【第434回】 2016年6月27日 真壁昭夫 [信州大学教授]
英EU離脱は未曾有の世界景気後退の入口を開いた
英国のEU離脱が国民投票で決定、キャメロン首相が辞意を表明した。離脱は英国自身の崩壊や世界経済急落への扉を開けた恐れが濃厚だ?Photo:REUTERS/AFLO
予想外の英国EU離脱
金融市場は大混乱
?6月23日、英国で新しい歴史の扉が開かれた。同国の国民投票で、予想外に欧州連合EU離脱が決定されたからだ。その決定を受けて金融市場は大混乱となった。今回の決定によってすぐに英国がEUから離れるわけではないが、英国が出した結論は、最終的に「人類史上最も大規模な実験」ともいえるEUの存続に、終止符を打ったことになったかもしれない。
?今後、EU内の諸国にも国民投票を求める声が高まり、欧州諸国の政治情勢は一段と不安定となるするはずだ。それに伴い、同地域の経済にも不透明感が高まるのは避けられない。その流れは、世界経済の足を引っ張ることにもなりかねない。
?英国民の決定は、少し長い目で見ると、スコットランドなどの独立による英国自身の崩壊の懸念だけでなく、世界経済急落への扉を開けてしまったことは間違いない。
移民問題による国民の不満で
目算が外れた英キャメロン首相
?そもそも今回の国民投票は、2013年、キャメロン首相が公約として実施を約束したものだ。同首相の目算とすれば、英国内の反EU派の鎮静化や、ドイツ等のEU諸国に対して国民投票という材料をチラつかせて有利な条件を引き出す狙いがあった。
?ところが、その後、EU圏経済の低迷や、中東地域などからの大量の移民などの問題が深刻化し、国民の中でEUに対する不満が高まった。特に、移民流入によって職を奪われる。あるいは、一般市民が医療などの社会保障サービスを受けにくくなったことは、国民の不満を一気に高める結果になった。
?国民投票直前の6月に入っても、英国の世論は「離脱」と「残留」の狭間で揺れてきた。当初は残留が優勢と見られていたが、6月10日の世論調査では、離脱派が残留派を10ポイント上回る結果となった。そうした事態の緊迫化は、「英国の残留は間違いない」と楽観していた金融市場参加者を慌てさせ、離脱に備えたリスク回避のオペレーションを進めざるを得なくさせた。
?大手投資家は英ポンドの売りヘッジを行ったり、銀行株や南欧諸国の国債を売却して英国のEU離脱(Brexit、ブレグジット)に備えた。これが、米国債やドイツ国債への需要を高め、世界的な金利低下につながった。
残留派議員の銃撃事件をきっかけに
残留優位の予想が広がる
?6月15日には英国の地方都市で、残留を呼びかけていた下院議員が銃撃され命を落とすという悲劇が起きた。一般的に銃の所持が少ない英国で、このような事件が起きたことは英国民ならず、世界的に大きな衝撃を与えることになった。
?この事件を契機に、一時、世論は残留支持に傾いたように見えた。ブックメーカー(賭け屋)のオッズでもEU残留の確率が80〜90%と示された。オッズには掛け金がかかっているだけに「世論調査より信頼できるデータ」といわれていた。
?これを見て、多くの投資家は「やはり残留だろう」と胸をなでおろした。そして、リスク回避に備えたポジション(持ち高)を手仕舞い、英ポンドや株式、イタリア国債などの買い戻しが進められ、米独の金利が上昇した。投票直前の世論調査でも残留派が4ポイントリードしていたため、市場はかなりの確率で残留を予想していた。
?しかし、6月23日、国民投票の開票が進むと市場は予想外の展開に直面した。想定以上に離脱票が多かった。虚を突かれた世界の投資家は「すわ、英国のEU離脱!」と急速にリスク回避に動いた。こうして6月24日のアジア時間の金融市場は大混乱に陥った。
?英国のEU離脱が決定し、当面の金融市場は不安定に推移する可能性が高い。どのように英国が離脱交渉を進めるかは不透明だが、英国、EUの政治が大きな転換点に差し掛かっていることは確かだ。それはわが国の経済にも無視できない影響をもたらすだろう。
?世界経済の先行き不透明感が高まる中、今後の欧州の動向は、世界経済を大きな混乱に陥れる主要なリスクファクターの一つと見るべきだ。
