「アベノミクス」は日本を損なう
人民網日本語版 2015年09月15日13:42
日本経済が20年余りにわたる停滞に陥っていることは、経済学にとっての重要なトピックとなっている。1990年代に語られ始めたプラザ合意による陰謀という説は、日本は米国の罠にはまり、間違った円高に突入し、日本資産のバブル化を招き、今日に至るまでの災難を呼んだのだという説である。日本は、アジアで最も長い市場経済の伝統、世界で最も勤勉な国民、数多くの世界一流の企業、最も真面目な社員を持っているのに、ここ20年でなぜ活力を失ってしまったのか。現在行われている「アベノミクス」はまさに絶好の分析サンプルを提供し、新たな解釈を可能とするものとなっている。新京報が伝えた。
「アベノミクス」は何も新しいものではなく、金融緩和とその関連政策の総称に過ぎない。経済の遅れた国では、紙幣の無闇な発行は、壊滅的な悪性のインフレを引き起こす可能性が高い。経済の発達した国では、政府が紙幣を増刷しても財産を作り出したことにはならなず、資源の間違った配置をもたらし、内部の危機を引き起こす。日本は貨幣の潤沢な先進国であり、貨幣増刷によって引き起こされる物価上昇の効果は明らかでなく、やはり厳しい問題が生まれている。「アベノミクス」は物価の下落を恐れ、消費を奨励しており、民間の貯蓄は減り、政府の負債率は世界一に達している。
インフレで利益を得ているのは大企業である。大企業は市場に障壁を形成し、小さい企業のチャンスを減らしている。日本企業には年功序列の習慣があり、年齢の高い社員が高い地位を占め、若い社員はなかなか昇進できず、会社の人材コストは高い。これは労働法の保護によるものであると同時に、インフレ政策の擁護とも関係がある。日本人は極度に勤勉な労働なしには、生活水準の低下を防ぐことができないのである。だが日本の物価上昇は明らかでなく、政府のデフレへの恐れを呼び、量的緩和の推進を促している。生活水準がなかなか上がらないのも、インフレによる悪影響である。
政府による刺激を過度に信じ、紙幣増刷によって成長を促進できると考えたことは、日本の過去20年の最大の間違いだった。市場化改革が大々的に進められた小泉時代にあっても、この考えは転換されなかった。2001年に小泉純一郎が首相に就任すると、民営化と自由化の改革が始められ、中でも難題となっていた郵政改革の実現が旗印とされた。この改革において、小泉首相は自らの政治生命を賭けることも厭わず、郵政系統の民営化を推進した。通貨政策の分野では、小泉首相とそのブレインは掛け値なしの「インフレ派」であり、日銀に通貨政策の緩和を繰り返し求め、「デフレ」と対決しようとした。でたらめな通貨政策は小泉改革の寿命を縮め、いくつかの民営化改革を行ったほかは、日本に持続的な活力を与えることはできなかった。
日本は人口の高齢化が深刻で、出生率が極めて低く、全国の人口は縮小し続けている。このことは日本経済の最大のリスクと考えられている。このこととインフレとを結びつけて考える人はあまりいない。日本国民の福利はとても分厚く、高齢者に対しては特に豊かな福利が与えられている。つまり高齢化しつつある日本は高齢者の福利に力を傾けることで、若者の子どもを産む願望を抑えつけているのである。老いてから養ってくれるものがあるなら、なぜ子どもを産む必要があるのか。経済はなかなか成長せず、若者はあちらへこちらへと走り回るのに疲れ、暗く疲れた世代が生まれてしまったのである。経済生活の変数は非常に複雑で、このような影響はなかなか数字の根拠を出しにくいが、内在的なロジックとしては非常に納得がいく。人口は、経済成長の最も重要な資源であり、出産は重要な資本蓄積である。この点ではインフレは、経済発展の最も重要な土台を削り落としているのである。
20世紀末から今日まで、欧米諸国と中国ではめまぐるしい情報革命が起こり、この革命が持続的な経済成長を支えた。若者の多い米国や中国、インドは、この経済革命のリーダーとなった。聡明な日本人ではあるが、この革命の波には乗り損ね、チャンスを逃した。日本はインターネット業界で世界的な大企業を生み出せておらず、その発展は韓国にも及ばない。これは日本人の若者が減少し、負担が重くなっていることと大きく関係している。現在の人口の状況を見ることは往々にして未来の経済発展を予見することを可能とする。出生率から見れば、日本はやはり依然として落とし穴を抜け出すことができていない。
経済発展に対するインフレのマイナス影響は、短期的に大きく現れるものがあるだけでなく、長期的にゆっくりと出てくるものもある。その道理は多くの経済学者の古くからの関心となってきた。ハイエクはかつて、インフレは、政府が紙幣を増刷し過ぎた時だけに起こるもので、それ以外にはあり得ないと指摘している。インフレの危害は、オーストリア学派の経済学者によってとうの昔に研究されていたのである。それにもかかわらず今日の日本政府が(そのほかの多くの国の政府も)デフレへの対決姿勢を崩さず、インフレを頑強に追求しているのには、ため息を禁じ得ない。(編集MA)
「人民網日本語版」2015年9月15日