機械受注と景気ウォッチャー調査
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52743562.html
2015年10月08日 在野のアナリスト
8月機械受注統計が発表され、船舶・電力を除く民需で前月比5.7%減となり、これで6月7.9%減、7月3.6%減につづく3ヶ月連続減で、7-9月期のプラス転換は困難で、GDPの2四半期連続マイナスも現実味を帯びてきました。元々、年後半の設備投資計画は低調とみられていましたが、予想をこえる落ちこみになりそうです。さらに外需が26.1%減と、急減になっている点が気がかりです。
9月景気ウォッチャー調査は、さらに深刻です。現状判断DIは47.5と前月比1.8pt減で、家計動向も企業動向も、雇用関連もすべてマイナス。構成比でみても「やや良くなっている」が大幅減で、景気を上向きに捉えている層が一気に減ったことを示します。先行き判断DIは49.1と前月比0.9pt増と、回復を見こみますが、家計動向が総じてプラス、つまり今がこれだけ悪いから、3ヶ月経てば回復しているはず…という想いが結果に滲むようです。しかし企業動向は先行きでも総じてマイナス、企業の肌感覚はまだ回復の見通したたず、という結果になっています。
しかも先行き判断には、プレミアム付き商品券の期限があり、年内に消費されるとの期待ものっている。逆に言えば、現状では消費がすすんでいないことを意味するのでしょう。結局それはムダ遣いをしない、という意識が働くため、小出しにしか使わない。そんな傾向も読み解けます。
そんな中、8月国際収支状況は、経常収支で1.65兆円の黒字となりました。貿易収支が3261億円の赤字と、5000億円以上改善していますが、それと同時に第一次所得収支も5000億円以上、黒字を積み上げた。これだけ円安になっているのに、日本企業を買収しようという外国企業は現れず、日本からは海外企業の買収が活発化した。さらに年金基金等、外国債券、株への投資を増やしたことで、利子や配当の受けとりが増えたことを意味するのでしょう。しかし別の観点からみると、日銀がいくら金融緩和をして民間に資金を流しても、海外投資ばかり増えてしまえば、国内の資金循環がすすまず、国内景気を温めないとも言えます。稼いでいるのだからいい、という人もいるでしょうが、例えば金融緩和で1兆円を市場に流しても、すべて外国株に投資されれば、短期的には配当分ぐらい、1%程度しか国内のマネーサプライには寄与しない、ということになりかねないのです。これが効果を減殺する、一つの要因ともなっているのでしょう。
独国の8月貿易統計で、前月比5.2%減と金融危機以来の大幅減、と伝わります。最近、金融危機以来…という文言をよく見かけるようになりましたが、世界で今、とんでもないことが起こり始めていることは間違いありません。逆に、株や債券が落ち着いているのは、当局の政策期待でまだ何とかなる、という楽観があるためでもあります。しかしリーマンショックの頃は、各国は不動産バブルに浮かれて財政も健全化し、金融政策も正常な状況にありました。しかし今は財政は疲弊し、金融政策は異例の緩和状態、どの国も余裕がなくなっていることは間違いないのです。
打てる手も限られ、打つ力すらも失いつつある。実際に何らかの対策が出てきたとき、失望の色を濃くすることにもなるのでしょう。日本でも今はまだ、日銀が追加緩和を打つ。緩和はない、と黒田日銀総裁が発言しても、市場期待を抑えてサプライズ効果をだしたいだけでしょ? として、市場がゆがんだ目を向けている。これは非常に危険な状態にあるといえます。プレミアム付き株高にも賞味期限があります。政策期待というだけで世界全体が楽観視するほど、危険なことはない。金融危機以来…の言葉が意味するのは、実は深刻な問題をはらんでいるのでしょうね。