英EU離脱で「恐怖指数」取引に好機
VIX関連の投資が活発化
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CBOEボラティリティー指数は27日、一時4カ月ぶりの高水準に達した PHOTO: SCOTT OLSON/GETTY IMAGES
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BEN EISEN
2016 年 6 月 28 日 13:05 JST
英国の欧州連合(EU)離脱決定による大混乱で利益を得た投資家がいる。市場のボラティリティー(変動性)に賭けるトレーダーたちだ。
23日の英EU離脱(ブレグジット)確定を受け24日と27日の米株市場は大幅安となり、シカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は4カ月ぶりの高水準に達した。
「この状態がずっと続くかどうかなんて、誰にも分からない」。米フロリダ州クーパーシティー在住で廃棄物管理業に携わるヘンリー・ハウプトさんはこう話す。ハウプトさんは投資ニュースレターを運営し、VIXに連動した投資商品を売買している。
彼は、VIXに連動したある上場投資信託(ETF)を23日に購入し、27日に売却したという。
ブレグジットに市場が一斉に反応したことで、ウォール街で「恐怖指数」と呼ばれるVIX関連の取引が活発化している。
プロシェアーズ・トラスト・ウルトラVIX短期先物ETF(UVXY)は今月に入ってから27日までで36%上昇。また、ベロシティーシェアーズ・デイリー2x VIX短期ETN(TVIX)も34%上昇している。いずれもVIX先物指数の変動に対して2倍変動する仕組みになっている。
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モーニングスターによると、VIX先物指数に連動する21の上場投資商品の資産額は6月15日までの1週間で52億8000万ドル(5370億円)と過去最高に達した。ただ翌週には46億9000万ドルに減少した。
ゼロ近辺の金利が長年続いたことで市場のボラティリティーは抑制されていたが、周期的な株価変動が市場に戻りつつある。VIXの急伸はこの1年で3度目。1度目は中国の成長への懸念が市場を揺るがした昨年8月で、2度目は米国のリセッション(景気後退)への警戒感が株安を招いた年初だ。
ブレグジット決定後に上向いている投資商品はVIX関連だけではない。株価下落を受け、比較的安全とされる先進国国債と金の価格も上昇し、最もパフォーマンスが良好な資産の1つとなっている。VIXは27日の相場で一時2月以来の高水準に達したが、前週末比7.4%低下して引けた。
https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CQ278A_VIX_16U_20160627160306.jpg
VIXに連動したETFの資産額推移(単位:10億ドル)
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiKptXDo8rNAhUGKJQKHQR6BVcQFgghMAE&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12616845268056034052504582155883360461606&usg=AFQjCNGedvud9LCYX1iYlfxBkKojEdr2ew
英国とEUの神経戦−投資家が利益を得る方法
EU離脱に反対するデモが25日、ロンドンで行われた。写真はEU旗をまとったデモ参加者 PHOTO: JUSTIN TALLIS/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
By JAMES MACKINTOSH
2016 年 6 月 28 日 15:53 JST
英国が欧州連合(EU)を離脱する際のシナリオとしてふさわしいのは次のようなものだろう。
EUは自らの利益を最優先に行動し、英国に対しおそらくノルウェーとの取り決めと類似した適正な貿易協定を提示する。新たな協定の下では、英国の銀行システムはEU規制を受け入れなければならないが、規制内容には口を出せない。また、英国政府はEU予算への拠出を継続する。ドイツは制御不能な移民流入に対する反対が高まりつつある現実を認め、労働者の自由な移動に何らかの(強い)制限を設けることを受け入れる。
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英国とEUのどちらにとっても早急な妥協こそが理にかなった行動だろう。そうすれば、英国経済への圧力が最小限に抑えられ、欧州全体の投資家に確実性がもたらされる一方、あまり魅力がない協定と受け止められ、英国に追随して離脱を求める動きがEU域内に広がることもなさそうだ。
だが、一つだけ問題がある。政治だ。
