雑感。金、原油市場の落ち着き
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2015年11月29日 在野のアナリスト
最近少し気になっているのが、トルコによる露軍機撃墜など、世界が不安に陥ってもおかしくない局面で、金市場、原油市場がほとんど反応しないことです。為替ではよく安全通貨として円が買われる、などとも言われますが、金も原油も、資源価格もまったく動きません。逆に、株式市場の下落の理由として「リスク資産としての株売り…」などという説明をする人もいますが、それだと株式市場だけ織りこんだ、という不可解な事態になってしまいます。
日本の株式市場は、日米合弁系の動きが止まり、急速に上値の重い展開となりました。これが感謝祭に伴う休暇によるものか、それとも手もちの弾を撃ち尽くしたせいなのか、どちらかによって相場の読みは大きく異なります。さすがに円売り、株買いのセットだったことと、一度に大きな売買だったため、後者であるとの見方も多く、ここ元の動きにも勢いのなさを感じさせます。
日経平均はここ最近、12月の成績が突出してよく、ほぼ下落がない。しかし逆にみると、10、11月は弱含むことが多くて、その反動という面も大きかった。今年はこのままいけば10、11月はプラスで終わります。この水準で、さらに上値をめざすという動きになると、来年の増益を信じたものとなるはずですが、よほど強気のアナリスト以外、来年は増益基調が鈍るとの見通しです。
これは為替相場の見方が分かれていて、来年は1$で130円に近づく、という人は強気、110円に近づく、という人は弱気、との見立てが多い。結局、円安頼みという構図です。ただ気になるのが、来年の世界経済の見立てに関して、あまり言及がない点は気がかりです。何となくどこも破綻することも、世界経済に激震が走ることもなく、平穏無事な中で円安に向かう、ということなのか?
しかし中国は都市部の不動産が高値で推移する一方、株価は急落するなど、相変わらず官製相場の賞味期限切れが大きな要因となって、変動を大きくします。これまでも力技で不穏な動きをねじ伏せてきた中国ですが、今年おきた変動は必ず来年、もう一度振幅を大きくして襲うでしょう。来年は中国にとって、最大の変化の年になるはずです。いい意味でも、悪い意味でも。
それは日本も同じ、官製相場の賞味期限切れ、という問題が襲います。日銀が追加緩和を決めても、年金、郵貯、かんぽなどの買いが止まり、買い方不在の状況に陥る。そこに来て国内はマイナス成長、まさに頼るところは円安しかないのです。まさに正念場、逆にここ年末高になどなれば、来年は一気に下落傾向が鮮明となり、それはバブル崩壊後の1989年の株価の動きと似るのかもしれません。規模は半分程度ですが、下支えをする要因が何もないからです。
「供給は需要をうみだす」といったのは古典経済学者のジャン=バティスト・セイです。しかし今、中国は生産過剰という製品の供給問題を、日本は日銀の金融緩和というマネーの供給問題を抱えます。それでも、需要は何も生まれていない。中国はバブルの状況を脱しきれず、日本もデフレを脱しきれていません。残念ながら、2016年は難民問題という人の供給問題、軍事傾斜という政治による扇動の供給問題など、様々な問題が立ちはだかっているというのが、現在の見立てです。
もし金価格、原油価格が、実体経済の悪化を映して、たとえ危機の増幅などの懸念に陥ったとしても、価格が動かず低迷したまま、というのであるなら、実は供給サイドである資源価格がもっとも冷静に今の状態をみている、という見方もできてしまうのでしょうね。