[ビジネスTODAY]米テスラ、大型商用車参入
「全分野でEVそろえる」 量産で電池コスト3割減
【シリコンバレー=兼松雄一郎】米電気自動車(EV)メーカー、テスラモーターズは20日(米国時間)、今後10年間の事業計画を発表した。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は乗用車に続いてバスやトラックにも参入し「主要分野すべてでEVをそろえる」方針を明らかにした。量産効果を高めて電池のコストを3割以上減らし、自動運転も進化させる。次のエコカーの主流が定まらないなか、事業の拡大ペースを速めてEVで主導権を握る考えだ。
テスラはEVの相乗り事業にも参入し、使いやすさで普及を主導する狙いだ(独フランクフルト)=AP
生産やアフターサービス体制の構築といったハードルはまだ残るが、久々となる「フルラインメーカー」が誕生すれば、日本を含む世界の自動車市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。
バスとトラックについては来年に詳細を発表し、予約を始める見込み。ピックアップトラック、小型多目的スポーツ車(SUV)も開発する。
例えばバスは中央の通路をなくし、その部分にも座席をうまく配置することで、小さくても従来並みの人数を乗せられるようにする。ドアの位置や開け方を工夫して奥の座席でも乗り降りできるようにするとみられる。
テスラが車種数を短期間で拡充できるのは、エンジン車より部品点数が大幅に少なく構造がシンプルなEVだからという理由も大きい。複数の車種間で設計を共通にし、蓄電池など主要部品は内製する。量産効果や自動化で「2年ごとに生産効率を5〜10倍高める」(マスクCEO)。
昨年、乗用車を約5万台生産した。2020年には100万台に増やす計画だ。今は米カリフォルニア州とオランダに工場を持つ。中国でも販売状況をみながら生産を始める。
今回、自動運転EVを複数の利用者が共有するライドシェア(相乗り)事業への参入も表明した。車両価格がまだ高いEVを安く使える仕組みを作り普及を加速させる。
課題はある。使用頻度が高くなりがちな商用車は、乗用車以上に緻密なアフターサービスが必要だ。テスラは大手と比べると対応できる拠点は圧倒的に少ない。さらに、生産増に伴いサプライチェーンも拡充していかなければならない。
自動車の新興企業はテスラだけではない。米グーグルや米アップルといったIT(情報技術)企業が、自動運転技術などを強みに参入計画を進めている。大手同士で争うだけの競争環境は大きく変わり、新興企業が今後も相次ぐ可能性がある。
[日経新聞7月22日朝刊P.11]