これまでと違い、物価停滞が実質賃金の押し上げに(写真=Thinkstock/Getty Images)
これまでと違い、物価停滞が実質賃金の押し上げに
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160826-00000007-zuuonline-bus_all
ZUU online 8月26日(金)11時40分配信
7月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比−0.5%と、5ヶ月連続のマイナスとなった。
■1%程度の物価上昇の中期的なトレンドは継続
今回から基準年が2010年から2015年へ改定された。上下のバイアスがオフセットされたため、今回の基準改訂で指数に大きな変化はみられなかった。2016年6月までの1年間の平均に変化はなく、6月の前年同月比は−0.5%から−0.4%への若干の上方修正となった。新しい基準では、7月は下落幅が若干拡大することになった。失業率の低下と総賃金の拡大、これまでの過度な円高の修正とインフレ期待の上昇の効果により、1%程度の物価上昇の中期的なトレンドは継続していると考える。
一方、7月のコアコア消費者物価指数(除く食料・エネルギー)は同+0.3%と、新基準の6月の同+0.5% (+0.4%から上方修正)から上昇幅が更に縮小した。昨年11月の同+0.9%からの減速が継続しており、今年の10−12月期にはコアコアも上昇が止まる可能性がある。原油価格の下落の影響だけでは物価低迷が説明できなくなっていることを示している。
2014年の実質GDP成長率が、消費税率引き上げにより潜在成長率を下回り、2015年と2016年が潜在成長率なみにとどまり、需要超過幅の拡大のペースは明らかに遅れていることが、物価低迷の大きな原因となってきているようだ。これまでの原油価格下落と円高の影響が残ることもあり、2016年の年末まではコア消費者物価は下落を続けるだろう。
改ページ>>2017年はどうなる?
■中長期目標になることで、追加緩和の可能性は低い?
内需の回復と円安の再開などにより、2017年から持ち直すだろうが、年末までに+1%程度の中期的なトレンドまで戻るのが精一杯だろう。
ポジティブに考えれば、2017年は、物価上昇が賃金上昇に遅れることによる、実質賃金の上昇が消費活動を刺激するという、これまでとは逆の展開になっていくと考えられる。2013年以降のアベノミクスの局面では、物価上昇が賃金上昇に先行し、家計が景気回復を実感しにくかったが、ようやく実質賃金の上昇で実感が好転することになろう。
そのような需要の拡大が強くなり、物価上昇を加速させるにはかなりの時間がかかる。
更なる賃金上昇も必要で、2%程度の安定的な物価上昇には2.5%程度まで、失業率が低下する必要があるとみられ、それもかなりの時間がかかる。2017年後半には、日銀がまた2%の物価目標の達成時期を現在の「2017年度中」から、「2018年度中」に先送りすることになるだろう。
しかし、9月の日銀金融政策決定会合で実施する、これまでの金融政策の総括的な検証で、物価目標が「2年」を念頭に、日銀の金融政策のみで早急に達成するものではなく、政府の財政政策とのポリシーミックスで、中長期的に達成するものに変更されることにより、そのような先送りが直接的に、追加金融緩和につながらない形になる可能性がある。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト