにより、中国製品に輸入関税を課す可能性が高まり、米中関係の新たな火種となることが予想されている。
同氏が繰り返しこうした脅しをかけてきたことは、中国との貿易戦争の引き金となる恐れがあり、数々の戦略的・経済的問題をめぐる両国の交渉を一段と複雑にしかねない。また、中国製品を輸入する米企業がこれに反発し、法的手段に出る可能性もある。
トランプ氏が行った数多くの約束の中でも、中国の為替政策への制裁措置は最も明確な政策の1つであり、10月後半にペンシルベニア州ゲティスバーグの演説で発表した「就任100日行動計画」にも含まれていた。
為替操作国の認定そのものに実質的な効力はほとんどない。ただ、貿易相手国に一方的な制裁措置を加える大統領の幅広い権限を認める他の法律と併用すれば、約束した通りに中国からの輸入品に高率の関税を課すことを正当化できるかもしれない。
米通商代表部の元弁護士で現在はジョージタウン大教授のマイケル・ガドボウ氏は「トランプ氏は貿易に介入する大きな法的権限をもっている」と指摘する。
例えば1974年通商法に基づき、「これは貿易に対する不合理で不当な制限だと判断し、その権限を用いて中国に関税を課すことが可能だ」という。
人民元相場を何年も安値に抑えてきた中国当局だが、最近の景気減速で元安圧力が強まり、外貨準備を1兆ドル近く投じ元を買い支えている(写真は各国通貨の紙幣をあしらった香港のディスプレー) ENLARGE
人民元相場を何年も安値に抑えてきた中国当局だが、最近の景気減速で元安圧力が強まり、外貨準備を1兆ドル近く投じ元を買い支えている(写真は各国通貨の紙幣をあしらった香港のディスプレー) PHOTO: ANTHONY WALLACE/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
「為替操作国のレッテルは不適切」
中国が輸出で競合国より優位に立つため、人民元相場を10年以上人為的に安く抑えてきたことは、専門家の間でもほとんど異論がない。この通貨安政策のおかげで中国は世界2位の経済大国にのし上がり、米国や他国の製造業が犠牲になった側面がある。
しかしここ2年ほどは元が強い下落圧力に直面し、中国当局は外貨準備を1兆ドル(約107兆円)近く投じて元を買い支えている。
中国の景気急減速が前例のない資金流出を引き起こし、元安に歯止めが掛からない状況となっているからだ。
ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローでかねて中国の為替政策への制裁強化を訴えてきたフレッド・バーグステン氏は「この2年間は中国が為替操作を行っていないという事実がある」とし、「現時点で同国に為替操作国のレッテルを貼るのは非常に不適切であり、不正確だろう」と述べた。
それでもトランプ氏は中国から貿易を巡る譲歩を引き出す戦略の一環として、来年4月に米財務省が半年に1度の「為替報告書」を公表する機会をとらえ、中国に非難を浴びせる可能性がある。
英シンクタンク「オックスフォード・エコノミクス」の米国マクロ経済責任者、グレゴリー・ダコ氏は、トランプ氏が選挙期間中にたびたび発言していた中国に45%の貿易関税を課すという主張からは後退すると見ているが、より的を絞った限定的な保護主義的措置をちらつかせて圧力をかける可能性がある。
中国財務省と商務省に、トランプ氏の率いる米国がより保護主義的になる可能性や、中国を為替操作国と認定する可能性について質問したが、返答はなかった。外務省の陸慷報道官は10日、次期米政権の対中政策について見極めるために待機していると語った。
中国側の報復も
一方、中国の輸出業者やエコノミストは、中国側の反発が米企業に及ぶことを警告した。香港中文大学の劉遵義教授(経済学)は「本当に45%の関税が実施されたら、ボーイングは今後中国で1機も航空機を売れないと思う」と語った。
投資家やアナリスト、エコノミストは、トランプ氏の大統領就任後の政策が、選挙戦での誇張したレトリックと一致するのかどうか確信が持てないでいる。トランプ氏が世界最大の経済国を率いる責任の重さを感じ、ホワイトハウスに入ると同時に、最も物議を醸した政策提案をより穏当なものに修正するのではないかと期待する向きは多い。
多くの専門家は、たとえトランプ氏の貿易制裁が一時的なものであっても、中国は同じやり方で対抗すると見ている。国際通貨基金(IMF)が10月に公表した最新の「世界経済見通し」で、世界的な保護主義の台頭に警鐘を鳴らし、今後数年間で世界の国内総生産(GDP)を1.5%以上押し下げる可能性があると指摘した理由の1つはそこにある。
戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア専門家であるマシュー・グッドマン氏は「中国はおそらく報復するだろう。それはわれわれにとって問題だ」と述べた。
貿易戦争の波及効果に加え、懲罰的な関税を課すことにより、多くの問題ですでに緊張が高まる米中の外交関係をさらに危険にさらしかねない。
米政府は2国間投資協定などを通じて米企業の中国市場へのアクセスを拡大しようと努めてきた。また、世界市場を圧迫する中国の過剰生産能力を縮小するよう中国政府に働きかけてきた。
深刻化するサイバー攻撃や北朝鮮の核兵器開発阻止に対する中国の消極的な姿勢、南シナ海の領有権争いなどを巡っても米中両国は神経をとがらせている。
さらに国内でも、世界的なサプライチェーンの一環として中国製品に依存しているアップルなどの米企業との法廷闘争に巻き込まれる恐れがある。
米大統領選特集
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トランプ次期米大統領が覆す貿易政策
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中国は「トランプ大統領」で本当に得をするのか
欧州ポピュリズムと経済、「トランプ旋風」との違いとは
