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監査法人も見限り始めた東芝原発子会社の減損リスク
週刊ダイヤモンド編集部 2015年11月12日
東芝は、WHについて「保守・点検が好調」と主張している Photo:Jun Morikawa
「この9月末でも減損の兆候は見当たらず、資産性があると判断した」
東芝が7日に発表した2015年度中間決算。異例の土曜日に行われた発表の席上、東芝の平田政善執行役上席常務が、原発子会社の米ウェスチングハウス(WH)の減損について、こう説明した。
今中間決算は6年ぶりの営業赤字となったが、その中で、東芝が「皆さまにあまりご説明できていなかった」(平田常務)として突如公表したのが、WHの減損テストの会計処理方法についてだった。
WHは、06年に東芝が約42億ドル(約4800億円)をつぎ込んで買収した世界最大の原子炉メーカーで、11年の福島第1原発事故後の環境悪化で、巨額ののれん代について減損のリスクが常に指摘されている。会計ルールでは減損の兆候があれば、回収可能額を測定し、帳簿価額と比較する減損テストをしなければならない。
過去の減損を突如発表
『週刊ダイヤモンド』では、8月1日号の緊急特集「東芝 終わらざる危機」で、その減損テストの問題を指摘していたのだが、今回ようやく、東芝も一部公表することになったのだ。
具体的には、WHがライン別に行ったテストで12、13年度に一部のラインで減損処理していたことを今になって明かした。ところが、「WH全体を見極めると、バリューはあるという判断」で連結では減損をしなかったという。
結局は本体の減損の必要がない、と強調しただけだったのだが、実は社内では「年度末まで乗り切れるかは分からない」(東芝関係者)との声も上がる。
というのも、これまでもWHの減損テストについては、「将来の見通しと現実に乖離がある」(同)として、新日本監査法人とは何度も衝突してきた。
「新日本は年度末には、減損を指摘してくるのではないか」と、東芝に詳しい業界関係者は話す。
東芝の会計処理問題では、監査を行った新日本への風当たりが強くなっており、今回は「かなり厳しい姿勢になるはず」(業界関係者)とみられているのだ。
東芝内部でも、新日本が指摘した場合の対策を進める動きが出ているが、「監査法人を変えたとしても同じように減損を求められるはず」(前出の東芝関係者)と、本格的に損失計上を覚悟するタイミングが訪れる可能性が高い。
東芝は9日、旧経営陣5人を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。その根拠とした「役員責任調査委員会」の報告書でも、WHの工事案件をめぐって、東芝と監査法人が激しくぶつかっている様子が詳しく書かれている。
報告書で、不正期間中に取締役だった室町正志社長や、前田恵造元専務(現在は財務顧問)の責任が問われていなかったことを告発する動きも社内にはくすぶる。東芝の不正会計に端を発する危機は今後も続く。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)
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