http://blogs.yahoo.co.jp/taked4700/13800277.html
福島県甲状腺検査(本格検査)、細胞診の受診率2割以下の意味
2月15日に第22回福島県「県民健康調査」検討委員会が開催され、「県民健康調査『甲状腺検査(本格検査)』実施状況」(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uplo…/attachment/151272.pdf)が公開されました。平成27年12月31日現在のデータです。この資料及び、2011年から2014年にかけて行われた先行検査(最終的には平成27年に終了)の確定資料(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uplo…/attachment/129302.pdf)をもとに、甲状腺検査の各段階の受診率を見てみます。
福島県の甲状腺検査は次のような段階に分かれています。
1.一次検査:基本的に公的負担で、無料。ソナー検査を行い、その結果を受けて、A1:異常無し、A2:軽微な異常あり、B:二次検査が必要、C:ただちに二次検査が必要に分かれ、A1とA2の方は次回の福島県甲状腺検査1次検査を受ける。
2.二次検査:基本的に通常診療(普通の保険診療)、つまり、有料であり、福島県の制度を利用するメリットは特にない。詳細なソナー検査、血液検査及び尿検査を行い、その結果を受けて、細胞診が必要かどうかを判断。細胞診が必要でない場合は、次回の福島県甲状腺検査一次検査を受ける。
3.細胞診:「悪性ないし悪性疑い」であるかどうかを判断。「悪性ないし悪性疑い」ではない場合は基本的に全員通常診療で継続的に詳細なソナー検査、血液検査及び尿検査。「悪性ないし悪性疑い」である場合は、時期を見て手術。
4.手術:ほぼ全員が癌確定。今まで福島県の甲状腺検査での手術件数115件中、良性結節は1名のみ。
先行検査及び本格検査での各段階の受診率は次の通りです。
=====一次検査ー二次検査ー細胞診ー手術
先行検査ーー81.7%ーー91.9%ーー39.6%ーー87.6%
本格検査ーー62.1%ーー64.4%ーー19.7%ーー31.5%
二次検査で「詳細なソナー検査、血液検査及び尿検査」をやった結果、癌である可能性が高いので細胞診を受けるのですから、福島県の細胞診を先行検査で4割、本格検査では2割の方しか受けていないのは非常に不合理です。
二次検査からは普通の保険診療であり、特に福島県の検査を受けるメリットはなく、そのため、非常に多くの方が自分で病院を選んで受診されているのではないでしょうか。そのことは、各段階とも先行検査よりも本格検査の方が受診率が下がっていることからも示唆されます。しかし、本格検査の手術の段階で31.5%であるのは、まだ手術時期ではないと判断されている面があり、そのためにまだ数値があまり高くないのだと思います。
現状で、「悪性ないし悪性疑い」の方の人数は164名です。甲状腺がん確定は116名です。164名は上の表で細胞診を受けた方たちの結果の数値であり、116名は手術を受けた方たちの結果の数値です。
「悪性ないし悪性疑い」になると、ほぼ癌確定ですから、細胞診までの受診率を考えて、本来なら受けるべき方たちの内どのぐらの割合しか細胞診を受けていないかを、単純にそれまでの受診率をかけて出してみます。
先行検査:81.7%×91.9%×39.6%=29.7%
本格検査:62.1%×64.4%×19.7%=7.88%
「悪性ないし悪性疑い」となった人数は、先行検査で113名、本格検査で51名です。
先行検査では、本来の人数の29.7%を検査して113名が、本格検査では本来の人数のわずか7.88%を検査して51名の「悪性ないし悪性疑い」の方たちが出てしまったのです。
では、本来、福島県の検査を受けるべき方たち全員が受けたと、上の受診率から逆算して「悪性ないし悪性疑い」の方たちの人数を推定してみます。
まず先行検査から。
100:29.7が「本来の人数」:113と同じなので、「本来の人数」=(113×100)÷29.7となります。計算すると、380.5人となります。
本格検査は、100:7.88が「本来の人数」:51と同じなので、「本来の人数」=(51×100)÷7.88となります。計算すると、647.2人となります。
合計で1027名です。ただし、疫学的には、不正確な数値と言われてしまうでしょう。なぜなら、それぞれの段階で診察を受けるか受けないかの判断基準が異なるからです。例えば、一次検査で検査を受けなかった方たちの中には、何かの理由で福島県内にほとんど居なかったため受診しなかったという方たちも含まれている可能性がありますし、二次検査では、福島県の指定した医療機関が遠くにあり、それよりも近い病院を使いたいと考えられた方たちも多くいたはずです。
ただし、細胞診の受診率がそれまでの受診率に比較して極端に低いのは何らかの特別な理由がないと考えにくいと思います。例えば、福島医大の方で福島県の甲状腺検査体制以外の医療機関にかかるように誘導をしているとか、または、福島県民の方に福島県のやっている甲状腺検査に対して疑問や不安が高まっているという可能性です。
どちらにしろ、福島県の甲状腺がんについての統計は、福島県の制度を利用して捕捉した人数だけを記載しています。途中で検査から外れた方は含まれていないのです。これでは、原発事故の影響をきちんと評価していることにはならないと思います。特に問題であるのは、福島県の甲状腺評価部会での議論が受診されていない方たちの人数について、全く議論をしていない様子であることです。癌確定の116名とか「悪性ないし悪性疑い」157名(*1)という数値だけを議論していても実態は全く見えてきていないはずです。
