フランスで起きた同時多発テロの犠牲者は、中東で起きるテロの犠牲者よりも、命の価値が重いのか――。
パリのテロを巡るFacebookの対応が、論争に発展している。
11月13日にパリで起きた同時多発テロは129人が死亡する惨事となり、世界中で大ニュースとして報道された。Facebookは、ユーザーの安否を通知できるサービスを適用したり、顔写真のアイコンを赤、白、青のフランス国旗色(トリコロール)に変更できる仕様に変更したりした。
一方、中東やアフリカで、テロは日常的に起きている。パリの事件の前日にレバノンの首都ベイルートで起きた2件の連続自爆テロでは43人が死亡し、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。ナイジェリアでは10月23日にイスラム教のモスク(礼拝所)が連続して狙われ少なくとも55人が死亡している。
レバノン・ベイルートのフランス語社会で暮らし「フランスは第2の故郷」というJoey Ayoub氏は、ブログで以下のように書いた。Facebookで1万回以上シェアされている。
「ベイルートで私の知人が死んだことより、世界にとってはパリの他人が死んだことの方が重要なようだ。(ベイルートのテロでは)Facebookに安否確認ボタンもなかったし、世界の有力な政治家や多数のネットユーザーが『無事だ』と伝えるのを見ることもなかった。無数の罪のない難民たちを救うための政治に、私たちは変えられていない」
(Beirut, Paris | Hummus For Thoughtより 2015/11/14)
Facebookの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏は、ソーシャルメディア上などでの相次ぐ批判を受け、自身のアイコンをトリコロールに変えた投稿に、以下のようにコメントした。
「昨日まで、私たちは安否確認サービスを自然災害のみ活用する方針でした。その後、この方針を転換し、これから起こる人的災害にも活用する方針です」
((1) Mark Zuckerberg - プロフィール写真より 2015/11/15)
フランス以外の国旗をプロフィール写真に焼き込めるサービスは、ウェブ上に続々と登場している。シリアやイラク、ナイジェリアなど、ISから攻撃された28カ国すべての国旗をプロフィール写真にあしらえる「All Flags Profile Photo Converter」というサイトも登場した。
アルジャジーラは、パキスタン人女性作家、Bina Shahのコメントを紹介。「西洋人の命が非西洋人の命より重いというルサンチマンが、この議論の底流にあると思うが、それで片付けてしまうのはあまりに性急だと思う」と述べた上で、以下のように指摘した。
「この惨事のあと、Facebookは自ら、世界の注目する出来事に自ら関わろうとした。それはプロフィール写真の変更や安否確認を求めることで、間違った団結心や同情の念を広めようとするものだ」
(Facebook gets flak for Beirut-Paris 'double standard' - Al Jazeera Englishより 2015/11/15 10:21)
アルジャジーラとしてもFacebookに質問状を送ったが、15日時点で返答はないという。
プロフィール写真をフランス国旗の色に染めることの是非は、日本でも議論されている。
評論家の古谷経衡氏は「遺族にとって永遠に続く悲しみと傷跡への祈りを、いちいちFB上で第三者が『写真のドレスアップ』という形式で表明する意味がわからない」と批判した。これに対しロンドン在住の医師、小野昌弘氏は「日仏両国の世界における立ち位置の共有からみて、日本社会に住むものの多くが、パリのテロの犠牲者をより注目して共感するのは自然なこと」として、善意からの行動に否定的な社会を「あまりにも生きづらい社会」と逆に批判している。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/11/17/french-death-importance-than-levanon_n_8579878.html
難民危機、シリアの高い民間人死亡率が背景に 研究
【10月1日 AFP】2011年以降にシリアで死亡した20万人以上の一般市民のうち4分の1以上が女性と子どもで占められており、非戦闘員の死亡率の高さが難民危機の一因となっている可能性が高いとの研究が、9月30日の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)に掲載された。
研究は、シリア内戦の民間人犠牲者を男女や子どもなどのカテゴリーで分け、各種の兵器が及ぼした影響を分析した初めてのもの。研究チームは「民間人の男性が射殺される可能性が高いことと比べると、子どもと女性は爆発物と化学兵器により死亡する可能性が高かった」と述べている。
シリア内戦の犠牲者のうち民間人と戦闘員を区分し、さらに死因を明記している資料は、「人権侵害証拠収集センター(Violations Documentation Centre)」の発表しているものしか存在しておらず、研究チームは、この資料の7万8769人の死者を分析した。死者の大半を占める7万7646人の死亡は、シリア政府が統治する地域以外で記録されていた。
■空爆・砲撃による子どもの犠牲
研究によると、シリア政府の統治下にある地域と反体制派が掌握している地域とでは、民間人死者に占める子どもの割合と死因が異なっていた。
シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領率いる体制派が統治する地域では、民間人犠牲者のうち23%が子どもだった。一方、イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic State、IS)」または反体制派が掌握する地域では同割合は16%だった。
死因では、両地域にさらに大きな違いがあった。政府軍以外の武装集団が掌握する地域では、子どもの犠牲者のうち4分の3が、砲撃または空爆で死亡していた。これらの攻撃は主に政府軍によるものだった。一方、政府統治地域では、空爆で犠牲になった子どもは一人もおらず、砲撃が子どもの死因の3分の2を占めていた。
「シリア政府も反体制派も、敵の軍事拠点を空爆ないし砲撃したと主張することが多い」「しかしわれわれの調べた結果、シリアの子どもたちを死なせる可能性が最も高いのがこれら(空爆・砲撃)の兵器だ」と、研究論文は指摘している。
同じような傾向は、イラクの10年間に及ぶ紛争でも確認された。だが1991〜95年のクロアチア紛争では、空爆や砲撃による子どもの犠牲者は極めてまれだったという。シリアで子どもがどの程度まで故意に標的とされているのか、あるいは巻き添えとなったのかについては詳しくは分かっていない。
研究チームは、「われわれの調査により、民間人が兵器の主な標的となっており、爆撃の犠牲者のうち民間人が不釣り合いなほどの割合を占めていることが分かった」と述べた。
「現在の欧州の移民・難民危機の根本的な原因が知りたいのであれば、これは間違いなく大きな要因となっている」(c)AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3061940
http://www.asyura2.com/15/warb16/msg/402.html