投資家は週末、これが英国だけの小さな問題にとどまることを半ば期待していた。ところが、週明けに市場が開くと、政治について考えていた投資家が現状を懸念すべき事態と判断したことが明らかになった。
英国は貿易協定の交渉にあたる人がいないだけでなく、交渉力もない。さらに悪いことに、ブレグジット(英国のEU離脱)支持派が国民投票に勝利したのは、こうした妥協とは反対の姿を約束したからだ。英国の法律は英国が決め、EUへの拠出金を減額するというのが彼らの主張だった。
EU側にとって妥協はいっそう難しいだろう。人々の自由な移動はEU憲法に深く組み込まれた理念で、ドイツの指導者らや東欧諸国はこれを重要視している。
ブレグジット支持派はほぼここ4カ月を通じ、EU市民の最大の利益のために行動していないとしてEUの官僚組織を激しく非難してきた。ブレグジット派の指導的立場にある人たちは、この同じ官僚組織が今度はEU市民のために英国との早急な協定締結を目指すと考えている。なお悪いことに、EUよりもむしろ英国の方が相手に頼るところが大きく、交渉においてEUが優位な立場にあることを彼らは認めていない。
27日の金融市場では再び売りが膨らんだが、24日の取引序盤のような見境のない売りではなかった。英国や欧州の経済減速、それに伴う金利低下で最も影響を受ける資産が売られた。
銀行株が暴落したとはいえ、ブレグジットの波紋は金融危機の再来ではない。英国・欧州経済の予想以上の減速見通しや金利低下を背景に銀行の収益が今後いっそう減少することを株価はかなり正確に織り込んでいる。銀行は経済成長や金利低下に最も大きく影響されるセクターだ。27日の取引で英国の銀行株は8%安、ユーロ圏の銀行株は6%安、米国のKBW銀行株指数は5.1%安だった。
EU旗を調整する作業員(先週、ブリュッセル) ENLARGE
EU旗を調整する作業員(先週、ブリュッセル) PHOTO: VIRGINIA MAYO/ASSOCIATED PRESS
銀行の財務状況などは一般的に、過去数回の欧州危機の時点よりも良好だ。これはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の水準にも表れている。iTraxx欧州シニア金融銘柄指数のCDSプレミアム(保険料)は24日、2013年にキプロスの銀行の営業停止を受けてパニックが起きたとき以降で最も大きく上昇した。トレードウェブによると、2日間の上昇率(42%)はリーマン・ブラザーズ破綻時の55%とさほど変わらない。銀行株が12年の安値近くまで下落しているにもかかわらず、銀行債は2月時点よりも安全とみなされており、12〜13年に比べてはるかにリスクが小さいと考えられている。
投資家が利益を得る方法
だからといって、いまが買い時だというわけではない。市場は政治を材料に動いているが、政治は破綻している。それでも、英国とEUが新たな協定を締結できるとの希望を抱く人たちは多い(一部では国民投票結果を無視することや投票のやり直しを望む人もいる)。
投資家がこの政治ゲームに参加する方法は以下の3通りだ。
一つ目は、英国与党・保守党内の権力闘争についての「にわか専門家」になること。同党は次期首相となる新たなリーダーを9月に選出する見通しだ。EUとの取り決めが成立するかどうか、予想が的中すれば利益を得られる。早急に貿易協定が結ばれれば、英ポンドと銀行株は急伸するだろう。
二つ目は、英国が一種の「EU準加盟国」の地位を確保するという期待を投資家が諦めるまで待つことだ。この方法を採用するにあたり、これから実際に起きることについての専門知識は必要ない。他の人たちがどう考えているかを見極めることに熟達しているだけで良い。英国政治の混迷や多くの欧州諸国の怒りを踏まえると、新たな協定の成立が不可能に思える瞬間がやって来る公算は大きい。この場合、ポンドが売られ、ポンドに関連したありとあらゆるものがそれ以上に打撃を受けることは間違いない。まだその段階には達していないように思われる。
三つ目は日々の政治を無視することだ。資金を市場に投入し、後は安値を付けるタイミングなど細かいことは気にしないことだ。時間がたてば株式市場は上昇する傾向があるため、長いスパンで見ることのできる投資家は株価が暴落してもやり過ごして差し支えない。とにかくパニックにならないことが肝心だろう。問題なのは、ロンドン証券取引所に上場された中型株250銘柄で構成されるFTSE250種指数でさえ、過去の平均に比べてまだ特に割安感がないことだ。株価が一時的に反発する場面は何度もあるだろうが、その前に懸念がいっそう深まる可能性はある。
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共通項は「英国以外のプレゼンスが大きいこと」
英国のEU離脱という衝撃の中でも株価を上げてきた英大手企業がいくつかある
By JOHN CARNEY
2016 年 6 月 28 日 14:30 JST
英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)は世界中の株式相場を揺るがしたが、その衝撃の中でも株価を上げてきた英大手企業がいくつかある。