“感情”と“理性”の対決だった
EU離脱の国民投票
?23日に382の選挙区で実施された英国(イングランド、北アイルランド、ウェールズ、スコットランド)のEU離脱を問う国民投票の結果、52%の有権者が離脱を支持し、EU離脱が決定された。
?今回の英国の国民投票についてある有力メディアの表現によると、離脱を求める“感情”と残留を求める“理性”の対決だったといえるかもしれない。
?EU離脱を求める世論の背景には、難民・移民への怒り、不満があった。EUでは「シェンゲン協定」によって国境を越えた自由な往来が基本的に認められ、東欧などからの移民が西欧に流入してきた。そして、北アフリカ、中東からは難民がEUに押し寄せた。
?実のところ、英国はシェンゲン協定を批准してはいない。しかし、人の自由な移動を認めるEUの取り決めが、国境の管理を難しくしてきたことは確かだ。それが高齢者や貧困層の「難民や移民が暮らしを悪化させている」との感情を生んだ。
?そうした見方は一般市民だけではなく、英国の知識階層の中にも高まっていた。著名な学者の中からも、「独立国とし、本来行使すべき来訪者の管理などの機能がEUに剥奪されている」と批判する声もあった。
?ボリス・ジョンソン前ロンドン市長ら離脱派の政治家は、国民投票で離脱が決定されても即時に英国がEUと離別するという構図は描いていなかったかもしれない。彼らは英国の離脱をEUに突き付けることで、ドイツ等のEU諸国からより有利な条件を引き出すこと(条件闘争)を考えた可能性もある。
?ただ、有力政治家の発言は、難民・移民問題に不満を募らせる国民にとっても“英国優先”を印象付ける重要なメッセージだったはずだ。
他国にも広がるEU離脱論
スコットランドや北アイルランド独立も
?一方、理性に基づいて考えれば、英国はEUに残留すべきだったとの見方は多い。英国が離脱した場合、EU向けの自動車輸出には、現行の0%ではなく、標準的な10%の関税がかかることになるかもしれない。
?また、金融機関など多くの企業が拠点を大陸欧州に移すことも想定される。その場合、雇用機会の創出、財政支出の増大による信用格付けの引き下げなど、経済のマイナス要因が増えることは想像に難くない。
?そうしたメリットを捨ててまでEU離脱が選択したことは、如何に英国民の中で、移民・難民問題に対する反感、怒り等の感情が強かったことを示している。この結果は、オランダやフランスのEU離脱論にも火を注ぎ、ドミノ倒しのようにEU離脱が欧州に広まるかもしれない。
?また、今回の投票で、イングランドとウェールズでは離脱が過半を占めたが、スコットランドと北アイルランドでは残留が過半を占めた。今後、両者が英国から分離独立する可能性を秘めている。それは大英帝国の終焉を意味する。
?既に24日、英国国民投票の決定を受けて、スコットランド行政府のスタージョン首相は英国から独立しEUに残ることを主張した。北アイルランドでもシン・フェイン党から独立を求める動きが出始めている。
典型的なリスク回避相場となった
世界の金融市場
?24日、東京時間から金融市場は不安定に推移し、為替、株式、債券(金利)の価格は大きく変動した。23日の世論調査で残留が優勢と報じられていただけに、開票が進むにつれ離脱の優勢が伝わったことは多くの投資家を慌てさせることになった。
?EU離脱への支持が増えるにつれ、投資家の多くは急速なリスク回避に傾いた。英ポンドが売り込まれ、ドルや円などの通貨に対して大幅に下落した。前日比で、ポンドは対ドルで11%、対円では15%超下落した。
?円は一時99円台まで急落し、米国の長期金利は東京時間夕刻には1.4%台前半を付けた。これは年初来の最低水準だ。これは典型的なリスク回避相場だ。
?この中で顕著だったのが、英国以上に欧州周辺国への売り圧力が強かったことだ。EU離脱が決定されると、イタリア、スペイン、ポルトガルなど財政状況が不安定な国の金利が上昇した。
?一方、ユーロ圏の中で最も信用力の高いドイツの金利は大きく低下し、一時は残存期間が15年の金利までもが、マイナスの水準に落ち込んだ。株式市場では英国以上にイタリアやスペインの株価が下落した。