フランスの世論調査では、来年の大統領選を控え、ルペン国民戦線(FN)党首(写真)が優勢だ PHOTO: JEAN-PAUL PELISSIER/REUTERS
By SIMON NIXON
2016 年 11 月 14 日 16:59 JST
欧州の反体制派の政治家は、米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利に興奮を抑えきれずにいる。フランスのマリーヌ・ルペン国民戦線(FN)党首からハンガリーのオルバン首相、英国のナイジェル・ファラージュ独立党(UKIP)党首に至るまで、反体制派勢力はトランプ氏の勝利を、移民流入や自由貿易に長らく反対してきた自らの姿勢が正しいことを立証するものとして歓迎している。欧州にとって、これからの一年間は政治的試練のときだ。12月のオーストリア大統領選、憲法改正の是非を問うイタリアの国民投票を皮切りに、2017年にはオランダ、フランス、ドイツで総選挙が予定されており、欧州のポピュリスト(大衆迎合主義)政党は今こそトランプ旋風に乗じて選挙で勝利する好機だと考えている。
だが、米国と欧州の状況には決定的な違いがある。市場は、米国においてトランプ氏の勝利が経済戦略の転換への道を開く公算が大きいとみている。先週は大統領選の結果を受けて株高と債券安が進んだ。法人税の引き下げ、規制緩和、インフラ投資の拡大といったトランプ氏の公約する政策が企業利益やインフレを押し上げ、連邦準備制度理事会(FRB)にのしかかる圧力をいくらか和らげるとの見方が広がったからだ。そうなれば、FRBはこれまでの予想よりも早期で速いペースの利上げに動くかもしれない。
他方、ユーロ圏では、ポピュリスト政党が選挙で勝利したとしても、それが各国の経済政策が大きく変わるきっかけになるとは現時点では考えにくい。むしろ、欧州中央銀行(ECB)への圧力が一段と強まることが予想され、場合によってはECBが耐えられなくなる可能性もある。
その理由の一つは、財政規則が定められているユーロ圏では加盟国が大幅に財政政策を変える余地はほとんどないことだ。ユーロ圏諸国の大半が依然として財政赤字と債務の削減を求められている。財政出動を拡大する余裕のある国は、最もその必要がない国だ。その筆頭であるドイツでは、失業率は6%を下回っており、賃金上昇がインフレにつながる兆しが表れ始めている。
一方、域内でスラック(余剰資源)が特に大きく、甚大なデフレリスクにさらされているイタリアやポルトガルなどは、財政出動の余地が最も小さい。欧州連合(EU)の域内投資計画(通称「ユンケルプラン」)は今のところ、経済成長への影響がほとんど見受けられない。
ポピュリスト政党が躍進すれば、各国政府による経済成長てこ入れに向けた改革の実施や、ユーロ圏のガバナンス(統治)改革を巡る合意形成がいっそう難しくなる公算が大きい。大半のエコノミストは、域内の金融安定確保にはガバナンス改革が不可欠とみる。
実際、ユーロ圏の統合深化への機運は後退しつつあるようだ。反ユーロの圧力が高まる中、加盟国の間では統合に逆行する動きが相次いでいる。例えば、オランダでは、30万人の署名を集めれば、EU関連のどんな法律であれ国民投票にかけることができるようになった。同国は既にこの制度を利用し、EUとウクライナの連合協定を国民投票で否決している。ベルギーでも10月、EUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)について、南部のワロン地域が一時、協定調印に反対した。
今のところ、ECBの緩和政策のおかげでユーロ圏諸国は厳しい判断を免れている。だが、トランプ氏が勝利する前でさえ、ECBは債券買い入れ策をどう維持していくべきか難しい対応を迫られていた。自らが定めた厳しい規則を変更しない限り、買い入れ対象となる適格債券が近いうちに枯渇する可能性が高まってきたからだ。最近の利回り上昇で債券不足の懸念は後退したとはいえ、ECBは世界の不確実性が高まる中、将来のショックへの対応手段を備えていることを市場に納得させる必要があることを分かっている。また、可能な選択肢はどれも政治や法律、実務上のタブーを破ることになり、ドイツ政府から反発を受ける可能性が高まることも認識している。
同時に、ユーロ圏は域内の結束が試されかねない喫緊の難題を幾つも抱えている。ギリシャの債務減免を巡り、同国政府、ドイツ政府、国際通貨基金(IMF)の間で協議が暗礁に乗りあげており、解決の兆しは全く見えない。政府関係者らは、債務減免が実現しなければ、来年にギリシャ危機が再燃するのは避けられないと懸念している。イタリア政府とEU当局の間でも、イタリアの2017年度予算や同国の一部の銀行に対するEUの「ベイルイン(株主・債権者による損失負担)」規則の適用を巡り、対立が続いている。ECBやEU当局では、各国政府が代償を払わずに一方的にEU規則を破り、ECBの政策の法的根拠が問われるのではないかとの不安がある。
ユーロ圏がたとえこれらの障害を回避したとしても、景気回復が続きインフレが加速した場合、問題に直面しかねないと心配する当局者は多い。インフレ加速が見込まれれば、FRBへの圧力は弱まるかもしれない。だがそうなると、ECBは債券買い入れを中止するか、インフレ率が目標水準を超えることを容認するかのどちらかを選ばざるを得なくなり、政策運営が一段と難しくなる恐れがある。量的緩和をやめれば、大半の重債務国の借り入れコストは急伸する可能性がある。一方、インフレ率が目標を上回るのを放置すれば、ドイツの競争力や生活水準を悪化させかねず、政治的緊張が高まる恐れもある。
ユーロ圏が抱える幾つかの問題については、もはや決断を避けて通ることはできないというのが現実だ。しかも、まさに政治家らが最も対応に窮しているときにこれらの問題に立ち向かわなければならない。
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