値を上げた銘柄の業種は鉱業、製造業、データ分析、出版など多岐にわたるが、共通しているのは英国以外のプレゼンスが大きいことだ。
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最も大きく株価を上げた3社はいずれも鉱業関連で、産金のランドゴールド・リソーシズ、金銀大手フレスニーヨ、貴金属のパン・アフリカン・リソーシズだった。英国のEU離脱で貴金属価格が急騰したことが株価上昇の要因になったと考えられる。
ランドゴールドの株価は、英国で国民投票が行われた23日の始値から26.69%上昇。南アフリカのヨハネスブルグとロンドンに重複上場するパン・アフリカン・リソーシズの株価は24.33%、フレスニーヨは21.16%、それぞれ上昇した。
投資家に恩恵をもたらしたのは鉱業関連だけではない。英国に拠点を置くが海外の売上比率が大きい大手企業の株価も同様に上昇した。
EU離脱で株価を上げた英国銘柄
ランドゴールド・リソーシズ(鉱業)
フレスニーヨ(鉱業)
パン・アフリカン・リソーシズ(鉱業)
ロールスロイス・ホールディングス(製造業)
アストラゼネカ(製薬)
グラクソスミスクライン(製薬)
シャイアー(製薬)
メディクリニック・インターナショナル(医療)
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(嗜好品)
ディアジオ(酒造)
ピアソン(出版)
レレックス・グループ(データ分析)
コンパス・グループ(食品)
航空機・船舶向けパワーシステムを手がけるロールスロイス・ホールディングスは2%上昇したが、同社は売上高の7割ほどを英国以外で計上している。また、ポンド下落で同社製品の価格は海外顧客にとって安くなるはずだ。
海外売上比率の大きい英製薬会社も恩恵を受けた。アストラゼネカの株価は5.54%、グラクソスミスクラインは4.14%、アイルランドのシャイアーは3.36%上昇した。
アフリカ、スイス、アラブ首長国連邦(UAE)で民間病院を経営するメディクリニック・インターナショナルの株価は23日の始値から5.29%上昇。
いわゆる「罪ある株式」だが、海外売上比率の大きいブリティッシュ・アメリカン・タバコは3.69%、酒造メーカーのディアジオは3.15%上昇した。
世界規模で教育・出版事業を手がけるピアソンは1.75%高、レクシスネクシスと学術書籍出版のエルゼビアを傘下に持つデータ・情報分析のレレックス・グループは3.95%高となった。
50カ国以上で事業展開する食品コングロマリットのコンパス・グループの株価は3.30%上昇した。
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ブレグジットで長引く米銀の冬
米国の銀行を長く厳しい道のりが待ち構えている
By AARON BACK
2016 年 6 月 28 日 11:52 JST
米国の銀行は、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定による市場の混乱を切り抜けるだけの強さを備えている。だが生き残ることと繁栄することは違う。待ち受けているのは長く厳しい道のりだ。
モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースといった主な国際投資銀行は、欧州資本市場に深く関与している。その収入は、英国や欧州の景気低迷から直接の影響を受けそうだ。米銀がロンドンの拠点からEU全域の事業を運営する特権を失い、一部事業の移転を強いられる可能性もある。
欧州にほとんど投融資していない米国内の銀行でさえ、ブレグジット決定以降の急激な金利低下に圧迫されそうだ。
米銀は、前回の危機後にバランスシートと資本バッファーが大幅に強化されたことから、今回やそれ以上の混乱を乗り切ることができるはずだ。深刻な世界的リセション(景気後退)、マイナス金利、主なカウンターパーティー(取引相手)の破綻といったはるかに深刻な状況を米銀が乗り切れることを、連邦準備制度理事会(FRB)のストレステスト(健全性審査)は示している。
それでも、米国の大手銀行は好ましくない状況に直面している。銀行株の投資家は何年もの間、金利が上昇し、不確実な状態に終止符が打たれ、より「通常」に近い環境に戻ることに期待してきた。
その通常への回帰は、さらに遅れそうだ。英国は離脱の条件を交渉する間、長期にわたって不確実性の高い期間に直面することになる。この状況は今後数年にわたり、英国と欧州の経済活動を抑圧するだろう。国をまたいだ大型合併など、銀行の成功を支えてきた取引は特に影響を受ける。
この厳しい見通しはまた、世界中の金利をより長期にわたって低く抑え、米国債の利回りを押し下げ、FRBの利上げをさらに難しくしそうだ。
米銀はブレグジットを受けて市場環境が冷え込むことを見込んでおくべきだ。この環境は、低金利、根強い不確実性、さえない利益といった特徴を持つ。つまり、過去数年にわたり米銀が耐えてきた世界とよく似ている。
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