?こうした動きの背景には、英国のEU離脱がユーロ崩壊の始まりになるとの懸念がある。金融市場は、先行きの英国経済への懸念以上に、金融政策で何とか景気を持たせている欧州周辺国が、今後の景況感悪化に耐えられないとの懸念を募らせた。
?その先には、英国のEU離脱が他国の追随を呼び、ユーロ圏には競争力のない国が残るとの懸念もある。英国のように、自国の決定権を取り戻そうとする国がEU・ユーロ圏から離脱した場合、ユーロ圏にはギリシャなどの重債務国が残るだろう。
?そうなると、ユーロの信認は大きく毀損し、通貨は暴落する可能性がある。それはユーロの崩壊につながることも考えられる。
最悪のシナリオは
EU終焉の第1ステージ
?EU離脱が決定し、キャメロン首相は辞意を表明した。10月までに新首相が選出され、そのもとでEUとの交渉が進むと見られる。そのため、EU離脱を巡る交渉がどう進むか、現時点では不確定要素が多い。
?今回の一連の動きを総括すると、先述した通り、英国のEU離脱決定は、人類史上最大の経済的実験であるEUの終わりのはじまりといえるだろう。今後の展開次第の要素はあるものの、最悪のシナリオで突き進むと、まさに「EU終焉の第1ステージ」と考えてもよいかもしれない。?
?欧州懐疑主義を掲げるフランスの右派政党、国民戦線のルペン党首は、英国のEU離脱を「アラカルト=各国が自由に選ぶ欧州のはじまり」と評している。既にフランスやイタリアなどでEU加盟を続ける意義を問う国民投票が必要との主張も増えている。
?これは、文化、風習、経済構造等が異なる複数の国をEUという一つの共同体に押し込むことの限界を示している。
?特にユーロ圏では、金融政策がECBに一本化されているにもかかわらず、財政の統合が進んでいない。これが、財政危機を生んだ。ユーロを支えるためには、ドイツがギリシャを支援するように、誰かの負担で誰かを支えなければならない。
?ドイツ国民がギリシャ支援を批判し、ギリシャが緊縮策を主張するドイツを批判する。こうした感情論がユーロの不安定さにつながる。
?24日の金融市場の急変は、こうした懸念を反映していた。それは、為替市場での大手投機化=ヘッジファンドの動きなど通して、円高の進行など、日本経済に無視できない影響を与える。実際、為替市場では、一時、99円台まで円高が進んだ。それは、わが国経済にとって大きな逆風になるはずだ。
自国を優先する考えが強まる各国
世界経済は体験したことのない景気後退も!?
?足元の世界経済を概括すると、中国経済の減速が進む中、米国も景気循環のピークに近づいている可能性がある。そこに、英国、EUの分裂という動きが加わることは、多くの投資家をリスク回避に向かわせるだろう。
?今後、政治動向にも十分な注意が必要だ。世界の金融・財政政策が限界を迎える中、今後のリスクに対応するためには各国の協調が不可欠だ。英国の国民投票は、自国を優先する考えが強まっていることを示した。
?これはEU離脱を訴えるオランダやフランス、イタリア、そして米大統領選にも共通する。国際的な協調は期待しづらく、為替相場の安定などへの合意は取り付けにくい。それはわが国にとって無視できないリスクだ。
?足元の世界経済は供給が過剰となり、需要は低迷している。それを非常事態の金融緩和で糊塗している。需要が低迷し、モノを買いたい人が供給したい人よりも少ない中で、今後の為替相場の変動にわが国がどれだけ耐えられるか、先行きの懸念は高まっている。
?これまでは米国の景気が回復していただけに、何とか危機的な状況は回避できてきた。中国、米国の景気減速懸念、欧州の政治リスクが同時に高まった時、世界経済は今まで体験したことのない景気後退になるかもしれない。今回、英国がEU離脱を決定したことは、未曽有の景気後退への入り口の門を開いたことと考えるべきだろう。
http://diamond.jp/articles/-/93765
【第11回】 2016年6月27日 長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員]
EU離脱で価値がなくなった英国など、日本企業は見捨ててもよい
英国のEU離脱は日本企業に
どれほどのインパクトを与えるか?
