空爆&特殊部隊…今度こそイスラム国を殲滅できるのか?
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/171033
2015年12月5日 日刊ゲンダイ
シリア・IS空爆の後に基地に戻ってきた英空軍軍用機(C)AP
英軍はシリアで空爆を始め、イスラム国が資金源にしている油田6カ所を破壊した。有志連合によるイスラム国掃討作戦を主導する米国は、イラクにさらに2000人規模の特殊部隊を投入。イラク政府と協力して人質解放、イスラム国の幹部拘束や急襲作戦を強化するというが、9・11テロを仕掛けたウサマ・ビンラディンの殺害に10年もの月日を要した。今度こそイスラム国を殲滅できるのか。
軍事誌「PANZER」の和泉貴志編集長はこう言う。
「米軍は今年の春先から水面下で特殊部隊を投入しています。10〜20人でチームを組み、空爆の標的を絞り込むためにイスラム国の“領土”に潜入して偵察するのはもちろん、司令部や軍事拠点の破壊活動も行っている。特殊部隊の追加を公言したのは、作戦のメドが立ってきたからでしょう。イスラム国に心理的プレッシャーを与える効果もある。彼らのゲリラ攻撃に対抗するにはヒットエンドランが原則の特殊部隊でないと太刀打ちできません。米軍とは別に、特殊部隊経験者をリクルートして編成したCIA要員による暗殺部隊も動き回っている。CIAは欧州からの義勇兵に紛れ込ませて諜報部員を送り込み、スパイ活動も展開しています」
有志連合の空爆が奏功し、イスラム国幹部らは首都と位置付けるラッカを捨て、隣国のイラクやリビアへ逃げ始めたという。アラブ紙「アッシャルクアルアウサト」はラッカからイスラム国の車両数百台が逃げ出し、国境を越えてイラク西部のカイム入りしたと報道。
国連安保理委員会の報告書はイスラム国が無政府状態のリビアに拠点を築きつつあり、中部シルトを中心にシリアなどから約3000人の戦闘員が集結したと指摘し、シリア担当の最高幹部とされるアブアリ・アンバリ副官が最近リビア入りしたとの情報もある。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏はこう言う。
「今年3月ごろからイスラム国幹部がラッカを出てリビアやレバノンに逃れているとはいわれていました。リビアには油田があり、新たな収入源になる。ラッカが陥落しても、リビアに第2の拠点をもうければいいという発想でしょう。指導者のバグダディは米軍のSNS監視を恐れ、自分の周りに電子機器の持ち込みを禁じ、家族を通じて口頭で指示するほど追い詰められていると聞きます。ただ、有志連合がラッカやイラクのモスルを奪還し、全面解放するのは相当な時間が必要です」
指導部がイラクやシリアにとどまっている間に全員殺害しなければ、またも長期戦になる。