ミニ戸建てへの関心が高まっている(ABC/PIXTA)
マンションVSミニ戸建て いま買うならどちらか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160319-00000012-pseven-bus_all
NEWS ポストセブン 3月19日(土)7時0分配信
マイナス金利導入から2か月弱――。史上最低の住宅ローン金利により、マイホーム購入を窺っている人も多いだろう。そこで、まず出てくる大きな選択肢が「マンションにするか、一戸建てにするか」だ。
一戸建てと聞くと「高嶺の花」のイメージが強いが、近年、都心の建売住宅でもよく見られる20坪程度以下の“ミニ戸建て”であれば、近隣の新築マンションと同等か、それ以下の金額で購入できるケースもある。
『新築マンションは買ってはいけない!!』の著者で住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、〈マンションorミニ戸建て〉の賢い選び方を解説する。
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住宅案内誌で年に数回は特集として取り上げられているのが「マンションVS戸建て」というテーマ。これは永遠に結論が出ない神学論争のようなものだ。しかし、論点を整理すれば違いは明確。結論から言えば「価値観の違い」ということになる。
まず、本来両者はエリア的にあまり競合しなかった。マンションは土地に限りがある都心部が中心。戸建ては土地に余裕がある郊外がその供給の中心エリア。従来、同じ予算で考えるのなら「狭くても都心や駅に近いマンションにするか、ちょっと不便でも伸びやかな戸建てを選ぶか」ということになっていた。
時々、共存して開発されている場合もある。それはだいたいが近郊エリア。ひとくくりの大きな土地があって、例えば「マンション500戸、戸建て150戸」といった具合に分けて開発される。こういった場合、戸建てのほうの価格が2、3割高くなるので、両者は競合しない。
ところが、最近の東京都心では珍しい現象が起きている。床面積割合で考えると、マンションとミニ戸建ての価格があまり変わらないか、むしろ戸建てのほうが安くなっているのだ。いったいどういうことだろう。
例えば、東京都新宿区だと80平方メートル程度の新築マンションを購入する場合、今は8000万円〜1億円以上の予算が必要だ。ところが、3階建てのミニ戸建だと6000万円台から選べる。
その原因は、東京都心のマンション価格がバブル化してしまったからに他ならない。
2012年頃から東日本大震災の復興事業によって建築費が値上がりしていたところに、2013年初めからアベノミクスが始まり、新築マンション価格は値上がり傾向にあった。そして2014年10月、日銀の黒田総裁がぶっ放した「黒田バズーガ2」という異次元金融緩和によって都心のマンション価格は一気にバブル化した。
それを買ったのは相続税対策の富裕層と、円安によって殺到した外国人。この2つの「買い」勢力によって、都心のマンション価格は4年前に比べて軽く1.5倍以上になっている。しかし、それは「住むため」という実需による買いではない。購入の大半は投資と投機が目的だ。
一方、新築のミニ戸建てというのは常に「住む」ことを目的とした実需層に買われる。外国人が投資目的で戸建てを買うことはない。ましてや節税効果の薄いミニ戸建てを、富裕層が相続税対策に買うことはない。
都心の新築マンションはバブル化したのに、ミニ戸建ては堅実な需要しか生まれないので価格があまり上昇しなかった。その結果、都心では価格が逆転してしまった、というのが現状なのだ。
では、住むために買うとすればどっちを選ぶべきなのか。それこそ「価値観の問題」だ。分かりやすく対比させると、以下のようになる。
●コスト面
・購入価格/都心なら面積割合でミニ戸建てのほうが安い。
・日常コスト/マンションは管理費がかかるが、戸建ては無料。戸建ての場合は、駐車場が付いていれば使用料もかからない。固定資産税・都市計画税にはあまり差がない。
・維持費用/マンションは月々修繕積立金を徴収される。80平方メートルなら1.6万円が目安。30年で総額576万円。戸建ての場合、30年間にかかる補修工事費の総額は100万円程度が目安。
●災害リスク
・地震/マンションは地震に強いと言われている。大地震でもマンション内で死亡する確率は微小。戸建ては新築なら倒壊の可能性は薄い。ただし、場所によって液状化で傾斜する可能性がある。また火災に巻き込まれることも考えられる。
・水害/マンションは1階住戸とエントランス等が浸水する可能性あり。戸建ては場所によって床上浸水を覚悟すべき。
●セキュリティ
オートロックなどに守られるマンションの方が安心。ただし、戸建てもセキュリティシステムの導入が可能。ただし、別途費用が発生。
●管理
マンションは管理組合が行うが、理事や理事長を務める義務が発生。戸建ては基本自主管理。ご近所づきあいが多少発生。
●居住性
基本的にフラットであるマンションのほうが優れている。戸建ては階段の上り下りがあり、高齢化すると住みにくい。マンションはエアコンを効かせれば季節を通して快適。戸建てはエアコンの効率が悪いので、光熱費が高くなる。
ざっとあげると、以上のようなところが大きく違う。この他にも、地味ながら日常生活の利便性で大きく違うのはゴミ捨て。マンションは「24時間ゴミ出しOK」がほとんど。戸建ては近くの集積所に決まった曜日の決まった時間までに自分で運ぶ。これがわりあい面倒で、日常の大きな負担になる。
分かりやすく言うと、マンションのほうが日常のコストはかかるが便利で快適。安全・安心で、ゴミ捨て等の負担が少ない。また、都心であればミニ戸建てよりも眺望に優れている場合が多い。
ただし、何年かに一度回ってくる理事が少し面倒。理事会の複雑な人間関係に巻き込まれる可能性もある。また、マンション内に「会いたくない人間」が出来てしまうと、心の負担になる。
そして、問題は数十年後――。建物の老朽化に対して、マンションを購入して住んでいる場合、一人では何も決められない。建て替えも、補修工事も、すべて区分所有法に定められた規定によって、管理組合の議決が求められる。建て替えなら全体の5分の4の賛成が必要。だから、簡単には決まらない。一方、戸建ては所有者の判断で建て替えも補修も可能。
購入価格が同じ場合、その後のコストは戸建てよりもマンションが圧倒的に高くなる。したがって、日常コストは安上がりだけど多少不便、でも管理の面倒がない戸建てを選ぶか、安くはない日常コストと引き換えに安全・安心で快適なマンションを選んで管理のリスクを背負うかどうか、という「価値観の違い」に収斂していく。
「マンションVS戸建て」の問題に決まった結論はない。答えは、これから住宅を買う人の心の中にある。