国民投票によってEUからの離脱を決めた英国は、世界経済に多大な迷惑をかけている。そもそもこれからの英国は、日本企業にとって必要な国と言えるのか
Photo:AP/AFLO
米国も英国も、感情が先に立った意思決定をしているとしか思えない。
国民の感情を過度に刺激する大統領候補を擁立してまで次期政権を奪おうとしている共和党の姿は、まるで今の米国社会のひずみを象徴しているかのようだ。しかし、この度さらに憂慮すべき事態が起きた。英国が国民投票によって、EUからの離脱を決定したのである。これは彼ら自身にとっても、大英帝国としての自尊心をくすぐる以外にろくなメリットがない決定であり、それどころか、世界の金融、経済を大きく振り回すだけの迷惑この上ない事態を招いている。
多くの報道で日本経済への影響が取り沙汰されているが、実際にそのインパクトはどれほどのものだろうか。筆者は、短期的に円高、株安傾向は続くとしても、実際に英国がEUから離脱するためには2年の時間を要することから、それまで足もとのような混乱が長期にわたって続くようなことは、恐らくないと考える。
直近について言えば、輸出産業における一時的な為替差損による収益減少、訪日外国人観光客の減少などはあるかもしれないが、反対に日本人が海外旅行に行きやすくなり、バーバリーを買いやすくなるメリットもあるかもしれない。おそらくはその程度であろう。もしEU離脱が英国だけであれば、の話ではあるが。
もう1つ、参院選を控えた日本への直近の影響として考えられるのは、予想外にドラスティックな為替と株の乱高下が、アベノミクスへの不安をクローズアップさせ、安倍自民党にとっていくらかの向かい風になることだが、これについても、日本国民は冷静に事態の推移を見極めるべきであろう。
もちろん英国のEU離脱の影響は、EUが加盟国からの拠出金の10%強を失うという意味でも、英国という欧州の金融センターがEUの金融センターでなくなるという意味でも小さくない。報道されているように、日本の自動車メーカー各社や鉄道車両工場を展開する日立製作所など、EU市場向けに製品を輸出している日本企業の拠点が被る影響も大きいだろう。
英国からEU諸国への輸出がどうなるかは、今後英国とEUとの間の関税協定がどのように締結されるかにかかっている。従来通り英国にある生産拠点を活かすという意味では、日本企業にとってできるだけ低率関税になってくれたほうがプラスになると思われる。しかし、長期的視点に立つと、筆者はむしろEUは英国に対して懲罰的に高い関税をかけても良いのではないかと思う。
それは、世界経済が低迷する中で主要国が保守化し、自国中心的に動くようになると、EUという欧州の巨大な経済基盤の崩壊を招き、まさに二度の世界大戦の前夜に見られたような世界情勢を産み出すことになりかねないからだ。
日本企業は、足もとの「英国ショック」に振り回されるだけではなく、今後はEU全体の経済安定を取るか、英国一国への投資を取るかといった大きな視野から、欧州での展開を見据えていく必要がある。
英国人自身が気づいていない
EUから受けていた多大な恩恵
そもそも、日本企業にとって、今の英国はそれほど魅力的な国なのだろうか。答えは「ノー」だ。
欧州は全体としては巨大な市場であるが、小中規模の国が乱立していて、それぞれの国レベルで見ると経済力はそれほど強くない。EU統合のメリットは、強い通貨ユーロの創出(これには英国はそもそも乗らなかったが)、関税撤廃によるモノの移動の自由化、シェンゲン協定による人の移動の自由化の3点であり、これらは域内において貿易の活性化と共に労働力の移動を自由にした。
製造業も強く、ドイツやフランスなどの他の欧州の大国と比較して強い経済力を持っていた20世紀の英国であれば、そうした中においても、関税や移民制限により国内の市場を閉鎖的にすることにも意味があったであろう。英国に市場としての魅力があれば、日本などの外国企業は英国に直接投資を行うからだ。