*1:報道には、164名ではなくて167名と出てきています。多分、先行調査で遅れて判明した方たちの分が含まれているからでしょう。
以下、福島県のサイトから上の計算に関係のある部分を引用してあります。
先行検査結果:
一次検査結果
対象者 367,685 人のうち、300,476 人が受診し受診率は 81.7%であった。
全ての検査結果が確定し、結果通知を発送している。
検査結果は A 判定(表 1 の A1 及び A2 判定)の方が 298,182 人(99.2%)、B 判定の方が2,293 人(0.8%)、C 判定の方が 1 人であった。
二次検査結果(平成 27 年 6 月 30 日集計)
(1)二次検査実施状況
一次検査結果が B,C 判定であった 2,294 人のうち、2,108 人(91.9%)が二次検査を受診し、結果確定者は 2,056 人(97.5%)であった。
その 2,056 人のうち、700 人(表 3 の次回検査 A1 の 122 人と A2 の 578 人)(34.0%)は詳細な検査の結果 A1 もしくは A2 判定相当として、次回検査(本格検査)となった。
一方、1,356 人(66.0%)は、概ね 6 か月後または 1 年後に通常診療(保険診療)となる方等であった。この 1,356 人のうち、537 人(39.6%)が穿刺吸引細胞診検査を受診している。
細胞診等結果
穿刺吸引細胞診を行った方のうち、113 人が「悪性ないし悪性疑い」の判定となった。
113 人の性別は男性 38 人、女性 75 人であった。また、二次検査時点での年齢は 8 歳から22 歳(平均年齢は 17.3±2.7 歳)、腫瘍径は最小 5.1mm から最大 45.0mm(平均腫瘍径は 14.2±7.8mm)であった。
悪性ないし悪性疑い者の手術症例
1 平成 23 年度実施対象市町村
・悪性ないし悪性疑い 15 人(手術実施 15 人:良性結節 1 人、乳頭癌 13 人、低分化癌 1 人)
2 平成 24 年度実施対象市町村
・悪性ないし悪性疑い 56 人(手術実施 52 人:乳頭癌 51 人、低分化癌 1 人)
3 平成 25 年度実施対象市町村
・悪性ないし悪性疑い 42 人(手術実施 32 人:乳頭癌 31 人、低分化癌 1 人)
4 1〜3の合計
・悪性ないし悪性疑い 113 人(手術実施 99 人:良性結節 1 人、乳頭癌 95 人、低分化癌 3 人)
本格検査結果:
調査結果概要(平成 27 年 12 月 31 日現在)
1.一次検査結果
(1)一次検査実施状況
平成 26 年 4 月 2 日から検査を開始し、平成 26 年度の 25 市町村に加え、平成 27 年度は34 市町村の計 59 市町村 381,261 人(平成 27 年 12 月 31 日現在)を対象として、236,595人(62.1%)の検査を実施した。
そのうち、220,088 人(93.0%)の受診者について検査結果が確定し、結果通知を発送している。
検査結果は A 判定(表 1 の A1 及び A2 判定)の方が 218,269 人(99.2%)、B 判定の方が1,819 人(0.8%)、C 判定の方は 0 人であった。
先行検査結果との比較
先行検査で A 判定(A1 及び A2 判定)と判断された 202,122 人のうち、本格検査で A 判定(A1 及び A2 判定)は 200,992 人(99.4%)、B 判定は 1,130 人(0.6%)であった。
また、先行検査で B 判定と判断された 1,081 人のうち、本格検査で A 判定(A1 及び A2判定)は 502 人(46.4%)、B 判定は 579 人(53.6%)であった。
二次検査実施状況
平成 26 年 6 月からは本格検査対象者についても二次検査を実施しており、対象者 1,819人のうち 1,172 人(64.4%)が受診し、そのうち 1,087 人(92.7%)が二次検査を終了している。
その 1,087 人のうち、292 人(表 5 の次回検査 A1 と A2)(26.9%)は詳細な検査の結果A1 もしくは A2 判定相当として、次回検査となった。
一方、795 人(73.1%)は、概ね 6 か月後または 1 年後に通常診療(保険診療)となる方等であった。
(*実際に細胞診を受けた人数は5ページ目の「表5」に157名と書いてある。)
細胞診等結果
穿刺吸引細胞診を行った方のうち、51 人が「悪性ないし悪性疑い」の判定となった。
51 人の性別は男性 21 人、女性 30 人であった。また、二次検査時点での年齢は 10 歳から 23 歳(平均年齢は 16.9±3.3 歳)、腫瘍の大きさ 5.3mm から 30.1mm(平均腫瘍径は 9.9±4.6mm)であった。
なお、51 人の先行検査の結果は、A 判定が 47 人(A1 が 25 人、A2 が 22 人)、B 判定が 4人であった。
悪性ないし悪性疑い者の手術症例
1 平成 26 年度実施対象市町村、平成 27 年度実施対象市町村計
・悪性ないし悪性疑い 51 人(手術実施 16 人:乳頭癌 16 人)
2016年02月18日23時10分 武田信弘
http://www.asyura2.com/15/genpatu44/msg/876.html