9月日銀短観について
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52743119.html
2015年10月01日 在野のアナリスト
9月日銀短観が発表されました。現状判断DIが大企業製造業で12(-3)、大企業非製造業で25(+2)、中小企業製造業で0(0)、中小企業非製造業で3(-1)。先行き判断DIは同じ並びで10(-2)、19(-6)、-2(-2)、1(-2)となります。メディアは少しでもよい箇所をみつけようと、大企業非製造業の25がバブル期以来、などと報じます。しかしバブルの兆候がみられる建設、不動産、中国人の爆買いがつづく小売も好調ですが、対個人サービスが現状判断DIで35(11)、先行き判断DIで23(-11)となり、これが現状判断DIの押し上げに大きく寄与したのであって、特殊要因にすぎません。
しかし製造業は深刻です。自動車が現状で+3という点は一安心ですが、先行きは-3。しかもVWの影響は考慮されていない時期に統計がとられているため、先行きはもっと悪化する可能性があります。ハイブリッドやプラグインが得意な日本車はVWが失速すれば有利、などともされますが、長期でみればそうでも、短期では自動車不審が販売にも影響するはずですし、VWから日本車がシェアを奪えるかは分かりません。原油安で、米国では大型車が売れており、日本車が伸びているわけではない。それより株安など、逆資産効果が意識される水準まで来ています。欧州経済の崩れも意識され、中国ともども世界経済に不安の中で高額消費がどこまで伸びるかは予断を許しません。
短観で気になるのは、仕入れ価格の現状判断DIが大企業製造業で4、非製造業で13と上昇を見込むのに、販売価格判断DIが製造業-7、非製造業4と、仕入れ価格の上昇に追いついていない。これは強烈なデフレマインドが働いており、価格転嫁できない状態であることを示します。これは企業の経常利益の判断にも影響しており、今年下期は軒並みマイナスの修正率を示します。世界経済の混乱というばかりでない、国内のデフレ圧力が企業収益にも影響を与えはじめたのでしょう。
中国の国家統計局発表の9月PMI速報値は49.8でしたが、財新の9月PMI確報値は47.2となり、好感されました。財新は英民間調査会社のもので信頼度も高いとされますが、速報値を小幅に上回ったとはいえ、8月確報値47.3より小幅に下がっており、決して楽観できる数字ではありません。
今日の株式市場は、本田内閣官房参与による海外紙への発言、自民党・山本氏、岩田元日銀副総裁など、安倍ノミクス旗振り役らによる一斉、追加緩和、補正予算による景気刺激策発言などがあり、2日大幅続伸しています。一斉に行ったのですから、市場を動かす気満々の戦略的行動ですし、相変わらず日本株が大幅上昇するときは、日系の証券会社が先物買いの上位に並ぶ、いつものパターンとなっています。要するに仕組まれた上昇であって、これは安倍氏の講演以来、上昇させようとする強烈な官製エネルギーによる上昇とみて、ほぼ間違いないのでしょう。
しかし外国人投資家の動きは鈍く、追随する動きはない。市場で7割のボリュームを占める外国人投資家がそっぽを向いているので、この日系の証券会社が堪らず反対売買をすると、一気に下げるということをくり返します。市場の2倍の動きをするETFも上場されていますが、まさに市場を2倍以上、大きく上下動させる原因、ボラタイルな展開をつくっているのは、日系の証券会社なのです。そしてそんな展開が、市場を敬遠する遠因ともなっているのですから、始末におえません。口先では上昇を促しつつ、手癖の悪さからそうした効果を相殺する。手も口も大体悪いコトをする慣用句になり易い。今の安倍ノミクスの旗振り役たちは口八丁手八丁ではなく、割ったり、後ろに回ったりすると困るようなことをしている、ということになるのかもしれませんね。