しかし、現在の英国には市場としての魅力はそれほどない。「EUの英国」だからこそ、EU市場全体へのゲートウェイとして魅力があったのだ。また移民の流入についても、外国企業の進出という観点からは安い労働力を得られるというメリットがあった。だが、EUを離脱した英国には、高い関税と高い労働力しか残らないかもしれない。
EU加盟国の中には、前述のように、自国中心主義とEU離脱を唱える保守勢力が躍進している国も他にある。こうした中で、EUは今後英国に対して好意的な条件で関税協定やその他の取り決めを結ぶ理由はないだろう。また、ロンドンのシティが欧州の金融センターだったのは、それがEUの金融センターという側面を持っていたからでもあるだろう。そう考えれば、EU加盟国が連携してロンドン市場から新たなEUの金融センターに乗り換えることもあるかもしれない。フランクフルト市場などは十分その候補になるのではないだろうか。
また、英国に投資をしていたEU外の外国企業、たとえば日本企業などに対し、ドイツやフランスなどのEU諸国が英国からの再誘致を図ることも考えられるだろう。多くの日本の製造業は、20世紀後半、英国が欧州のリーダーであり、世界の共通言語である英語が通じるという理由で、英国に現地法人を設立してきた。しかし、英国に大規模なテレビ工場を有していたソニーは今世紀に入ってスペインやチェコに工場を移転させている。さらにEUの一員というメリットをなくした英国から、外国企業が大陸の欧州先進国に誘致されていく流れは加速しそうだ。そうなれば、移民の制限による雇用の確保を大きな目的の1つとしていたEU離脱が、英国にとって裏目に出ることになるだろう。
さらに、EUは欧州に巨大な単一市場をつくり経済を安定させているだけでなく、日米欧の西側諸国にとって安全保障上も大きな意味を持つ。各国首脳が英国のEU離脱に懸念を表明するなかで、ロシアと中国だけがイギリスのEU離脱を歓迎する声明を出していることは非常に不気味に思える。現在、中国は対英投資を増やしているが、EU離脱により経済力が弱くなった英国が自分たちに泣きついてくることを、見越しているのかもしれない。そうなれば、中国が国連常任理事国の勢力図にも影響を与えることができるようになるからだ。
首相がさじを投げるような国に、果たして本当に明るい未来は待っているのだろうか。英国は、独立の機運を高めるスコットランドにも口実を与えてしまった。今回の国民投票では、英国を構成するイングランド、ウエールズに離脱派が多く、イングランドから精神的に距離のあるスコットランドや北アイルランドには残留派が多いという傾向が見られた。特にスコットランドは、英国からの独立を目指した国民投票を行ったばかりであるが、スコットランドとしてEUへの残留を目指すことを口実に、再び独立の気運が高まるかもしれない。
英国をとるか、EUをとるか?
世界の「仕返し」が始まる
世界経済の安定を考える上で、これから2年の間に欧州が目指すべき道は、最悪でも残りの27ヵ国が団結してEUを維持することだ。そしてもう1つの道は、今回感情的にEU離脱を決めた英国国民が、一息ついた後、2年間の離脱交渉の過程でEUを離脱しない方が良いことに気づき、EU離脱を撤回することであろう。そのためには、EU離脱がいかに英国にとっても世界にとってもメリットがないかという事実を、英国自身に気づかせるだけの痛手を負わせる必要がある。日本企業は、もはや価値のなくなった英国など見捨ててもよいのではないか。
中国の対英投資の動向は注視しなければならないが、日本の製造業にとって多くの場面でライバルになるのは英国ではなく、ドイツやフランスなど残されたEU諸国の企業である。日本企業は「英国ショック」から早期に頭を切り替え、EU市場でこれらの国の企業と対等に戦える土俵を用意することに目を向ける必要がある。幸い、英国のEU離脱には2年の余裕がある。その間に、英国に投資をしているエレクトロニクスメーカーや自動車メーカーは、大陸を目指すべきであろう。
http://diamond.jp/articles/-/93764
http://www.asyura2.com/16/hasan110/msg/336.html